第46話 クッころさん、またまたピンチ!
冒険者ギルド直営のお風呂屋さんの話を聞いて、未だに呆然としてるタロウと共に町に向かって歩いていると。
「キャァーーー!」
近くの森の方から、ただごとではない女の人の悲鳴が聞こえたの。
「うん、あれはクッころさんの声じゃねえか。
おい、クッころさんになんかあったみたいだぜ。
助けが必要かも知れん、行ってみようぜ。」
さっきの悲鳴を耳にし、呆けていたタロウが我に返っておいらに言ったんだ。
「そうだね、また魔物に襲われてるかもしれない。
早く行った方が良いね。」
おいらは、タロウと共に足早に森の方へ向かったんだ。
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その森に入ってすぐのところにほんの少し開けた場所があったの。
そこには、クッころさんと冒険者らしいガラの悪い男が三人いたんだ。
クッころさんは、二人の男に押し倒されて、地面に押さえ付けられてた。
クッころさんを救い出すタイミングを窺って、おいら達が草陰に隠れて息を潜めていると。
「こら、おまえら、何をする。この無礼者めが!
ここにワイバーンがいるのではなかったのか!」
クッころさんは、男達に対してそんな怒声を上げてたよ。
そうとう怒っているようで、いつもと口調が違うね。
「何をするだって?
初心なお姫様は、この状況になっても何をされるか分かんねえのか。
こりゃ、モノホンの生娘だぜ。
貴族のお姫様の初モンを頂けるなって、こいつはついてるぜ。」
組み敷かれたクッころさんの正面に立つ男はそう言いながら、何故かズボンを脱いだの。
「しっかし、本当に頭の緩いお姫様だぜ。
こんな町から近い森にワイバーンのねぐらがあるわきゃないだろが。
まんまと、付いて来るなんて思わなかったぜ。
まっ、こっちは楽な仕事で助かったがよ。
さあ、アニキ、早くやっちまってくださいよ。
早く次に回してもらわねえと、俺っち、我慢できねえですぜ。」
「まったくだ。
アニキ、早く済まして、俺達に回してくださいよ。
俺、貴族の姫様を頂けると思ったらパンパンになっちまって。
はち切れそうなんですぜ。」
クッころさんを押さえ付けてる下っ端らしい男が口々にそんなことを言ってる。
どうやら、クッころさんはこの森にワイバーンが潜んでいると聞いてやって来たみたい。
小さな町だからね、クッころさんがワイバーン退治に来たことは知れ渡っているんだ。
それで、この三人はクッころさんをおびき出すのに、ワイバーンの偽情報を利用したみたい。
でもこいつら、いったい何を始める気だ、クッころさんを押し倒して?
「お、おまえら、まさか、わたくしを慰み者にするつもりですか!」
「なんだ、分かってるんじゃないか。
貴族のお姫様でもそのくらいの知識はあるってか。
そうよ、俺達の親分が姫様をご所望でな。
親分、初物は暴れるから面倒だと言って、俺達にお鉢が回ってきたんだ。
初物を譲ってくれる代わりに、大人しくなるまで躾けてこいってな。」
「くっ、おまえらのような奴らの慰み者にされて、クレーム子爵家の名を汚すことなど赦されませんわ。
そんなことをされるくらいなら、いっそ、一思いにわたくしを殺せばいいわ!」
クッころさんは、男達に組み敷かれながらも気丈にそう言い放ったんだ。
それを聞いたタロウが、おいらの隣でこぶしを握り絞めてプルプルと震えている。
「クッ…。」っとかなんとか、呟いていたけど…。
おいらは、無視してクッころさんと男達のやり取りに集中していたんだ。
「ああ、殺してやるぜ。
ただし、それは俺達が十分に楽しんでからだ。
親分が飽きた女は、ギルドの監禁部屋へおさがりになるからな。
そこで、おまえが壊れるまでギルドのみんなで使ってやるよ。
それで壊れちゃまったら、お望み通りトレントの餌にして殺してやらあな。」
アニキと呼ばれた男の言葉に続けて、
「最近、冒険者になって一旗揚げるんだと言う頭のおめでたい女が少なくてよ。
監禁部屋が空になっちまって、女日照りなんだよな。
しばらく、こいつを監禁部屋で使わせてもらえると有り難いぜ。」
「でもよ、これだけ上玉だからな…。
親分が風呂の方へ回すって言い出すんじゃねえか?
そしたら、俺っちの方へ回って来ねえぜ。」
下っ端二人もそんな事を言っていた。
「大丈夫だろうよ。
風呂へ回すのは、客の要望に従順に従える女だけだぜ。
客に反抗的な態度を取られたら商売あがったりだからな。
こいつのようにプライドの高いのは使えねえよ。
そのうち、監禁部屋に回って来るだろうぜ。」
こいつら、誰も聞いてないと思って、よくも悪事をべらべらとしゃべるもんだ。
可哀そうにクッころさん、怯えて顔を青くしてるのがここからでも分かるよ。
どうやら、冒険者ギルドの親玉がクッころさんをさらってこいって命令したみたいだね。
意味が良く理解できないことも多いけど…。
どうでも良いけど、タロウが言ってた女冒険者って実在したんだ…。
ギルドの連中がなんかの目的で全員を監禁してたみたい。
アニキと呼ばれている男は、悪事の披露に一段落ついたのか、しゃべるのをやめたんだ。
そして、
「そんじゃ、いただくとするか。
おい、おまえら、こいつが暴れないように、手足をしっかり押さえとくんだぞ。」
そう言って身を屈め、クッころさんに覆いかぶさろうとしている。
おいら、チャンスと思ったね、あいつ、今とっても無防備だ。
一気に近付いて股間を蹴り上げてやろうと思って、飛び出そうとしたんだ。
だけど、その瞬間…。
「リ、リアル、クッころさんシチュ、キターーーーーー!」
おいらの隣で、こぶしを震わせていたタロウが叫びやがった。
このおバカーーー!
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