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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記
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第38話 クッころさん、ふたたびピンチ!

 迂闊なクッころさんのおかげで、レベルについての謎が大分わかって来たよ。

 魔物を倒しただけじゃレベルは上がらないんだね。

 どうりで、ワイバーンを倒してもレベルが上がらないと思った。


 でも、『生命の欠片』って言うのが依然として謎なんだ。

 『積載庫』の中をいくら探しても見当たらないの。

 厄災とまで言われるワイバーンがレベルゼロの訳がないし…。

 町の広場に残しちゃったかな。

 でも、あの時吹き出したワイバーンの血すら回収しているものね。

 『生命の欠片』なんて重要なモノを回収しそこねるとは思えないんだけど。


    ********


 そんな疑問を残したまま、おいらは今日も今日とてシューティング・ビーンズを狩っている。

 十分に今日の稼ぎの分を狩り、町へ帰る途中でのこと。


 草原の奥で土煙が上がって、それがもの凄い速さでこっちに向かって来たんだ。

 イヤな予感を感じていると…。


「マロン、逃げなさい!

 強大な魔物が追いかけて来るわよ!」


 デジャヴかと思ったよ。

 土煙の主は、言わずと知れたクッころさんだったよ。

 跨った白馬がもの凄い速さで疾走してるんで、乾いた路面から土煙を巻き上げているだね。

 強大な魔物って、今度はいったい何に追いかけられてるんだろう。

 いくら何でも、またうさぎの巣穴に粗相したってことはないよね。

 そんな風におもいながら、後ろを見ると…


 スッポン…だった。


 スッポン、巨大な体躯の亀で性格は獰猛そのもの。

 強力な顎の力で獲物を食い千切るの。

 スッポン狩りに出た冒険者が、よく足や腕を食いちぎられて命からがら逃げてくる。

 最悪なのが頭から飲まれて首を食いちぎられること、絶対に助からないからね。


 レベル一の魔物で、いっぱしの冒険者が十人掛かりで狩るんだけど。

 毎回、足や手を食いちぎられる者が出る始末で、年に何人かは首を食いちぎられて命を落とす。

 そんな危険な魔物なんだ。それでもレベル一で経験値が手に入らないの。


 必死で逃げるクッころさんを乗せた白馬、それを猛スピードで追いかけるスッポン。

 あの短い脚でよくあんなスピードが出るもんだと感心してると。

 白馬が追い付かれそうになってるよ。

 スッポンが首を伸ばして、馬の尻尾に食らいつこうとしてる。


 さすがに、巨大なスッポンを相手にするのは気が進まなかったけど。

 あのままでは、クッころさんが食べられちゃいそうだ。


 おいらは、すくむ足に力を込めて踏ん張ると、目の前を通りかかったスッポンの目の前に石を投げたの。

 うさぎの時と同じく、猛スピードで走るスッポンの方から石にぶつかりに行ってくれたよ。


 すぐには止まれないスッポンは、一旦おいらの前を通り過ぎたあと、進路を変えておいらに突進してきたんだ。

 その迫力はうさぎの比じゃなかったよ。

 だって、スッポンって、うさぎの何倍も大きいんだもん。


      ********


 人間の首を食いちぎると言う大きな顎を開いて迫ってくるスッポン。

 おいらは足がすくんだね、マジ、スキルが発動してくれないと死ぬって。


 チビリそうになるのをジッと耐えてると、スッポンの咢がおいらの頭を咥えようとしたその瞬間。

 スッポンの動きが不自然にカクカクとゆっくり動き、おいらは寸でのところでスッポンを躱したの。

 よかった、今回もちゃんと『回避』が発動したよ。


 そして、丁度おいらの横にスッポンの伸ばされた首があり、…。

 おいらは、手にした錆びた包丁の刃を、その首にチョンと当てたんだ。


 発生率百%はだてじゃなく、ちゃんと『クリティカル』が発生したよ。

 首筋から血飛沫をあげて、ドシンという地響きと共に地面に倒れ込むスッポン。


 しばらく、のたうち回ったのでおいらは巻き込まないように退避したよ。

 さすがに、あの巨体がおいらにのしかかってきたら潰されちゃうからね。


 やがて、動きを止めるスッポン、どうやら絶命したみたいだ。

 おいらが、『積載』と心で念じると小山のようなスッポンはパッと姿を消したよ。

 いったい、何処にあるのか知らないけど、おいらの『積載庫』ってどんだけ入るんだろう?


 それにしても、あんな巨大なスッポンがひ弱なおいらの一撃で倒せるってのも凄い話だね。

 父ちゃんから教わった話だと、『クリティカル』というのは本来ならその人の基礎能力に依存するんだって。

 クリティカルって、たまたま当たり所や武器の使い方が良かったりで、本来の力以上の効果が発生することを言うんだけど…。

 当然、八歳児のおいらじゃ、本来の力なんて無いに等しくて…、ぶっちゃけクリティカルなんてたかが知れてるよ。


 ゴミスキルの典型のようなスキルだけど、おいらの場合、『クリティカルダメージアップ』が効いてるね。

 何て言っても、レベル十で、クリティカルダメージ三千%アップだから。

 にっぽん爺の説明からすると、おいらが本来出せるダメージの三十一倍だからね。

 さすがに、八歳児の基礎能力でも三十一倍になると侮れないようだね。


 『クリティカルダメージアップ』がなんで、ゴミスキルの典型のように言われてるかというと。

 にっぽん爺の言う通り、クリティカルなんて達人がレベル十にしても〇・四%くらいの発生率だと思われてるんだ。

 そんな極々稀にしか起こらないクリティカルの威力を上げるくらいなら、他のスキルを上げた方がましってなるの。

 まさか、レベル十になると、『クリティカル発生率百%』になるとは誰も考えもしないからね。


 でも、クリティカルの発生率が百%なら話が違ってくるよね。

 攻撃が必ずクリティカルになるなら、『クリティカルダメージアップ』って単純に攻撃力アップと同じ意味だもん。

 因みに、父ちゃんの話では、『攻撃力アップ』のスキルの実もあって、目が飛び出るほど高いらしい。

 父ちゃんも実際には見たこと無くて、噂で聞いただけみたいだけど…。

 『攻撃力アップ』のスキルの実も滅茶苦茶希少で、王侯貴族が独占してるんじゃないかって。

 『クリティカル発生率アップ』と『クリティカルダメージアップ』の合わせ技で、タダでバカ高な『スキル』と同じ効果だよ。

 とっても、お得だね。


お読み頂き有り難うございます。

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