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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記
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第37話 酔わせて吐かせました

 うさぎ肉の出所をどうやって誤魔化そうかとしてたら。

 上手い具合に、酒屋さんの横を通りかかったんだ。


「クッころさん、今日はうさぎに追い掛け回されて疲れたでしょう。

 お酒でも買って帰りませんか?」


「えっ!お酒!買って良いんですの!」


 おっ、凄い食いつき。

 これなら、うさぎ肉の出所を尋ねた事など忘れてくれそうだよ。


「どうぞ、お好きなだけ。

 疲れた時は、ゆっくりお風呂に浸かって。

 寝る前に適度なお酒を飲んで寝るのが良いと聞きますよ。」


 ホントかどうか知らんけど、近所のおっちゃんが言ってたよ。


「マロン、あなた、良く分かってますわね。

 本当にその通りですわ。

 じゃあ、さっそく買ってきますわね。」


 クッころさんは、嬉々として酒屋に入ってったよ。

 あの様子じゃ、お酒抱えて出てくる頃には、うさぎ肉の出所のことなんて忘れてるね。


 シードルの瓶を二本抱えて上機嫌で戻って来たクッころさん。

 案の定、さっき何を尋ねていたかなんて、すっかり忘れてたよ。

 これでうまい事酔っぱらって、レベルの話をしゃべってくれると良いんだけど…。


     ********


 うさぎ肉のローストは二人で食べるには大き過ぎなんで、半分にっぽん爺の所にお裾分けしたんだ。

 にっぽん爺は、久しぶりのご馳走だと言って上機嫌で受け取ってくれたよ。


 おいらも、父ちゃんがいなくなってからは食べたこと無かった。ホント、久しぶり。

 分厚く切って食べたんだけど、ハーブが効いててめちゃうまだった。


 クッころさんも、シードルを片手に上機嫌で食べてたよ。お酒が進むって。


 そして、…。


「ね~え、マロンってば~、ちゃ~んと聞いてる~!

 わたくしはね~、今日はほんと~に、死ぬかと思ったわ~。

 うさぎがあんなに獰猛なんて、反則でしょう~が!

 いったい何なんですか~、あれは~!」


 『ダン!』と、シードルを注いだコップをテーブルに打ち付けてクッころさんが愚痴ります。

 クッころさん、良い具合に酔いが回ってきたみたい。


「そうだよね。

 おいらも、うさぎがこっちに向かってきてビビったよ。

 マジでチビリそうになっちゃった。

 駆け出しの冒険者じゃ十人掛かりだと言うのが良く分かったよ。」


「ほ~んと、そうよね~!

 やっぱり、魔物を相手するんじゃ~、レベルがないとね~。

 レベルさえあれば~、うさぎな~んて、ちょちょいなのに~。

 ホント、ズルいわ~!

 お兄様ば~っかり、レベルを分けてもらって。」


 幾らレベルがあっても、全然鍛えてないクッころさんの細腕では無理でない?

 それとも、レベルを上げれば、鍛えなくても筋肉ムキムキになるとか…。

 それは、それで、キモいね…。


 それはともかくとしてナイスな展開になったよ。

 レベルの秘密を探るチャンスだね。


「ねえ、レベルを分け与えるって、どういうこと?

 レベルって強い魔物を倒して上げるもんじゃないの?」


「うん? な~に、マロン、レベルに興味があるの~?

 それは~、へ~みんに、教えてることね~。

 嘘じゃないけど~、正確じゃないわ~。

 だってぇ~、力をつけたへ~みんが反乱でも起こしたら困るじゃな~い。

 まあ、へ~みんでも~、ごく一部の~、ぼ~けんしゃは~知ってるよ~だけど…ウイック。」


 どうやら、王様みたいな偉い人が、レベルについて平民に与える知識を制限してるみたい。

 レベルを上げるのに、強い魔物を倒さないといけないと言うのは間違ってないけど。

 それだけじゃ足りなっいてことだよね。


「じゃあ、ホントは、どうすればレベルが上がるのかな?」


「マロンたら、いけない子ね~。そんなことを聞いて~。

 『せ~め~のかけら』のことは~、お~こ~きぞくだけの秘密ですのよ~。

 反乱もさることながら~。

 レベル持ちが増えて~、また殺し合いが増えたら~困るでしょう~。

 実際に~、お~と辺りじゃ、知ってる~ぼ~けんしゃ同士で~、殺し合いしてるしね~。」


 『せ~め~のかけら』? 

 それを言ったら、王侯貴族の秘密を明しちゃったようなもんじゃない。


「ねえ、その『せ~め~のかけら』ってどんなものなの?」


「知らないわ~。」


「へっ、どうして?」


「どんなものと聞かれても~、見たことな~いですもの。

 『せ~め~のかけら』は魔物がドロップする力のけっしょ~なの。

 それを取り込めばけ~けんちになるのよ。

 当たり前だけど~、取り込めばなくなっちゃうの~。

 奪われるかもしれないのに~、他人に見せるおバカはいないでしょ~。

 だから~、見た事あるのは~、取り込んだことがある人だけなの~。

 おと~さまも~、おに~さまも~、ど~んなものかも教えてくださらないのよ~。

 酷いと思うでしょう~!」


 酔っぱらって呂律が回ってないけど、『せ~め~のかけら』って『生命の欠片』だよね。

 それが、どんなものか分からないけど、魔物を倒すとドロップするんだ…。

 それを体内に取り込んで初めてレベルアップのための経験値になると。


 『生命の欠片』って、ドロップする実体のある物なんだね。

 だから、自分で取り込んでも良いし、人に分け与えることもできるんだ。


 クッころさんの話してくれた言葉をよく考えていると…。


「あら~、わらくひ、な~んか、言ってはいけないこと言ってしまったよ~な…。」


 何て言う呟きが聞こえてきたんだ。

 ええ、多分、王侯貴族の方が秘密にしていることの七割がた話しちゃたと思いますよ。

 でも、一番肝心な『生命の欠片』って言うのが分からないよ。


    ********


 その晩も、クッころさんは泥酔してテーブルで寝落ちしてしちゃった。

 ベッドまで運んだあげく、抱き枕にされると言う苦行をまた味わうハメになったよ。

 でも、今回は貴重な情報を手に入れたからね。このくらいは我慢しないと。


 翌朝。


「ごきげんよう、マロン。

 わたくし、昨日の晩、何か、拙い事を言いませんでしたか?

 夕食に美味しいうさぎ肉のローストとシードルを頂いて…。

 気分が良くなったところまでは覚えているのですけど。

 その後の記憶がハッキリしなくて…。」


 それって、ほとんど酔い始めるくらいまでしか記憶がないってことですよね。

 マジでわかるわー、クッころさんにお酒を飲ませたくない家族の気持ち。

 酒癖が悪いのもさることながら、酔ったら秘密なんてあったもんじゃないものね。


「おはようございます、クッころさん。

 安心してください。

 クッころさん、疲れていたようで、酔ったらすぐ寝ちゃいましたよ。

 おいら、クッころさんをベッドまで運ぶの大変だったんですからね。

 これからは、寝落ちする前にご自分でベッドへ行ってくださいね。」


 それなら好都合、もちろん本当のことは言わないよ。

 クッころさんにとっても、都合の良いように言っといたよ。


「あらそう、ごめんなさいね。

 手間を掛けさせてしまったみたいですわね。

 でも、安心しましたわ。

 わたくし、酔うと何を口走るか分からないものですから。

 家人から外ではお酒を飲まないように口喧しく言われてますの。」


 あっ、やっぱり。

 そう言われてるんだったら、少しは自制しましょうよ…。


お読み頂き有り難うございます。

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