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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記
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第35話 クッころさん、ピンチ!

 ロクでもない語源を聞いてしまったけど、今でも、エクレア様の事はクッころさんと呼んでる。

 だって、本人がとっても気に入ってるんだもん。

 とても、本当のことは言えないよ。


 そのクッころさん、武具屋に行ったら金属製の鎧は無理だから止めとけと言われ落ち込んでた。

 代わりに勧められた革製の鎧は、貧乏くさいと言ってお気に召さなかったようだったけど。

 買って三日もするうちに、…。


「革の鎧って、なんか貧乏臭くてイヤだったのですが…。

 着けてみると、この方が軽くて、動き易くてよろしいですわね。

 見た目など、機能性の前ではどうでも良いことですわ。」


 なんて言い出したの。やっぱり、騎士甲冑は無理して着ていたんだね。

 まあでも、防御力は格段に落ちるんだけどね。

 くっころさんは、どうせ戦えないし、革鎧で全然問題ないよね。


 ということで、今日もクッころさんは、革鎧を着けて嬉々として出掛けて行ったよ、

 見回りと称するただの散歩に。


 そう言えば、おいら、クッころさんにレベルのことを聞けないままだ。

 クッころさんの腕なら、おいらを斬り殺すことは出来ないだろうけど。

 やっぱり、お貴族様にレベルのことを聞くのは気が引けるよ。

 いっそ、もう一度お酒を飲ましてみようかな。

 酔って勝手に喋り出すかもしれないし。


 白馬に跨り出掛けるクッころさんを見送りながら、おいら、そんなことを考えてた。


     ********


 その日、日課のシューティング・ビーンズを狩りに行った帰り道のこと。

 町に向かって歩いていると、草原の中に土煙が上がって、もの凄い速さでこっちに向かってくるの。


「マロン、逃げなさい!

 強大な魔物が追いかけて来るわよ!」


 土煙の主は、白馬に跨ったクッころさんだったよ。

 もの凄い速さで馬を疾走させてるんで、乾いた路面から土煙を巻き上げているらしい。

 強大な魔物って、いったい何に追いかけられてるんだと後ろを見ると…。


 うさぎ…だった。


 強大ね…、確かにクマのような大きさで、おいら達一般人じゃ太刀打ちできないけど。

 仮にも騎士を名乗るんだったら、立ち向かおうよ。

 ワイバーンを一人で倒すつもりなんでしょう。

 うさぎはレベルゼロの魔物だよ…。


 さすが、なんちゃんて騎士だと、ある意味感心して見ていたら、…。

 うさぎに追い付かれそうだよ、クッころさん。

 うさぎって、あんなに執拗に追いかけて来るもんなんだ。

 それとも、クッころさん何か怒らせるような事でもしたのかな?


 おいらは、近くにあった大木を背にするように立って、足元にあったこぶし大の石を拾ったの。

 そして、クッころさんが通り過ぎるのを待ったんだ。

 クッころさんが通り過ぎたのを見計らい、おいらはうさぎに向かって石を放ったよ。

 あたれと願って。


 おいらが放った石は、ヒョロヒョロと勢いなく飛んで、猛スピードで駆けるうさぎの額に命中したんだ。

 命中したと言うより距離が届かず手前に落ちてきた石に、うさぎの方から突っ込んできた感じ。


 ゴツン!


 おいらのこぶし大とそれなりの大きさだったことに加え、うさぎが猛スピードだったので結構大きな音がしたよ。

 涙目で立ち止まったうさぎは、怒りの矛先をおいらに変えて、こちらに突進してきたんだ。

 狙い通りにあたってラッキーだよ。


 血走った目を向けおいらに突進してきたうさぎ。

 本当にクマのような大きさで、牙を剥いてやんの。

 すごい迫力で、おいら、マジでちびりそうになったよ。


 そして、うさぎがおいらに激突する寸前、またあの不思議な感覚が体を走り。

 突進してくるうさぎの動きがコマ送りのように見えたんだ。

 そして、寸でのところで、うさぎとの激突を勝手に回避するおいらの体。


 おいらが、脇に避けるとその後ろには…。


 ドシン!


 大きな音と共に背にしていた大木が揺れたんだ。

 そう怒りに任せて突進してきたうさぎが、勢いそのままで大木に頭から突っ込んだの。

 良かった、ちゃんと『回避』が発動して。

 自分から意識的に利用しようとしたのは初めてなんで、ちゃんと発動するか冷や冷やしたよ。


    ********


 大木に激突して気を失っているうさぎを前に、これどうしようと考えてると。


「おーい、マロン、無事ですか?」


 引き返してきたクッころさんが声を掛けて来た。


「うん、勝手に気にぶつかって倒れたから、おいらは平気。」


「しっかし、なんなのですか、このバケモノは。

 これは、死んでいるのですか?」


 さすが、なんちゃって騎士、うさぎも見た事ないんだね。


「あっ、これ、うさぎ。

 町で一番ポピュラーに売られている食肉だよ。

 木に激突しただけだから、死んではないと思う。

 町に持って帰れば、銀貨五十枚くらいで売れるよ。

 持って帰るなら、トドメをささないとね。

 逃がしちゃうなら、目を覚ます前にここを離れた方が良いね。

 また、襲ってくるから。」


「なんですって!これがうさぎですって!

 うさぎってのは、レベルゼロの一番弱い魔物ですわよね。

 それで、こんなに大きくて獰猛なのですか?」


 おいらの説明に目を丸くするクッころさん。

 やっぱり、うさぎ、見たこと無かったんですね。


「まあ、いっぱしの冒険者が二、三人掛かりで狩りますからね。

 ひよっこ冒険者だと十人掛かりでやっと倒す魔物ですから。

 で、どうします?持って帰りますか?」


 おいらが持って帰るならトドメをさして欲しいと尋ねると。


「止めておきましょう。

 こんな大きな魔物、わたくしの愛馬では運べませんわ。

 無益な殺生をしても仕方ありませんし、放置していきましょう。」


「そう、わかったよ。

 じゃあ、目を覚ましたら危険だから、クッころさん先に帰って。

 おいら、やる事があるから、それを済ませて帰るね。」


「あら、そうなの?

 じゃあ、先に行くけど。

 マロンも、うさぎが目を覚ます前にここを離れるのよ。」


 そう言って立ち去っていくクッころさん。

 クッころさんが十分にここから離れるのを確認してから。

 おいらは、うさぎに向かって手を合わせたんだ。


「ゴメンね。おいらを恨まないでね。

 ここに放置して、道を通りかかった人を襲ったら困るから。

 それに、せっかくうさぎのお肉があるんだから、捨てていくのは勿体ないもんね。

 売れば銀貨五十枚だもの。」


 おいらは、腰に付けた錆びた包丁を、チョコンとうさぎの首元に当てたんだ。

 当然のように『クリティカル』が発生して、絶命するうさぎ。


 おいらは、すぐさま『積載庫』にしまったんだ。

 あとで、市場にでも売りに行こうっと。

お読み頂き有り難うございます。

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