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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第十四章 まずはコレをどうにかしないと
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第329話 タクトー会へカチ込みしたよ!

 父ちゃんとタロウが冒険者ギルド『タクトー会』のチンピラを伸したあと。

 見せしめの対象を『タクトー会』と決めて、さあカチ込もうかと考えていると。


 今まで冒険者達に乱暴されていた酒場の店主が地面から起き上がり。


「何処の何方かは存じませんが、危ないところを助けて頂き有り難うございました。」


 打ち付けた腰を痛そうに撫でながら、お礼を言ってくれたよ。


「礼には及ばないよ、民の安寧を護るのが王侯貴族の務めだもの。

 むしろ今まで、こんなゴミを野放しにしちゃってゴメンね。

 腰、相当痛いでしょう、災難だったね。

 これ、良く効くから飲んでおいて。」


 おいらは、店主にカップに注いだ『妖精の泉』の水を差しだしたの。

 何も無いところからいきなりカップが出て来て、店主は驚いていたけど。

 おいらが一目で貴族だと分かる身なりをしていたからか、余計な事は尋ねて来なかったよ。


 おいらに勧められるまま、カップに口を付けた店主。

 コクコクとカップに注がれた水を飲み干すと。


「何だコレは…。

 あれほど痛かった腰の痛みがすうっと引いたぞ。」


 店主は驚いて目をパチクリさせていたよ。


「それは、良かった。

 こいつら、いつもこんな風に商売している人を脅して、みかじめ料をせしめてるの?」


「ええ、こいつら、『タクトー会』って新興のギルドの構成員段ですが。

 執拗にみかじめ料をタカって来るんでさぁ。

 質が悪いことに、金がねえと言うと無理やり借金を進めて来るんです。

 『タクトー会』から借金をして、みかじめ料を払えなんてふざけたことぬかしやがる。

 これがとんでもねえ罠で、一度借りたら若い女は『風呂屋』、男は『マグロ漁船』一直線でさぁ。

 奴らの貸す金は、べらぼうな高利で返せる訳ねえんです。」


 『タクトー会』ってのは、この国の冒険者ギルドの中じゃ後発らしくて。

 他のギルドからシマを奪って、この十年くらいでこの国一番の規模に拡大して来たらしいよ。

 連中、『大地が続く限り全て我がシマ』なんて思い上がった考えを持っている暴力集団みたい。

 殺し上等で、敵対するギルドの構成員を皆殺しにすることもしょっちゅうだって。


 『タクトー会』の質の悪い所は、今までのギルド以上にカタギを食い物にすることらしいよ。

 その最たるものが、押し売りのようなやり方で金を貸すことなんだって。

 ヒーナルの悪政のせいで貧困や食糧難に苦しむ人が増えていることに、連中は目を付けたらしいの。 


 例えば、何処かの村が食糧難に陥っていると知ると、大量の食糧を売り込みに行くらしいよ。

 相場の倍なんてアコギな値段で売りつけるらしいけど、田舎の村にそんなお金がある訳もなく…。

 その食料を買うお金を『タクトー会』が貸し付けるらしいよ、トイチとかいう暴利で。

 担保は、若い女の人と若い男の人。


 借金が返せないと人相の悪い連中が来て、担保になっている人を荷馬車に乗っけて連れて行くらしい。

 『タクトー会』に目を付けられた村は、年寄りと幼子しか残らないって言われてるそうだよ。


 女の人には、『タクトー会』が各地で経営する『風呂屋』で泡姫さんをさせるそうだよ。

 そして男の人には、『マグロ漁船』に乗せるか、ギルドが保有する農園で食料を生産させるかなんだって。

 男女とも、年季を定めた奴隷働きで、最低限の食事が支給される以外に給金はもらえないんだって。

 文字通り、体で返すってヤツだね。


 その方法で『タクトー会』は資金を作って、勢力を伸ばして来たみたい。

 借金のカタに押さえた男の人にタダ同然で食糧を作らせて、食糧不足の村に高値で押し付けるんだもの。

 儲からない訳が無いよね。

 『風呂屋』の方でも『タクトー会』はえげつない商売をして、競合先を駆逐してるらしいよ。

 『タクトー会』の風呂屋は、従来相場の半額で同じサービスを提供して、競合店からお客を奪ってるみたい。

 低価格でお客さんを集めることで、凄い勢いで店を増やしているんだって。

 低価格でも、『タクトー会』の風呂屋はボロ儲けらしいの。

 そりゃそうだよ、にっぽん爺から聞いたけど、普通『風呂屋』の売上げの半分は泡姫さんの取り分らしいの。

 『タクトー会』は泡姫さんにただ働きさせているんだもの、半額にしても儲けは他と変わらないもんね。 


 借金のカタに取られた人はみんな苛酷な労働を強いられる訳で、無事に年季を迎える人は少ないだろうって。

 酒場の店主は、『タクトー会』の悪行を事細かに教えてくれたよ。


「この国の冒険者も、思っていた以上に質が悪いね。

 でも、安心して、もう大丈夫だよ。

 お触れ書きを出しておいたけど、これから冒険者は厳しく取り締まるから。

 みかじめ料なんて、一切払うこと無いよ。

 それでもし、冒険者に乱暴されたりしたら、『冒険者管理局』に通報して。

 厳しく処罰するからね。」


「おう、俺が『冒険者管理局』の局長だ。

 近いうちに街中に事務所を置くから、何かあったら通報してくれ。

 厳しく摘発してやるからよ。」


 おいらの言葉を受けて、父ちゃんも店主に宣伝していたよ。


「お貴族様が、私共下々のために動いてくださるとは勿体ないことです。

 体のケガも治してもらって何とお礼を言ったら良いのか。

 誠に恐れ多いですが、あなた様はどちらのお貴族様でございますか?」


「ああ、名乗ってなかったね。

 おいら、新しくこの国の王様になったマロンだよ。

 周りのお店の人に広めておいて。

 女王マロンが『みかじめ料』なんか払う必要無いと言ってたって。」


 おいらが名乗ると、店主は驚いて平伏しようとしたけど止めたよ。

 いくら裏通りとは言え、道端で平伏なんかされたら何事かと思われるじゃない。  


      **********


 そんなやりとりがあって、おいら達は『タクトー会』の本部にやって来たんだ。

 ここへ来る途中で捕まえたタクトー会の構成員五人をズルズル引き摺って来たものだから。

 何事かと、やじ馬が集まって来たよ。


「父ちゃん、じゃあ、カチ込むよ。準備は良いかい?」


「おう、任せておけ、娘に良いところ見せないとな。

 じゃあ、いっちょうやるか。」


 おいらの問い掛けに、腕まくりをしながら気合いを入れた父ちゃん。

 父ちゃんは、背中に背負った愛用の戦斧を手に構えると…。


 ドガシャーン!


 思い切り『タクトー会』の本部の正面入り口の扉を粉砕したよ。


「何だ、何だ、出入りか!」


「誰だ! タクトー会に正面から喧嘩を売ってくるバカは!」


 建物中からそんな怒声が響いたかと思ったら、続いてガラの悪い連中がぞろぞろと出て来たよ。

 冒険者って何処の国でも変わらないね、タロウがパンチと呼んでいる髪型で、額の剃り込みが深いの。


「『冒険者管理局』の者だ。

 今日は、顔見せのついでに、家宅捜査をさせてもらうぜ。

 ここにご法度に背いた現行犯がいるからな。」


 父ちゃんは家宅捜査を宣言すると。

 ギルドの連中に向かって、足元に転がしていたさっきの現行犯を蹴り飛ばしたよ。


「げっ、こいつら地回りに出した下っ端じゃねえか。

 テメエ、『冒険者管理局』だか、何だか知らねえが、舐めたことしくさりやがって。」


 ゴロゴロと転がって来た一人のならず者を見て、ギルドの連中からそんな声があがったよ。

 あっ、これは穏便には済まないパターンだね。


 案の定、跳ねっ返りが一人、父ちゃんに向かって斬り掛かって来たよ。


「おうおう、元気なこった。

 しかし、彼我の実力差も量らんで突進する猪は早死にするぞ。」


 そんな言葉と共に、戦斧の柄の真ん中くらいを握った父ちゃんは、持ち手の部分で襲って来た男の鳩尾を突いたよ。

 レベル五十近い父ちゃんの突きはとんでもなく強烈で。

 弾かれるように後方へ飛ばされた男は、集まったギルドの連中に衝突して、なぎ倒していたよ。


 それで、ギルドの連中ったらキレちゃって、集団で父ちゃんに襲い掛かってきやんの。


「タロウ、悪いけど父ちゃんを手伝ってあげて。

 みんな、雑魚みたいだけど。

 数が多くて時間の無駄になるよ。」


 おいらがお願いすると、タロウは腰に下げた剣を鞘に納めたまま手にして。


「はい、はい、わかりましたよ。

 アルト姐さんから、マロンに従うように言われてるからな。」


 一人でギルドの連中と戦っている父ちゃんの助っ人に行ったよ。


 もとより、相手はみんな雑魚で父ちゃんの相手になりそうな者は誰もいなかったけど。

 タロウが加わることで、あっという間にケリが付いちゃったよ。


「ホント、何で、冒険者ってこんな見掛け倒しばかりなんだろうね。

 剣を振り回して、弱い者いじめしか出来ないなんて情けない。」


 おいらが、『タクトー会』の冒険者の不甲斐なさに、ため息を漏らしながら本部に入って行くと。


「まあ、まあ、そう言うな。

 父ちゃんやジロチョー親分のような冒険者だっていることは、マロンが一番よく分かっているだろう。

 こいつら、誇りを持って冒険者になった訳じゃなくて。

 定職に就けない連中が冒険者を名乗っているだけで、単なるならず者だからな。

 マロンが俺に望んでいるのは、こんな連中を排除してまっとうな冒険者を育てろってことだろう。」


 『タクトー会』の冒険者に呆れているおいらに、父ちゃんはそんな答えを返してきたよ。

 

       **********


 血の気が多い連中を全て打ち倒したら、ギルドのホールは静まり返っちゃった。

 誰もがおいら達を見て、顔を青くしていたよ。


「アイヤー!

 これは何事アルカ?

 何で、うちの若いモン倒れているアルカ?」


 ホールの様子がおかしいと気付いたんだろうね。

 カウンターの奥にある部屋、たぶん事務所から一人のオッチャンが出て来たよ。

 そこはかとなく胡散臭い語尾で話す弁当箱顔の中年男。


「俺は『冒険者管理局』の局長、伯爵のモリィシーだ。

 あんた、このギルドの幹部か?

 先日、王都の各所にある掲示板に出したお触れ書きは読んでいるか?」


 父ちゃんが、胡散臭い中年男に尋ねると。

  

「アイヤー、伯爵様アルカ。

 これは、これは、こんな汚い所へお運びいただき恐縮アルネ。

 私、『タクトー会』の若頭補佐のオーキアルヨ。

 どうか、お見知りおきアルネ。

 それで、お触れ書きアルカ?

 もちろん、広場のお触れは全部読んでいるアルネ。」


 若頭補佐のオーキは、胡散臭い愛想笑いを浮かべてそう返事をしたの。


「そうか、それは良かった。

 実は、街を歩いていたらだな。

 このギルドの舎弟が、みかじめ料を脅し取ろうとしている場面に出くわしてよ。

 みかじめ料の徴収はお触れ書きで禁止したんだが、見てないじゃ済ませねえぞ。

 現行犯で捕えたもんだからな、悪いが家宅捜査をさせてもらうぜ。

 叩けば、まだまだ埃が出て来そうなんでな。」


「アイヤー、それは悪かったアルネ。

 このギルド、大変大きいアル。

 ご法度は守るように良く言い聞かせているアルガ。

 末端には稀に跳ねっ返りもいるアルネ。

 悪かったアルネ、謝るアルヨ。

 分かったアル。気の済むまで家捜しするヨロシ。」


 胡散臭い笑い顔を崩さずにオーキは、そう言って家宅捜査を受け入れるようなことを言っているけど。

 その実、オーキは愛想笑いを浮かべた顔の額から汗を流していたよ。


 だいたい、こいつ、末端の構成員が勝手にみかじめ料をせびったように言ってるけど。

 さっき、『地回りに出した』って言ってる奴がいたよね。一番最初に斬り掛かって来た奴。


 あれって、ギルドの指示でみかじめ料を徴収しに行ったってことじゃないの。

 知りませんでしたで、トカゲの尻尾切りは許さないよ。 

お読み頂き有り難うございます。

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