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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第一章 異世界人?何それ?
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第3話 ヒノキの棒でスライムを倒すの?

 失礼な奴だと思いながら、おいらは目の前の兄ちゃんを改めてマジマジと見たんだ。

 あまり関りになりたくないので、今までよく見ていなかったから。

 それで、今更ながら、幾つかの事に気付いたよ。


 まずこの兄ちゃん、髪の毛が黒かった。

 おいらもそうだけど、この辺の人はほとんどが茶髪。

 中には金髪や銀髪の人も見かけるけど、黒髪の人なんて初めて見た。


 それと、着ている服がとっても柔らかそうな布で出来ていた。

 おいらが着ているゴワゴワの服と全然違う。

 灰色の上下お揃いの布地に見える服は、凄く動き易そう。

 

 独り言をこぼしながら、なにやら考え込んでた兄ちゃんだけど。


 突然、


「あっ、スライムみっけ!」


 そう大声を出して、足元に落ちていた棒っ切れを拾い上げた。

 で、その棒っ切れを振りかぶると…。


 グシャッ!


 いきなり、スライムを潰しやがった。


「ああああ!兄ちゃん、なんてことをしてんの!

 スライムを潰すなんて!」


「ああ、昭和のレトロゲームって言ったら。

 ヒノキの棒でスライムを潰すところから始めるものだろう。

 勇者だって、初めはそうやってレベルを上げるって。

 親父が言ってたぞ。」


 昭和のレトロゲームがなんだか知らないけど。

 この兄ちゃんの親父さんもいい加減非常識だよね。

 スライムを潰しちゃうなんて。


 私が心底呆れて、兄ちゃんを睨んでいると。


「何だよ、その人を非難するような目は。

 ここじゃあれか、『ボクは悪いスライムじゃいよ』ってか。

 それとも、スライムが正義の見方ってか?」


「兄ちゃん、バカ?

 スライムに良いも、悪いもないでしょう。

 スライムは貴重な資源だって父ちゃんが言ってたよ。

 街のスラム屋にもってけば、一匹、銅貨一枚で買い取ってくれるんだよ。」


「スライムが資源?

 いったい何に使うんだよ?」


「おいらに言わせる?

 おいら、ちっこいけど、一応女の子だよ。」


 このお兄ちゃん、ホント、何も知らないんだ…。

 子供だって、口にするのを憚る言葉があるのに。 

 でも、何も知らないなら、教えてあげないとダメかも知れない。


「スライムは何でも食べるんだよ。

 だから、捕まえてトイレの中に放すの。

 何を食べるかは、察してね。」


 他にも肉屋なんかでも重宝してるんだって。

 穴の中にスライムを飼っといて、そこに食べられない部分を捨てるって。 

 肉を取った後の、筋とか、骨とか。全部食べてくれるから。


「なんだ、それだけか。

 脅かすなよ。

 スライムを狩ったら、大変なことになるのかと思ったぜ。」

 

「だって、もったいないじゃない。

 捕まえてトイレの補充に使っても良いし。

 スライム屋に売っても良いんだよ。

 それに、スライム捕りで稼いでいる人もいるんだ。

 スライムを無意味に殺したら、スライム捕りの人に恨まれるよ。」


 スライムは沢山いるから、一匹潰したところで目くじら立てる人はいないかも知れない。

 でも、スライム捕りの人が探している隣で、スライムを潰していたら絶対にトラブルよね。

 この町では、みんな当たり前にスライムは資源だと思ってるから。

 兄ちゃんみたいな人がいると、トラブルのタネになりそうだよ。


「おい、それじゃあ、どうしろと言うんだ。

 どうやって、俺はレベルを上げれば良いんだ!」


 何か、兄ちゃんが叫んでる。そんなの知らないよ。

 ってか、またレベルって口に出しているし…。

 一度痛い目を見ないと懲りないのかね。


「兄ちゃん、さっきの私の忠告を覚えていないの?

 ()()を人前で口にしたら、殺されても文句言えないってこと。

 それに、スライムなんて倒しても、()()は上がらないよ。」


「そうだ、何でレベルの話題を口にしたらヤバいんだ?

 それを聞こうと思って付いて来たんだよ。

 それに、スライムを倒してもレベルが上がらないってどういうことだ?」


 あっ、また、大きな声で…、聞いている人がいたらどうするの。


「兄ちゃんに、教えてあげる義理は無いでしょう。

 その言葉は禁句なの、ただ、それだけを胸に刻んどいて。

 後、少し頭を働かせたら。

 おいらが倒した『シューティング・ビーンズ』も魔物ななんだよ。

 おいら、もう三年以上毎日これをやってんだ。

 だけど、()()はピクリとも上がらない。

 たぶん、スライムも同じ、弱い魔物を幾ら倒しても意味ないんだ。」


「げっ、マジ無理ゲー!

 まともな装備も無しで、どうやって強い魔物を狩れって?

 しかも、レベルの情報は禁句だとか言ってるやがるし。

 だいたい、何なんだ、この不愛想なガキは?

 『はじまりのまち』にいるモブの子供は親切なもんと相場が決まってるだろうが。

 やってらんねー、もう日本に帰りたいぜ。」


 不愛想なガキって、本当に失礼な兄ちゃん。

 だいたい、勝手について来て酷い言い草だよ。

 何で、当たり前のように、何でも教えてもらえると思ってるかな。


 おや、この兄ちゃん、最後に何て言った…。


 『にっぽん』って言った?


 これは、もしかしたら、小遣い銭を稼ぐチャンスかも。

お読み頂き有り難うございます。

同時に、第1話から第4話を投稿しています。続けてお読み頂けると幸いです。

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