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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第二章 ゴミスキルとおいらの平穏な日常
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第22話 タロウはヒトじゃないって?

「しかし、まあ。

 その歳になって、スライムも満足に捕れないとは…。

 いくら病気とはいえ、ホント、残念な子ですね。」


 呆れた様子でそんな呟きを漏らしたビリビリ。

 タロウを眺めるその目つきは、心底気の毒な子供を見る時のモノだったよ。


「余計なお世話だ、ほっといてくれ。

 俺の住んでた世界には、スライムなんかいなかったんだ。

 捕まえ方を知らなくても当然だろう。」


 あっ、開き直った…。


「スライムがいなかったですって?

 タロウ、あんた、いったい何処から来たの。

 およそ、この大地の上でスライムのいない場所などないと思うけど。」


 ビリビリは、とっても物知りなんだ。

 百年も生きていると言う事もあるけど、妖精族ネットワークは凄いらしい。

 こんな小さな体だけど、飛べると言うのは凄い事で。

 一日で馬車の何倍も移動できるんだって。


 妖精の中には、気まぐれにあっちこっちの妖精の里を飛び回っているのがいるんだって。

 そんな風来坊の妖精がもたらす情報があるので、この大地のことを隅々まで知ってるって。

 そんなビリビリが、スライムは何処にでもいると言うのだから、多分そうなんだろうね。


「だから、俺はこの世界の住人じゃないんだ。

 異世界にある日本って国から来たんだ。

 俺のいた世界では、スライムも妖精も架空の存在なんだよ。

 実際にいるもんじゃないんだ。」


 『世界』?、『異世界』?。また訳のわからない言葉を使う…。

 『世界』という言葉の意味は、『大地』という言葉とは違うのかな?


 おいらは、タロウの言葉が理解できずに首を傾げてたんだけど…。


「へー、異世界ね…。面白い事言うのね。

 もう少し詳しく教えてくれるかしら。」


 ビリビリは、タロウの言葉に興味を持ったみたいで、詳しく知りたいようだ。


「俺のいた世界じゃ、魔物はいないし、スライムや妖精だっていないんだ。

 ただ、どれも、物語に出てくる架空の存在としてはメジャーなんだよ。

 ゲームとか、マンガとか、ラノベとか、娯楽が沢山あって。

 その中では、定番のように出てくるんだよ。」


 おいらから、物知らずや常識知らずと言われて鬱積してたのか。

 そのあと、タロウは堰を切ったように話し出したの。

 タロウの世界は、ここよりも科学というのが発達していて。

 空を飛ぶ乗り物や凄い速さで走る乗り物があるって。

 それって、にっぽん爺も良く言ってた夢物語だよね。


 タロウの故郷、日本はゲームとかいう娯楽が盛んだったと言うの。

 ヒノキの棒でスライムを倒すとかは、そのゲームの中では定番なんだって。


「俺が物知らずなのではなく、ここと日本とでは世界の常識が違うんだよ。」


 タロウはそう言い張っていたよ。

 

 でもねぇ…。

 空を飛ぶ乗り物なんて、やっぱり、おいらには夢物語にしか聞こえないよ。

 チューニ病ってやつのせいで、妄想を口にしてるのかも知れないしね。

 

 タロウの言葉を興味深そうに聞きいていたビリビリ。

 話しに耳を傾けながら、タロウの姿をシゲシゲと見詰めていたんだ。


     ********


 そして、タロウの話が途切れると、ビリビリが言ったの。


「ふーん…。

 こことは世界の(ことわり)が違う別の世界があって、タロウは別の世界からやって来たと。

 そんな夢物語みたいなことを聞かされても、俄かには信じられないわね。

 タロウの話したことが事実なのか、病気からくる妄想なのか、それは判断できないわ。

 ただ、タロウが、この世界の人間ではない事は本当のようね。」


「うん?

 何で、そんなことが分かったの?」


 タロウがこの世界(?)の人間ではないとハッキリと言い切ったビリビリ。

 おいらがその理由を尋ねると。


「何ていえば良いんだろう?

 魂のあり方が、この大地に住む人間と違っている。

 ヒトであって、ヒトでないと言うか…。

 そうね、分かり易く言えば、タロウの姿形はこの大地の人間と同じだけど。

 この世界の女子(おなご)(つがい)になっても子をなす事は出来ないね。」


 妖精のビリビリには魂の形を見ることが出来るんだって。

 さっきからタロウを観察してると思ってら、それを視てたんだ。

 で、その魂が、おいら達、この大地に住むヒトと違うんだって。


 これって、ビックリするところなの? 

 そんなこと言われても、おいらにはタロウがただの残念な人にしか見えないよ。

 結局、タロウは、ヒトなの、ヒトじゃないの?

 

 おいらが、ビリビリの謎かけのような言葉に首を捻っていると。


「なにー!

 それじゃ、俺はここでキレイなお姫様と結ばれて子孫を残す事は出来ないのか!」


 相当ショックを受けたのか、そんな叫びをあげたタロウ。

 そのまま、へなへなとしゃがみ込んじゃった。

 そのキレイなお姫様って発想は、どこから出て来たんだろう。

 普通、こんな辺境の平民には貴族のお姫様なんて無縁だと思うよ。


 そんな妄言を吐いて落ち込んじゃったタロウ。

 しばらく、しゃがみ込んで俯いてたんだけど…。


「グッフ、グフ、グフ」


 突然、キモい笑い声をあげたんだ。


「考えてみれば、幾らヤッても子供が出来ないなんて。

 無責任にばら撒き放題じゃないか。

 これは、アレか、エロゲ展開キターーーーーー!ってか。

 俺にハーレム系エロゲの主人公みたいになれってことなのか。

 よーし!俺はハーレム王になってやるぞ!」


 エロゲ? ハーレム? なんじゃそりゃ?

 また訳のわかんない事を…。


 しっかし、立ち直り早いな。

 でもね、何王だか知らないけど、…。

 王になる前に、先ずは二食ちゃんと食べられるようになろうよ。

お読み頂き有り難うございます。

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