表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第二章 ゴミスキルとおいらの平穏な日常
20/848

第20話 若作りにもほどがあるって…

「あっ、ビリビリ、こんにちは!

 ゴメンね、煩くし…。」


 おいらのすぐ近くで聞こえた澄んだ鈴の音のような声。

 苦情を言う声の主に、おいらが詫びる言葉を遮るように…。


「うおおお!さすが異世界!

 こういうのが出てくるのを待ってたんだ!」


 タロウの奴、叫び声を上げると、声の主をいきなり鷲掴みにしやがった。

 あっ、おバカ!


「い、いきなり、何すんのよー!」


 怒声をあげたソレは、タロウに向かって力を振るったの。


 バリ、バリ、バリ、バリ!


「うぎゃああああああ!」


 雷のような音と共に、目の前に走る眩い閃光。

 そして、響きわたるタロウの悲鳴…。


 閃光が消え去る頃には、足元にタロウが倒れ伏し、ピクピクと痙攣していたよ、  


「ねえ、ビリビリ、これ、死んでないよね?」


「ああ、マロン、久しぶりね。

 そのビリビリは止めてって、いつも言ってるでしょう。

 私にはアルトローゼンという名前があるんだから。

 ところで、この失礼な男は、知り合いかしら?」


 腰に両腕をあてて、プンプンと怒っている小さなお姉さん。

 どのくらい小さいかと言うと、私の手のひら二つ分くらいの大きさ。

 膝丈までのヒラヒラのドレスを着て、背中にはカゲロウのような二枚の翅が生えてるの。

 アルトローゼンって名前は知ってるけど、長くて発音し難いんでビリビリって呼んでる。

 怒るとビリビリって痺れる力を使うから、さっきタロウに使ったやつ。


「うん、昨日知り合ったんだ。

 タロウって言うの。

 ゴメンね、勝手に連れて来ちゃって。

 いい歳して、スライム一つ満足に取れないもんだから。

 簡単に捕れる所と思って、ここに連れて来たの。

 で、もう一度聞くけど殺してないよね、タロウ。」


「平気、平気、私たち妖精族では殺しはご法度なのよ。

 私の電撃を食らっても、十人中八人は死なないから安心して。」


 十人中八人って…、二人死んでるじゃない。

 それ、全然ご法度じゃないよね。


    ********


「うっ、イテテ…。

 おい、マロン、その凶暴なちっこいのはいったい何なんだ。

 ゲームのお約束だと…。

 そう言う愛玩系の魔物は、捕まえれば従魔になる魔物なんだが…。」


 しばらくして、目を覚ましたタロウがそんなことを言ったんだ。

 ビリビリのことを、『凶暴』だとか、『ちっこいの』とか。

 本人を目の前にしてよく悪口が言えるね、もう一度ビリビリ食らうよ…。


「凶暴とは失礼ね、あんたが先に無礼を働いたんでしょう。

 レディを鷲掴みにするなんて、信じられない。

 命があっただけでも、有り難いと思いなさいよ。

 しかも、言うに事を欠いて、私を魔物扱いとは。

 この森を統べる妖精族の長と知っての暴言なら赦しませんよ。」


 緩やかに波打つ長い金髪を逆立てて怒るビリビリ。

 そうこのヒト(?)、この森をテリトリーとする妖精族の族長なんだ。

 見た目二十歳前で、若々しくてとっても美人さんなんだけど、…。

 それでいて、実は百年以上生きているんだってさ。ビックリだよ。

 前に、それを聞いてオバアちゃんだねって言ったら、ビリビリを食らったの。

 レディに年齢の話はご法度だって。


「なんだよ、この世界の妖精ってこんな凶暴なのか。

 妖精って、心優しくって、人の手助けしてくれるんじゃないんかよ。」


 まだ、言うか…。

 何なの、その身勝手な言い分。


「ねえ、マロン、こいつ、何言ってるの?

 妖精と人とは相互に干渉しないという常識を知らないの?

 ヒトの子は幼少の頃から、親に言い聞かされるモノでしょう。

 『恐ろしい妖精の祟りがあるから、妖精の森には近づいちゃダメ』って。」


 信じられないという顔をして、ビリビリが尋ねて来たよ。

 この辺の人なら誰でも知っていることを知らないのだもね。

 ビリビリの顔つきを見るに、既に呆れを通り越しちゃったみたい。


「タロウが変な事を言ってゴメンなさい。

 この人、少し心を病んでるらしいの。

 チューニ病とかいう病気。

 妄想と現実が区別つかなくて、時々変な事を言うんだって。

 それとね、タロウは昨日おいらの住む町に来たんだ。

 何でも、タロウが住んでたにっぽんという所は少し常識が違うらしいの。

 この辺の人なら、子供でも知ってることを知らないんだよ。

 悪いけど、ビョーキなら仕方がないと思って赦してくれないかな。」


「またそれかよ。

 悪かったな常識知らずで。

 いい加減、人を病人扱いするのはやめて欲しいぜ。」


 おいら、タロウのことを庇おうとしてるんだけど。

 何故か、タロウは不満をもらしてる。

 病人扱いが嫌なら、言動を直した方が良いと思うよ。


「フッ。

 余所者で、心を病んでいるのか。

 それじゃ、仕方がないね。

 ここは、マロンの顔に免じて赦してあげましょうか。」


 ビリビリは、ため息まじりに言ったの。

 どうやら、怒りをおさめてくれたみたい。

 今は、タロウを可哀想な人を見るような目で見詰めてる。


 ひとまずは、タロウの無礼な言動を赦してくれたビリビリだけど…。


「さて、その男の無礼な振る舞いには目を瞑るとして。

 マロン、あなたのことは特別にこの森に立ち入ることを許したの。

 変な人を連れてきたらダメって言ったでしょう。」


 やばっ、今度はおいらが叱られる番だよ…。

お読み頂き有り難うございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「マロン、あなたのことは特別にこの森に立ち入ることを許したの。変な人を連れてきたらダメって言ったでしょう。」 なんやマロン、妖精との約束を簡単に破ったんだ、妖精の信用なくしたね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ