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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第九章【間章】『ゴムの実』奇譚(若き日の追憶)
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第194話 こんな使い道もあったよ

 タロウは試作品のパチンコを手にして、程々の満足感を持ったようだけど…。

 採って来た『ゴムの実』の効果にシフォン姉ちゃんは大満足のようで、毎朝テカテカな顔をしているよ。

 ツヤツヤなシフォン姉ちゃんと対照的に、タロウが日に日にやつれて行くの気のせいかな。


 そのシフォン姉ちゃんだけど、意外にも家事が得意で、料理だけでなくお裁縫も上手だったんだ。

 アルトに『ゴムの実』を取り上げられないように、その『皮』の活用方法を考えてたらしいの。


 その第一弾が、『ゴムの実』の皮を、パンツがずり落ちないように使おうっての。

 今までの、パンツって上の方を紐で結んで留めてたんだ。

 女物なら、三角形の頂点を二つ重ねたような形の布の四隅に紐があって。

 三角形の頂点が二つ重ったところにオマタを当てて、腰の所で紐を結んでずり落ちないようにするの。

 両端を一々紐で結ばないといけないから面倒なんだ。


 男物は、薄手の布で作った短パンって感じのパンツで。

 外着の短パンと同じく上の部分が袋縫いになっているの。

 そこに通した紐を腰位置の前で結んで、ずり落ちないようにしているんだ。


 タロウやにっぽん爺の故郷では、紐の代わりにゴムを使うことで一々結ぶ手間を省いてるんだって。

 それを聞いたシフォン姉ちゃんは、早速『ゴムの実』の皮を使って試作品を作ってみたの。


 男物をタロウにあげて、女物をおいらにくれたよ。

 使った感想を聞かせて欲しいって。


 シフォン姉ちゃん、自分用の試作品は作らなかったんだって。

 今のパンツの方が、タロウが『紐パン』って言って興奮するからって…。


「正直、紐を結ぶタイプのパンツは馴染まなかったんだよ。

 うっかり、紐を堅結びにしちまって、…。

 腹を壊した時にトイレで焦ったぜ、危うく漏らすところだったぜ。

 やっぱり、パンツにゴムは必需品だな。」


 タロウはそんな汚いことを言ってたけど、『ゴムの実』の皮を使ったパンツに甚くご機嫌だったよ。


 おいらも、シフォン姉ちゃんがくれたパンツはとってもお気に入りなんだ。

 脱ぎ着する時に一々紐を結ぶ必要がないし、『ゴムの実』の皮の伸縮性のおかげで体にピッタリとフィットするの。

 お腹を壊した時に、紐を堅結びにしちゃって、脱げないと言う()()も起こらないしね。


 タロウとおいらの感想を聞いて、シフォン姉ちゃんはさっそく量産して売りに出そうとアルトに提案したんだ。


「却下!

 あんた、『ゴムの実』の皮を大量に使おうって…。

 その果肉部分はどうするつもりなのよ。

 まさか、あんたが全部食べようって言うんじゃないでしょうね。

 いい加減にしないと、タロウが衰弱死するわよ。」


 図星を差されたみたいで、シフォン姉ちゃん、ギクッという顔をしてたよ。

 でも、結局のところ『ゴムの実』の皮を使ったパンツは量産することになったんだ。

 タロウとおいらがすっごく便利だと主張したから。


 アルトの『積載庫』の能力を活かして、『ゴムの実』を完熟させて果肉と皮を分離させるの。

 皮の部分だけをシフォン姉ちゃんに渡して、果肉の部分は積載庫の中に置いておくらしいよ。

 下手に外に出すと拙い事になりそうだから、有効利用の方法が見つかるまで溜めておくって。


 もらえる『ゴムの実』が増えないで、シフォン姉ちゃん、少しがっかりしてたけど…。

 毎日、一個の『ゴムの実』は継続的にもらえることになったんで、それなりに納得してたみたい。

 

 シフォン姉ちゃん、販売用のパンツが出来上がるとにっぽん爺にもあげてたよ。

 『ゴムの実』のことを教えたくれたお礼にって。


「おお、これぞまさしく、日本で履いてたトランクスそのものではないか。

 今思うと、私は、あの時なんでこれを作ろうと思わなかったのか。

 つい、形がアレそのものだったので、囚われてしまった…。

 普通にゴム紐として使っておけば、平穏な人生を歩めただろうに。」


 もらったパンツを手にして、そんな事を呟いていたよ。

 故郷のモノにそっくりなパンツをもらって喜んだにっぽん爺は、シフォン姉ちゃんにお礼を渡してた。

 『にっぽん』っていう国で流行っていたお洒落なパンツのデザイン画、もちろん女性用の。


「えっ、こんなに布地が少ないの!

 これなんか、真ん中が割れているじゃない…。

 タロウ君は喜ぶかもしれないけど、…。

 パンツとして用をなすかしら、これ?」


 いっぱい描いてくれたデザイン画の中には、あんまり実用的じゃないモノもあったみたいだけど…。


「それはそれで、若いモンにとってはある意味()()()なのだよ。」


 にっぽん爺がそんなことを言うと、シフォン姉ちゃん、ニヤッと笑って頷いていた。

 さっそく作って、タロウの前で履いて見せてみるとか言ってたよ。


 そんな、にっぽん爺がデザインした女性用のパンツだけど…。

 試みに、シフォン姉ちゃんはこの町の広場で露店を出してみたんだ。


 にっぽん爺がトランクスと呼んだ男性用のパンツも、紐で縛らなくて良いのが受けて好評だったんだけど。

 それに輪をかけて、にっぽん爺がデザインしたお洒落なパンツは大好評だったの。

 特に、布が少なかったり、変なところに切れ込みがあるパンツ…。


「ナニコレ! ほとんど隠せてないじゃない…。

 誰がこんなの履くのかしら? 」


 露店で手に取った若いお姉ちゃんが、そんな事を言ったそうだけど。

 そのお姉ちゃん、周りをキョロキョロ見て…。

 誰も見ていないのを確認すると、こそっと買っていったんだって。

 これで意中の人を落とすんだって、呟いてたらしいよ。


 そんな感じで、若いお姉さんや若奥さんが買っていって。

 にっぽん爺がデザインしたパンツは、あっという間に売り切れたんだって。


 その話を聞いたアルト。


「この色事爺(いろごとじじい)、この期に及んで、またこの国のモラルをぶち壊すつもりかしら。」


 そんなことを呟いて呆れていたよ。

 一年後にはこの町にベビーブームが起こるかも知れないって、アルトは呟いてた。


 広場の露店で人気が出るようなら、領都の服屋に売り込んでみるらしいよ。

 アルトとシフォン姉ちゃんで相談していたよ。 


       **********


 おいらが狩って来た『サルナシ』トレントの本体だけど。

 『積載庫』の加工機能で、木炭にしてみたら…。


『トレントの木炭(最上級品):火持ちが良く、火力が強い。高値で売れる。 」


 となっていて、他のトレントで作った木炭と全く同じ説明が付いていた。

 どうやら、最弱のトレントでも木炭の原料としては上位種と品質が変わらないみたい。


 今、アルトがライム姉ちゃんと、採って来た若木を何処で栽培するか相談しているところなんだ。

 迂闊なところに植えて、『ゴムの実』が盗まれて出回っちゃったら拙いからね。


 『サルナシ』トレントに関しては、おいらは木炭で少し稼いだだけかな…。

 後は、普段と何にも変わりなく過ごしているよ。


 その日も、日課のシューティング・ビーンズ狩りをして一休みしていると。


「マロン、シューティング・ビーンズは狩り終わったのか?

 俺も、スライムを捕り終わって帰るところなんだが。

 何処かに水鳥が集まっている水場は無いか?

 パチンコを使って鳥が狩れないか試したいんだが。」


 タロウが言うには、『必中』のスキルのおかげで、玉が届けば当たるんだけど。

 パチンコの射程が短くて空を飛ぶ鳥を狩るのは難しそうなんだって。

 なもんで、水場で休んでいる鳥に近付いて狩りたいと言ったんだ。


「分かった、じゃあ、近くにカモが沢山いる河原があるから案内するよ。」


 おいらが、とっておきの狩場に案内すると…。


「おい、マロン、あれは魔物じゃないのか?

 確かに姿形はカモだけど…。

 サイズがカモの大きさじゃないぞ。

 豚くらいの大きさがあるカモなんて、日本じゃ見たこと無いぞ。」


「あれは、普通の鳥のカモだよ。

 気性が獰猛じゃないし、武器になるようなモノも無いからね。

 臆病で近寄ると逃げちゃうから、弓じゃないと狩れないの。

 ここは猟師さんも、あまり来ないから穴場なんだよ。」


 『カモ』の姿をした魔物もいるけど、口ばしが尖っていて獰猛なの。

 風切り羽の先が鋭利な刃物みたいになっていて、首を狙って攻撃してくるんだ。

 とってもヤバいレベル五の魔物だけど、幸いこの辺には生息してないよ。


「何か、この世界に来てから、常識が覆されてばっかりだな…。

 まあ良いや、あれだけデカければ狙いも定めやすいぜ。」


 そんな呟きを漏らしながら、タロウはカモに向かってパチンコを放ったんだ。

 スキル『必中』がキチンと仕事をして、タロウが放った小石はカモの頭に直撃したよ。

 その場で、カモは動かなくなっちゃった。


「ああ、やっぱり、パチンコじゃ威力が足りないな…。

 頭に直撃して気は失っているけど、仕留め切れてはいないみたいだ。」


 カモの様子を確認したタロウはそう言うと、腰に下げた剣でカモの首を斬り止めを刺してたよ。

 そのまま、首を下にして血抜きをしていた。


「俺、カモを狩ったのは初めてだけど。

 出掛けにシフォンに言われたんだ。

 カモを狩ったらすぐに血抜きをしないと、肉が生臭くなるって。

 一応はやり方を聞いたんだけど、これで良いのか?」


 おいらだって知らないって…。

 血抜きの仕方もわからないタロウにカモが捌ける訳もなく。

 カモの血が出なくなったら、丸のまま大きな布袋にいれて背負って帰ることになったんだ。

 家に帰ってシフォン姉ちゃんに捌いてもらうって。


 シフォン姉ちゃんが作ったカモ鍋をおいらにもご馳走してくれるってタロウは言ってた。


 帰り掛け、タロウとやっぱり威力の強いスリングライフルが欲しいなんて話をしながら歩いていると。


 町へ向かう道の端、おいら達は草原に倒れている一人の子供に遭遇したんだ。

お読み頂き有り難うございます。

際どい話にお付き合い頂き有り難うございました。

次話から新章、健全な(?)お話に戻ります。

なお、ストックが減って来ましたので、次話からは1日1話、20時の投稿とさせて頂きます。

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