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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第二章 ゴミスキルとおいらの平穏な日常
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第17話 これ、とっても重宝しそう

 翌朝、何時ものように屋台でウサギ肉の串焼きとパンを買い。

 広場の隅っこに座って朝ごはんを食べたおいらは、町の外に向かったの。


 途中、石造りの立派な建物の中から、ぞろぞろとガラの悪い連中が出てくるのが見えた。

 中には、朝から酒を飲んでたようで、顔を赤くしている人もいるよ。

 そう、そこは昨日話題になってた冒険者ギルドの建物。

 悪どい商売をしているだけあって、町で一番豪勢な建物なんだ。


「おい、聞いたか、昨日ワイバーンが襲って来たんだってな。」


「おお、そうらしいな。

 おりゃ、そん時、ギルドの酒場で酔い潰れてたんで。

 全然知らんかったぜ。」


「俺も似たようなもんだけどな。

 ワイバーンの話を聞いた時、ふと思ったんだ。

 ギルドに寝泊まりしてる若いのを二、三人。

 トレント狩る時みてえに、ワイバーンの前に突き飛ばすんだ。

 ワイバーンが、若いのを食らってる間に、後ろから倒せねえかなって。

 そうすりゃ、俺達も念願のレベル持ちになれんじゃねえか。」


「おめえ、冴えてんな、天才じゃないか。

 そりゃ良い考えだ。

 俺らの贅沢な暮らしの肥やしになるなら、若いのも本望だろうな。

 よし、次にワイバーンが来たらやってみるとすっか。」


 おいらの前を歩くガラの悪い二人組から、そんな会話が漏れて来たよ。

 ひよっこ冒険者を生贄にしてトレント狩るって、普通にしてるんだ…。

 ホント、ロクでもないな。

 でも、こんなに大っぴらに喋ってるのに、引っ掛かる冒険者がいるってどうなのよ。

 相当頭が悪いのか、それとも、毎日のように新顔の冒険者が出てくるのかな


 あれ?

 そう言えば、おいら、昨日、ワイバーンを倒してもレベルが上がらなかったよ。

 レベルは上がらないモノだと思ってたから、うっかりしてた。

 今、二人組の会話を聞くまで、レベルのことを考えもしなかったよ。


 昨日、にっぽん爺が言ってた。

 レベルを上げるには、レベル五以上の魔物を倒さないといけないって。

 ワイバーンのレベルってどのくらいなんだろうね。

 厄災と言われているくらいだから、レベル五より下ってことは無いと思うんだけど…。


 何で、おいらのレベルは上がらなかったんだろう?


 不思議に思いつつも、おいらは町の外に向かったんだ。

 だって、レベルのことを他人に聞く訳にはいかないからね。

 目の前を歩く二人に尋ねるなんて論外、その場で切り殺されそうだよ。

 子供だからと言って手加減するような手合いには見えないからね。


 にっぽん爺なら、教えてくれるだろうけど…。

 その時は、ワイバーンを倒したことを話さないといけなくなる。

 芋づる式に『ゴミスキル』の秘密も。


 やっぱ、聞けないか…。


     ********

 

 レベルの事が分からないでモヤモヤしたけど。


 おいらは、父ちゃんの教え。


「人はレベルゼロ、能力値ゼロが普通。

 一より大きい数字があるのは、プラスの補正。」 


 を心の中で何度も繰り返し、レベルのことは気にしないようにしたの。

 思いがけず、役立つスキルが育ったんだから、これ以上望むのは贅沢だもんね。


 そして、何時もの狩場で、シューティング・ビーンズを狩っている。

 狩りながら思ったよ。

 五歳児の力でも簡単に狩れるシューティング・ビーンズ。

 こればっかり、狩ってるんだから、…。

 正直、『クリティカル発生率アップ』の恩恵なんか気付かないよね。

 クリティカルなんて、必要ないもん。


 シューティング・ビーンズの幼生を持って来た袋いっぱいに詰めたところで。

 おいらは、その布袋を見詰めて『積載』と念じてみた。


 すると、手にした布袋がスッと消えて、脳裏に『積載庫』の中身が浮かんだの。

 ちゃんとそこには、『布袋シューティング・ビーンズ』と書かれていたよ。


 今度は、それを取り出したいと念じてみたら。

 手の中に、布袋が戻って来た。

 おいらは、その布袋の出し入れを何度か繰り返し。

 分かったのは、『積載庫』への出し入れに、決まり文句はないこと。

 単に出したい、入れたいと頭で念じるだけで良いみたい。


 それと、便利なのが。

 シューティング・ビーンズを狩るとその辺にドロップするスキルの実。

 落ちている一帯を見ながら、スキルの実を積載庫に入れたいと念じると。

 何と、一つ残らず収納する事が出来たんだ。

 屈んで拾う事もないし、拾い残しも無い。

 出す時だって、布袋を手にしてその中にと念じると、ちゃんと袋の中に納まる。

 これは、とっても楽だよ。


 そんな事を調べているうちに気付いたの。

 昨日、入れたワイバーンがない事に。


 その代わりにあったのが、…。


『ワイバーンの肉』、『ワイバーンの皮』、『ワイバーンの血』、『ワイバーンの爪』、…。


 …解体されてんの。


 試しに、『ワイバーンの爪』を出してみたら鋭いナイフのような白い爪が出てきたよ。

 それと、『積載庫』の中の『ワイバーンの肉』を見ると。


『ワイバーンの肉:極めて美味。但し猛毒、食後三時間程度で絶命。暗殺に便利。』


 ご丁寧な事なことに解説付きだった。…なに、暗殺に便利って。


 因みに、ワイバーンは、血や内臓もみんな猛毒で、毒薬の原料になるって。

 いらないな、そんなもの。


 皮や爪は、それに牙は加工すれば、武器や革鎧になるって。

 おいら、戦わないから、これも要らないね。

 売ればお金になりそうだけど、売った途端においらが倒したってバレちゃう。


 解体したワイバーンはしばらく放置だね、どれも危険物だよ。


     ********


 『積載庫』の中にある解体されたワイバーンの一覧を見て行くと、その後に。


 見慣れない文字があったの。


「金貨?」


 金貨なんて物を拾った覚えは無いよ。


 そもそも、金貨ってなに?


 おいらは、金貨を一つ手のひらの上に出してみたんだ。

 それは、ちょうど銀貨と同じくらいの大きさで、キラキラと黄色っぽく輝いていたの。

 確かに、『貨』と書いてあるだけあって、お金のように見えるけど…。


 おいら、父ちゃんから、この国のお金は銀貨と銅貨だと習ったんだ。

 物知りのにっぽん爺も、同じことを言ってた。


 金貨って、お金なのかな?

 そもそも、この金貨、どこから出て来たの?


 まさか、ワイバーンが呑み込んでいて、解体したらお腹の中から出て来たとか。


 これ、にっぽん爺に聞いても大丈夫かな? 


お読み頂き有り難うございます。

20時にもう1話投稿しますので、引き続きお読み頂ければ幸いです。

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