表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第七章 興行を始めるよ!・・・招かれざる客も来たけれど
157/848

第157話 仇討ちなんてしないって

「そう、じゃあ、最期にもう一度確認するわ。

 あんた達がこの国の王都にやって来たのは、マロンについての何らかの情報があった訳では無いのね。」


 聞くべきことは粗方聞き終えると、アルトはウエニアール国においらの存在がバレていないかを再度確認したんだ。


「ああ、我が王はその娘の具体的な情報は何も掴んではいないようだ。

 俺達は、我が王の命に基づいて『ドッチ会』のガサ入れに来たのだが。

 ドッチ会で匿っているとの情報があった訳じゃなく。

 我が王に最後まで楯突いたのがあそこの連中だったから。

 王女が身を寄せるとしたら、あそこが怪しいと思ったようだぜ。」


 ドッチ会の中を家捜ししたものの、見つからなかったけど。

 それであっさりと帰って見つかりませんでしたとは、報告し難かったみたい。

 「ちゃんと探したのか」と王から叱責されるかも知れないから。


 それで、しばらくの間、ドッチ会に出入りする人を見張っていたみたい。

 もしかしたら、王女が立ち寄るかも知れないと。


 おいら、そんな時にどんぴしゃりと訪ねて行ったんだね。

 見つかっちゃったのは単に運が悪いだけみたい。


 まあ、お触れ書きが、『生きていれば八歳の女の子』だから、確たる情報は掴んでいないと思っていたけど。


「そっ、分かったわ。

 今現在、マロンがここにいると知っているのは、アンタ達五人だけなのね。

 じゃあ、マロンを護るのは簡単ね、アンタ達の口を封じちゃえば良いのだから。

 話はもう良いわ、約束通り楽にしてあげるね。」


 アルトはそう告げたかと思うと、おいらを『積載庫』の中に入れたの。

 積載庫の『特別席』は窓の外の視界が遮断されていたんだけど。

 暫くしてそれが解かれると、窓から見える風景は王都を目指して飛んでいる風景だったの。


 やがて、王都へ入り、モカさんの家に着いておいらは積載庫から出されたんだ。


「ねえ、アルト、あの五人はどうしちゃたの?」

 

 想像は出来たけど、一応確認して見るとと…。


「ああ、約束通り、楽にしてあげたわ。

 人生の苦悩やしがらみから解放されて、楽になったと思うわよ。

 もう、あの五人はこの世界に痕跡すら残っていないわ。

 マロンを狙っている輩に、マロンの存在を知られる訳にはいかないもの。」


 アルトったら、最近、『妖精族の掟』を破ることが多いね、『殺しはご法度』じゃなかったの。

 おいらが、それを指摘すると、「何事にも例外はつきものよ。」って言った後で。


「自分の大切なものを護る時は、手加減しちゃダメよ。

 あの掟は、力に溺れることを戒めるモノなの。

 私達妖精族は、いとも容易く他者の命を奪うことが出来るわ。

 だから、増長して他者を安易に殺めることが無いように掟に定めたのよ。

 でも、掟に固執して自分が大切にする者達に危害が及ぶと本末転倒でしょう。

 だから、それが必要な時は躊躇しないことにしているの。」


 いつもだったら、廃人にして放置するんだけど。

 今回の場合廃人になった騎士達を捜しに来た別の騎士が見つけたら面倒だから。

 誰がやったのかと躍起になって犯人を捜すだろうし、そこから足が付きかねないから。

 だから、前ハテノ男爵みたいに消滅させちゃったんだって。

 幸い、おいら達と接触したことを目撃している人はいないから。

 もう、足が付くことはないだろうって、アルトは言うの。


     **********


「それで、マロン、お前はどうしたいんだ?

 両親の仇を討ちに行きたいのか。」


 部屋で待っていた父ちゃん達に五人組から聞いたことを報告すると。

 父ちゃんはおいらの希望を尋ねてきたんだ。


「いやいや、そんな事はしないよ。

 本当の母ちゃんと父ちゃんの仇を打ったとして、その後どうするの。

 おいら、王様なんてできないよ。

 それに、パターツさんには申し訳ないけど…。

 おいらの父ちゃんは、父ちゃんだけなんだ。

 おいら、産んでくれた母ちゃんも、実の父ちゃんも記憶にすらないもん。

 そんな人の仇討ちなんてしようと思わないよ。」


 ただ、実の両親の仇だからと言う訳じゃなくて、酷い王様のせいで苦しんでいる人達が気の毒なんだよね。

 その点では王様を赦せないけど…。

 でもね、多分、王様を懲らしめるのは、八歳の女の子の役目じゃないと思うんだ。


「姫様のおしゃる通りです。

 仇討ちなど、考える必要はありません。

 お母上、キャロット様は姫様が平穏に過ごされることを望んでいました。

 姫様が、ご無事に生き長らえることを望んで私に託されたのです。

 仇討ちなどと考えて、姫様にもしものことがあればキャロット様が嘆かれます。」


 おいら、パターツさんは悲しむかと思ったんだ。

 パターツさんが姉妹のように育った母ちゃんのことを『そんな人』呼ばわりしてしまって。

 でも、そんな事より、おいらが「仇討ちに行く」と言わなかったことに安心したみたい。

 「仇討ちなんてか弱い姫様の考える事ではありません。」なんて言ってたよ。

 か弱いかどうかは、疑問だけどね。


「そうか、おれも安心したよ。

 マロンが、危ないことをすると言わなくて。

 マロンは俺の元からお嫁に出すと、お前を託された時から決めているんだ。

 それで、マロンが連れて来た男に言ってやるの夢なんだ。

 『娘はくれてやるから、奪っていくお前を一発殴らせろ』ってな。」


 父ちゃんはそんな親バカ丸出しの冗談を言ってホッとした表情を見せてくれたよ。


      **********


「そう、じゃあ、こっちから手を出すのは止めておきましょう。

 五人組の話じゃ、他に仲間はいないみたいだけど。

 あいつらが行方不明になったら、きっと捜索が掛かるわ。

 その時に、マロンとパターツの目撃情報がそいつらの耳に入るのは上手くないわ。

 あんまり王都を出歩かない方が良いし、王都に長居しない方が良さそうね。」


 そう言ったアルトの予定は、明日から三日間『STD四十八』の興行をするらしい。

 クッころさんが、『お仲間』を集めるのにそのくらい時間が掛かるんだって。


 『STD四十八』の興行が終って、ハテノ男爵領の騎士の募集が終ったら早々に辺境へ帰ることにしたよ。

 遅くとも五日後には、王都を出るってアルトは言ってた。


「それで、パターツさんはどうするの?

 元いた町に帰って、また宿屋で働く?」


 おいらが尋ねると。


「そうですね、私、姫様が心配で、居ても立っても居られなくて…。

 宿屋のご主人が止めるのを聞かずに、飛び出してきちゃいましたから。

 今更、もう一度雇ってくださいなんて、虫が良い事は言い難いんですよね。」


 どうやら、パターツさんは帰る場所を無くしてしまったみたい。


「ならば、ハテノ男爵領へ来れば良いわ。

 私が雇ってあげる。

 『STD四十八』のスケージュール管理なんかをお願いするわ。

 ハテノ男爵の所に間借りさせてもらえるようにお願いしておくわ。」


 アルトってば、ライム姉ちゃんが領主たちからの引き合いを受けるって勝手に決めちゃったから。

 パターツさんにそのお手伝いをさせようってこと見たい。


 連中に本格的な興行をさせるとなると、お金のことととか税のこととか色々面倒な事務手続きが発生するから。

 それもパターツさんに任せたいって言ってた。

 まあ、妖精のアルトには人の社会の決め事なんか、面倒なだけだものね。


「分かりました、そのお話、有り難くお受け致します。

 姫様に懸賞金が掛けられたとなると、私も辺境に身を隠した方が良いでしょうし。

 仕事も、住居もアテが無かったので助かります。」


 パターツさんは、住む場所と仕事が見つかったんでホッとしていたよ。


 さっそく、そのことを伝えに行くと、ライム姉ちゃんは困った顔をしてしまって。


「アルト様、色々と気遣いを頂けるのは有り難いのですが…。

 現在の私の館には、パターツさんにお貸しできるような部屋が無くて。

 お恥ずかしい話なのですが、館はあの通り荒れ放題で。

 今、私達が住んでいる部屋と騎士の部屋以外に使える部屋が無いのです。」


 凄く恥じ入るように、それこそ蚊の鳴くような声で言ったんだ。


「仕方ないわね。

 いいわ、ちょっと待ってなさい。

 今、手持ちにある『シュガーポット』やら、『スキルの実』やらを売ってお金に換えてくるわ。

 それを、あんたが男爵になったご祝儀に上げるから、それで館を直しなさい。」


 ライム姉ちゃん、何から何までアルトの世話になるのは気が引けるって断っていたんだけど。

 アルトったら、強引に押し通しちゃったんだ。


 何か、アルトに考えがあるみたい。

お読み頂き有り難うございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ