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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第七章 興行を始めるよ!・・・招かれざる客も来たけれど
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第138話 滑り出しはすこぶる順調だよ

 『STD四十八』の連中の初公演は大成功、大道芸みたいなやり方とは思えないくらい儲かったよ。

 妖精のアルトはお金なんか要らないから、全部、連中と演奏をしてくれた耳長族のお嫁さんに分けちゃったの。

 耳長族の里って自給自足の生活で、色々と足りないものがあったみたい。

 新婚生活に必要な物を揃えられるってみんな喜んでいたよ。


「アルトって、優しいね『STD四十八』の連中を更生させて、生活の術を与えてあげるんだから。

 元々、アルトはお金なんか要らないし、稼ぐ必要なんかないんだもんね。

 それなのに、連中のために色々と面倒を見てあげて。」


 公演の儲けの分配を受けて喜ぶ連中の姿を見ながら、アルトの優しさに感心していると。


「えっ、別に連中のためにしている訳じゃないわよ。

 元々は連中の剣技を気に入ったから、私の目を楽しませようと思って連れて来たんだもの。

 でも、思ったより出来が良かったんで、私が独り占めしちゃ勿体ないと思ったからね。

 娯楽の少ないこの町の人間にも見せてあげようと思ったのよ。

 連中目立ちたがりだから、この町で成功したら王都で公演させると言えば頑張るでしょう。」


 アルトは何てことの無いように言うけど。

 稼げるようにお膳立てしてあげて、お嫁さんまで探してくれるんだものやっぱり優しいよ。


 おいらがアルトに感心している横では。


「アタシまでおこぼれに与かれるなんてラッキー!

 これで、タロウ君に精のつくもの買ってあげようっと。

 今晩も頑張ってもらわないといけないもんね。」


 アルトから受取った布袋の中身を確かめて、シフォン姉ちゃんが喜んでたよ。


「まっ、今回、思った以上に儲かったのは、あんたの働きによるところも大きいものね。

 タダ見して帰ろうと思っていたスケベじじい共からたんまり巻き上げてくれたから。

 次回からもよろしく頼むわね。

 それと、まだ若いからって、あんまりタロウに無理させたらダメよ。」


 シフォン姉ちゃんが、集金箱を持って回ると面白いほどお金が集まったもんね。

 やっぱり、美人で、胸が大きいってのは得なんだね。


「はい、集金係くらい幾らでもしますんで、また声を掛けてくださいね。

 タロウ君のことは、言い付けを守ってますよ。

 最近、朝までとかの無理はさせてませんから、安心してください。」


 このところ、タロウの顔色が良くなったのは徹夜することが無くなったからなんだ…。


     **********


 『STD四十八』の公演は、その後五日おきに行われたんだ。

 あんまり、頻繁にすると飽きられちゃうし。

 演奏している耳長族のお姉ちゃんは妊婦さんが多いから、無理させられないもんね。

 それに、連中が新しい振付や歌の稽古をする時間だって必要だから。


 娯楽の少ない辺境の町でのこと、『STD四十八』と耳長族のお姉ちゃんによる公演はすぐに評判になった。

 近くの村や歩くと一、二時間かかる隣町からわざわざ見に来る人もいるんだよ。


 広場に集まる人が増えたんで、色々な食べ物の出店も出て。

 『STD四十八』の公演のある日は、まるでお祭りの時みたいに賑やかになるんだ。


 公演も回を重ねるうちに、メンバーの個々にご贔屓が付くようになって、最近は差し入れとかもあるの。


「石清水のケンさんって、本当に素敵ね。私の石清水もすすって欲しいわ。」


 なんて言っているお姉ちゃんや。


「やっぱり、リンリンちゃんが最高だよな。

 あのあどけない姿で、お腹がポッコリ出ているのが尊い。まるで聖母様のようだ。

 リンリンちゃんのお腹を膨らませた奴が、妬ましい…。」


 なんて、父ちゃんのことを妬んでいるお兄ちゃんとか。


 広場のあちこちで、ご贔屓の話題に盛り上がる人達が見られたよ。


 おいらとシフォン姉ちゃんも引き続き集金係を手伝っているんだけど。

 常連さんは、布袋に銀貨を詰めて用意してきてあるの。

 その中に、ご贔屓に対する手紙なんかを一緒に入れてあるんだよ、熱心だね。


「うわー!流石にこれは引いちゃう!」


 ある時、集金箱の整理をしていると、シフォン姉ちゃんがそんな声をあげたんだ。

 何事かと思って見ると、銀貨が二十枚くらい布に包んであったの。

 布に包んであるのは別に珍しくは無いと思うけど…。


「シフォン姉ちゃん、どうかした?」


「マロンちゃん、これ見てよ。あからさまに誘ってるの。」


 シフォン姉ちゃんが銀貨を包んであった布を広げて見せてくれたんだけど。

 女性もののパンツだった…、使用済みの…。


 パンツに、手紙が添えられてたよ。

 サブ様へと書いて、自分の名前と、年齢、それに自分の家の場所が書いてあるの。

 いつでもお待ちしておりますって。

 センターのサブ、大人気だね、パンツくれたの二十歳のお姉さんだったよ。

 

 でも残念、サブの好みは、もう十歳くらい年上だよ。


「いいんじゃない。

 そのくらい熱烈なご贔屓が付くようになれば、立派なモノよ。

 もう少し、レパートリーを増やして、修業を積んだら本当に王都へ乗り込めるわね。」


 銀貨を包んだパンツを手にして引き気味のシフォン姉ちゃん。

 そんなシフォン姉ちゃんに、アルトはそう言って笑ってた。

 

      **********


 一番心配していた、耳長族のお姉ちゃんを狙った不心得者だけど…。

 やっぱりいたよ、しかもすごい早耳。

 初回の十日後の三回目の公演、その前日に馬に乗ってやって来た三人組の冒険者が第一号。

 町の入り口で、門番をしていたギルドの人がこの町に何の用かを尋ねると。


「何の用かだと? 決まっているだろう。

 この町に若い耳長族の娘が来るそうじゃないか。

 明日この町で興行があるんだろう。

 上手くひっ捕まえて、王都にでも持って行って売ろうかと思ってよ。

 早く来ないと、お仲間に先を越されちまうと思って、わざわざ馬を借りて来たんだぜ。」


 この町の冒険者も、自分達と同類の人間のクズだと思ったんだろうって。

 そいつらは隠そうともせずに言ったらしいよ。


 門番は二人、そいつらは三人、しかも馬に乗っている。

 敵わないと見た門番は、歓迎すると言って、そいつらを冒険者ギルドの建物の中に連れて行ったんだって。

 それで、ギルドのホールにたむろってた冒険者で袋叩きにしたらしい。


 三回目の公演の日には、町の入り口に晒し者になっている廃人が六人に増えてたよ。


 冒険者ギルドの連中がそいつらを尋問したら、王都に行く途中の結構大きな町から来たって言ったらしいよ。

 酒場で飲んでいて、実際に耳長族を見たという人の話しを耳にしたらしいよ。

 拉致して売っぱらったら大金が手に入ると思って、慌ててやって来たみたい。

 せっかちだね、耳長族を狙ったらどういう目に遭うかちゃんと聞かずに飛び出してきちゃうなんて。


 六体に増えた入り口前の生ける屍。

 さすがに目に付くようで、他所から来た人は皆一様に尋ねてくるみたい。この廃人は何事かって。

 その度に耳長族を狙った者の末路で、この町では絶対に耳長族を狙うことは許さないと説明したんだって。

 一応、高札にそう書いてあるんだけど、沢山の人が尋ねて来るみたい。

 そのくらい異様な光景なんだろうね、六体の生ける屍が並んでいるのって。


 この見せしめは効果抜群だったようで、耳長族には手出し無用との噂もちゃんと流れてくれたみたい。

 しばらくは、耳長族のお姉ちゃんを狙う愚か者もいなくて、平穏に興行を続けることができたんだ。


 そう、しばらくの間は…。

お読み頂き有り難うございます。

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