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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第七章 興行を始めるよ!・・・招かれざる客も来たけれど
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第135話 町のギルドに釘を刺しに行ったら

 耳長族が里ごとアルトの森に引っ越してきてすぐのこと。

 耳長族に待望の赤ちゃんが誕生したんだ、実に三十一年振りだって。

 もちろん、産んだのはミンミン姉ちゃん。

 父親はおいらの父ちゃんで、妹ができたよ。


 まだ、本当に小っちゃくて、父ちゃん似か、ミンミン姉ちゃん似かも分かんないけど。

 アルトから聞かされていた通り、耳は長くて、産毛は金色、そこは耳長族の特徴そのものだったよ。


 で、父ちゃんとミンミン姉ちゃんは、そのまま耳長族の里に住んでいるんだけど。

 おいらは、今まで通り町で暮らすことにしたんだ。


 おいらが町で一人暮らしをするって言ったら、父ちゃん、凄くがっかりしてた。

 ずっと、おいらと一緒に暮らしたいって思ってたみたいで。


 でも、…。

 耳長族の家って木の上にあるでしょう。

 そこそこの広さはあるんだけど、部屋が区切られていないんだ。

 幾つもの部屋に区切るほどは広く出来ないから。


 父ちゃんとミンミン姉ちゃん、新婚さんだもんね。

 おいらがいたらイチャイチャできないだろうから。

 アルトも、「この家でマロンも一緒じゃ、二人目の子作りがは難しいわね。」とか言ってたし。


 それに、実際問題として、おいら、毎日、『妖精の泉』の水を汲みに来ているからね。

 シューティング・ビーンズの狩り場だって、この森の横だもん。

 寝床が別なだけで、毎日父ちゃんとミンミン姉ちゃんと顔を合わせることはできるから。


 その日、父ちゃんとミンミン姉ちゃんの赤ちゃん、ミンメイをあやしていると。


「マロン、良いところにいたわ。

 町のギルドに行くから付き合いなさい。

 そうね、ミンミンと旦那にも来てもらおうかしら。」


 アルトがミンミン姉ちゃんの家に入って来て、おいら達にギルドまで付き合えって。


「アルト様、俺達をギルドなんかに連れて行ってどうするんですか?」


 父ちゃんが怪訝な顔で尋ねたよ、あの街のギルドってカタギが足を踏み入れる場所じゃないからね。


「これから、あの町で『STD四十八』の興行を始めるつもりだから、その前に釘を刺しておくのよ。

 ろくでなしの冒険者どもが、耳長族に手を出さないようにね。

 あのギルドの連中も命が惜しいだろうから、前もって脅しておけば冒険者を厳しく取り締まるだろうからね。」


 以前、おいらに迷惑を掛けたギルドの上層部はみんな、アルトに廃人にされちゃったもんね。

 その時、おいらとおいらの関係者には、今後一切迷惑を掛けないという証文を書かされているし。

 「もし約定に反したらどんな処分を受けてもかまわない」とまで証文に書かれているから、ギルドの連中はアルトに逆らえないんだ。


       **********


 アルトの『積載庫』に乗せられたやって来たおいらの町のギルド。

 アルトが副組長を出せと言ったら、副組長は泡を食って飛んで来たよ。


「これはこれは、アルト様、ご足労いただき恐縮でございます。

 して、今日はどのようなご用件でお越しになられたのでしょうか。

 まさか、この町の冒険者がなにか、アルト様のお気に障ることをしたというのでは…。」


 アルトがギルドに顔を出すのは、文句付けに来る時だけなんで副組長は気が気ではないみたい。

 ちなみに、この副組長がこのギルドのトップなんだ。

 ギルドの組長は、上納金のノルマ未達でギルド本部に指を詰めて差し出すことだけがお仕事なの。

 アルトの機嫌を損ねて廃人同様にされちゃって、それしか出来る仕事が無いんだって。


「違うわよ、新しく私の身内に加わった人を紹介しておこうと思ってね。」


 アルトはそう言うと、『積載庫』の中から父ちゃんとミンミン姉ちゃんを出したの。

 もちろん、ミンミン姉ちゃんの腕には、ミンメイが抱かれているよ。


 ミンミン姉ちゃんの姿を見て、副組長はハッとした表情を見せたよ。


「この三人は、マロンのお父さんモリィシーとその奥さんのミンミン、それに二人の赤ちゃんミンメイね。

 気付いたかと思うけど、ミンミンとミンメイは耳長族よ。

 私、ミンミンとミンメイだけではなく、耳長族の里を一つ保護下に置いたわ。

 この周辺にある耳長族の里は一つだけ、要するにこの辺にいる耳長族は全て私の身内よ。

 分かっているかと思うけど、私の身内に手を出したら承知しないからね。

 ちゃんと冒険者に徹底しておいてよ、もしも冒険者が耳長族に手を出そうものなら…。

 あなたやギルドの幹部も連帯責任で、プチっと殺っちゃうからね。」


 そう言って、アルトは目の前にいつもの光の玉を浮かべて見せたの。

 バチバチと火花を飛ばすその光の玉の恐ろしさは、このギルドの連中は身に染みているはずなんだ。


「ひっ! アルト様、そんな物騒なモノおしまいください。

 アルト様に一切ご迷惑をおかけしないという誓約は重々承知しております。

 この町にいる冒険者達にも、耳長族には一切手出し無用と厳命しておきますので。」


 副組長は、冒険者に対して耳長族に手を出さないように徹底すると約束したんだけど。

 アルトはと言うと…。


「それだけじゃ足りないわ。

 あなた、最近、わたしが手塩にかけて育てている芸人の卵を知っているかしら。

 この町の広場で時々練習しているので噂になっていると思うのだけど。」


「はぁ、あの大人数で剣舞をしている若者ですかな、それがどうか致しましたか。」


「あの男の子達、全員が耳長族の娘を嫁にもらったのよ。

 それでね、今度、この町の広場であのグループが正式に興行を始めるわ。

 お嫁さんになった耳長族の娘が、彼らの剣舞に演奏を付けるために一緒に里から出てくるのよ。

 見目麗しい耳長族の娘の噂はすぐに広まると思うわ。

 当然、耳長族の娘を捕らえようと、不届きな冒険者が他所から入ってくるでしょうね。

 良いこと、この町を拠点とする冒険者だけでなく、他所から入って来た冒険者も徹底的に管理しなさい。

 もし、そんな連中が私の身内に迷惑を掛けたら、あんた達も連帯責任をとらせるからね。」


 なんて、無茶苦茶厳しい要求をしたんだ。

 建前上は、普段何処で活動しているかに関係なく、その冒険者ギルドの管轄内にいる冒険者は全て監督する責任があるんだけど。

 今じゃ、そんな建て前は有名無実化しているんだ。

 町に住んでいる冒険者すらまともに管理できていないし、冒険者ギルド自体がならず者の巣窟と化している状況だもんね。

 他所から入ってくる冒険者なんか、管理できる訳がないよ。

 でも、アルトはそれをやれと副組長に迫ったの、…例によって光の玉で脅しながら。


「わかりやした、わかりやしたから、それは勘弁してください。」


 そう言った副組長は、ギルドのホールにたむろしてこちらに聞き耳を立てていた冒険者たちに言ったんだ。


「おい、野郎ども、聞いていたか。

 アルト様は耳長族に手出しする者は、誰であろうとも、どんなことをしてでも排除しろと仰せられる。

 良いか、もし、耳長族に手出ししようとする輩を見かけたら、容赦するんじゃないぞ。

 遠慮はいらねえ、袋叩きにして、町から放り出してやれ。

 言うまでもねえが、てめーらも耳長族に手を出したら承知しねえぞ。」


 まあ、ここにたむろしている冒険者の多くは、ギルドの幹部がアルトに廃人にされる様子を目撃している訳で…。


「わかりやした!

 耳長族には一切手は出しやせん!

 耳長族に手を出そうとする奴も許しやせん!」


 ホールの中から、副組長の命に従う声が返って来たよ、異口同音にたくさん。


     **********


 でも、…。


「けっ、馬鹿馬鹿しい。

 伝説の耳長族の女を捕まえて、王都の闇オークションに掛ければどんだけの金が手に入ると思ってんだ。

 ここのギルドの連中はみんな、頭がおかしいんじゃねえか。

 そんな羽虫一匹に怯えて、唯唯諾諾と従ってるなんてよ。

 俺たちゃ、絶対にそんな指示には従えねえよ。

 俺としちゃあ、この場でその羽虫を締めあげて、耳長族の里の在り処を吐かせるのが一番だと思うぜ。」


「そうだ、そうだ。」


「そうだよな、何だよこのギルドは、さすが辺境、腰抜けばかりだな。」


 なんて言っている三人組の冒険者がいたんだ。

 最初に口を開いたおっちゃんは、命知らずにも、本当にアルトの方に向かってきたよ。


 アルトは冷たい視線を副組長に向けたんだけど…。


「いえ、知りません、あんな連中初めて見ました。

 この町の冒険者にあんな奴はいなかったと思います。

 第一、この町の冒険者でアルト様にあんな口を利ける者はいないかと。」


 さっそく、余所者の冒険者がいたみたい。

 自分の指示に従わない冒険者の存在に、副組長はダラダラと冷や汗をかいているよ。


「ねえ、あんた達、この町のモンじゃないようだけど。

 いったい何処から来たのかしら?」


 アルトが三人組に尋ねると。


「なんだ、羽虫如きが生意気な口叩きやがって。

 俺達が何処から来ようと関係ないだろう。

 ちょいと尋ね人を探して、こんな辺境の町まで来ちまったんだが。

 当てが外れて、むしゃくしゃしていたところなんだ。

 このままだと、ここまでの旅費が丸損だからな。

 そう思ってたら、伝説の耳長族の情報が転がってきたんだ。

 逃す手はないだろうが。」


 アルトの質問には答えずに、そんな勝手な事を言ったんだ。

 どうやら、お尋ね者か何かを探して、賞金を稼ごうとしていたみたい。

 ガセネタかなんかに踊らされて、こんな辺境まで来ちゃったのに。

 お目当てのお尋ね者が見当たらなくて腐っていたみたい。


 そこに降って湧いた耳長族の情報、美味い儲け話だと思ったみたいだね。

 周りの人達がアルトに怯えているのを見て腰抜けと決めつけるなんて、浅はかな奴らだ。

 そんな事だからガセネタに踊らされるのに…。

お読み頂き有り難うございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「それに、実際問題として、おいら、毎日、『妖精の泉』の水を汲みに来ているからね」 一度に沢山収納するのやめたの?
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