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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第六章 帰って来た辺境の町、唐突に姿を現したのは・・・
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第127話 また何か言い出したよ…

 ミンミン姉ちゃんを見て、『森の民』の生き残りと言って驚いたアルト。


「あなた、『森の民』よね。

 良く生きていたわね、もう百年以上見かけないものだから。

 愚かな人間どもに滅ぼされちゃったのかと思ったわ。

 無事、生き延びていて何よりだわ。」


 そんな風に声を掛けられたミンミン姉ちゃんは。


「初めまして、妖精の森の長様。

 私、耳長族のミンミンと申します。

 マロンちゃんのお父さん、モリィシーの妻になりました。」


 挨拶に続いて、ミンミン姉ちゃんは父ちゃんとの馴れ初めから耳長族の里の事まで一通り説明したんだ。


「そうだったの。

 マロンのお父さんは、『森の民』の里で保護されていたのね。

 ミンミン達が心優しい人達で良かったわね。

 昔、人間たちにあれだけ酷い仕打ちを受けたのですもの。

 なぶり殺しにされても文句言えなかったのよ。」


 アルトはミンミン姉ちゃんの話を聞いたあと、おいらに向かってそう言ったんだ。

 アルトが『森の民』って呼んでいるのは、耳長族が森の中に小さな集落を造って暮らしているからみたい。

 耳長族は、元々、繁殖力に乏しいから、個体数が余り増えない事もあるけど。

 森の木々を大切にしているから、人間と違って大きな町は造らないんだって。

 大きな町を造ると森を切り開かないといけなくなっちゃうから。

 個体数が増えて森を切り拡げる必要があると、集落を分けて一部が違う森に移り住むんだって。


 アルトの指摘通り、人間に恨みを持っている耳長族の人達に見つかっていたらなぶり殺しになっていたかもね。

 そう言った意味でも、寛大な気持ちで受け入れてくれたミンミン姉ちゃんの里の人達に感謝だね。


「アルト様、今、私達の里は人間だからといって、男をなぶり殺しにする訳にはいかないのです。

 確かに、村に伝わるような、いかにも冒険者と言う風体であればなぶり殺しにしたかも知れませんが。

 モリィシーは普通の格好をしていましたし、何よりも私好みの男前だったものですから。」


 ミンミン姉ちゃんは、父ちゃんを見ながら惚気て、ポッと顔を赤らめたんだ。


「けっ、ここでも『ただし、イケメンに限る』かよ。

 あぁあ、イケメンは何処へ行っても得して良いよなー。」


 ミンミン姉ちゃんと父ちゃんを見て、タロウがそんな不平を言ってたよ。

 タロウも、もう、そんなに僻まなくても良いじゃない。

 シフォン姉ちゃんって言うキレイなお嫁さんがいるんだから。


 それはともかくとして。

 ミンミン姉ちゃんの里では男がいなくなって滅亡の危機に瀕していたことをアルトに話したの。

 父ちゃんが、頑張って二十人の女の人に赤ちゃんを作ってきたこともね。


「へえ、男が生まれなくなっちゃったの…。

 それって、本当に種として存続の危機ね。

 他に『森の民』の里があれば、同族の男を運んであげるのだけど。

 あいにく、私も心当たりがないものだから、ごめんなさいね。

 私もあなたを見たのが、百年ぶりの『森の民』だからね。」


「いえ、アルト様が恐縮されるには及びません。

 モリィシーが二十人の娘を孕ませてくれたので、存続の危機は脱しました。」


 絶滅の危機に瀕している耳長族を気の毒に思い、力になれないとを詫びたアルト。

 そんなアルトにミンミン姉ちゃんは心配には及ばないと言ったんだけど。


「うーん、でもね…。

 来年生まれてくる二十人の子供は、みんな兄弟姉妹よ。

 二十年後、次世代を産むためにはそれじゃ拙いわね。

 近親交配になると、ますます種の存続が危うくなるわ。」


 物知りなアルトは、兄弟姉妹や親子など血縁の近い人同士で交配すると良くないって説明したんだ。


     **********


 アルトは、そんなこと言ってから何やら考え込んでいたんだけど。


「ねえ、ミンミンさん、あなたの里で今妊娠していない女の人ってどのくらいいるのかしら。

 そうね、その中で人間で言えば、二十代前半くらいの見た目の人ってどのくらいいる?」


 やおら、ミンミン姉ちゃんにそんなことを問い掛けたんだ。


「二十代前半と言われても、私、人間の女性って見たことありませんので…。

 どの程度の若さなのか見当がつかないのですが…。」


 そう言ってミンミン姉ちゃんが首を傾げていると。


「俺、孕み易いようにって若い娘から順番に二十人、里長から割り当てられたんだ。

 その時、里長の指名から漏れて悔しがっていた娘が三十人くらいいたと思う。

 その三十人はみんな、二十代前半に見えたと思う。」


 村の様子を思い起こしながら、ミンミン姉ちゃんに代わって父ちゃんが答えたんだ。


「三十人か…。ちょっと、中途半端ね。

 それじゃあ、取り合いになっちゃうわ。」


 父ちゃんの返答を聞いて、アルトは思案顔になったの。

 うん、今のアルトの言葉で何を考えているのか見当がついたよ。


「アルト、今、お腹に赤ちゃんがいる女の人が二十人。

 耳長族って寿命は長いけど、赤ちゃんが生まれるのって人間と同じ一年くらいなんだって。

 一年後なら、二十人は赤ちゃんが生まれちゃっているよね。

 そしたら、残りの三十人と併せて五十人でちょうど良いんじゃない?」


 おいらが、そんな提案をしてみると。


「あら、マロン、察しが良いわね。

 あいつらもいい歳でしょう。

 養う女房子供がいた方が、真面目に働くと思ってね。

 今でも、大分更生してきたし、少しご褒美は必要かと思ってね。」


 確かに、やつら毎日日課でトレント十体倒しているんでそれなりに稼いでいるから。

 奥さんや子供がいても十分に養っていけるよね。


「ええと、アルト様。

 いったい何のお話をされているのでしょうか?」


 ミンミン姉ちゃんを放って、おいらとアルトが話を進めていたら。

 さすがに気になったらしくて、ミンミン姉ちゃんが聞いて来たよ。


「私、今、活きの良い人間の男を四十八人飼っているのよ。

 もし良かったら、耳長族の里の(つがい)にどうかなって。

 元々、はぐれ者の冒険者だったんだけど…。

 私が、厳しく躾けているから、昔のような暴虐を働くことはないわよ。

 そんなことをしたら、私がプチって()っちゃうから。」


 いや、飼っているって犬や猫じゃないんだから…。

 実際、飼っているようなものかもしれないけど。


「飼っているのですか?

 冒険者なんですよね、本当に大丈夫なのですか。

 噛み付いたりしませんか?」


 ミンミン姉ちゃんも、噛み付いたりって、犬みたいに…。


「平気よ。

 実はね、そいつら芸人にしようかと思って芸を仕込んでいる最中なの。

 歌も歌わせたいんだけど、伴奏が無くてどうしょうかと悩んでいたところなのよ。

 あなた達、『森の民』って楽器が得意でしょう。

 夫婦にして、一緒に興行させたらどうかと思ったの。

 あなた達、『森の民』の安全は私が保証してあげるわ。

 何だったら、私の森の中からあなた達の森に何人か妖精を移住させても良いわよ。

 人間から里を守る用心棒としてね。」


 ああ、そういう事…。

 アルト、耳長族が楽器が得意だという事を知っていて、恩を売って利用するつもりだったんだ。


「はあ、確かに、私も竪琴は得意ですし…。

 妖精の加護が頂けるのであれば、有り難くはあるのですが。

 そんなに、上手くいくのですか?」


 ミンミン姉ちゃん、アルトの言葉を聞いて頼って良いものか迷っているみたい。

 分かるよ、その気持ち。

 アルトの考える事って、一々行き当たりばったりだから…。

お読み頂き有り難うございます。

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