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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第五章 王都でもこいつらは・・・
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第114話 次に行くよ!

 ゴーヨクを『積載庫』に放り込んだアルト。

 『スイーツ団』の本部前に積まれた、奴ら曰く『足の付きそうなモノ』も積載庫にしまうと言ったんだ。


「今日はもう日が暮れるからお終いにしましょう。

 建物の中に残ってる雑魚どもは、モカに言って捕縛してもらいましょう。

 一々相手するのは面倒だわ。」


 そして、ヤバいモノを運び出すために開け放たれていた扉から、『スイーツ団』の本部の中にビリビリを放ったの。


「「「「「「ギャアアーーーーーァ!」」」」」」


 建物の中から野太い悲鳴がいっぱい上がってた。


 おいら達は、一旦『アッチ会』の本部前に戻り、摘発作業中のモカさんに『スイーツ団』の後始末を任せてきたよ。

 アルトが、モカさんの前に『足の付きそうなモノ』をごっそり出したんですぐに動いてくれたよ。

 それで、その日はもうお終い、おいら達はクッころさんの屋敷に戻ったの。


「明日は、荒事は無しにしたいわね。

 冒険者ギルド二つくらい潰すのは簡単だけど。

 そうすると、冒険者たちが野放しになるからね。

 やっぱり、はぐれ者の多い冒険者を統率する組織は必要だわ。

 冒険者ギルドって、本来は冒険者が悪さをしないように監視、監督するために創られたのよね。

 そのギルドが率先して悪さをしているのだから困ったものだわ。

 『アッチ会』を見せしめにしたことで、少しは行いを改めてくれれば良いけど。」


 その夜、アルトは漏らしていたよ。


     *******


 そして、翌日、おいら達が先にやって来たのは冒険者ギルド『ソッチ会』の本部前。

 『ソッチ会』っておいらの住む町にも末端組織があるギルドだよね。

 この前、アルトにお仕置きされていたギルド。


 ギルドの中に入り、


「ねえ、あんた、このギルドで一番偉い人に会いたいんだけど。

 今すぐ取り次いでちょうだい。」


 ホールの奥にあるカウンターで、怠そうにしているオッチャンにアルトが声を掛けたんだ。

 オッチャンはやる気なさそうに。


「なんだ、この羽虫は?

 いきなり来て、総長が会う訳ねえだろう。

 総長と言ったら、同じギルドのモンでも俺みたいな下っ端は会っちゃ貰えねえんだから。」


 そう答えたんだ。


「マロン、ちょっと、このカウンターを小突いでくれる?」


 ああ、そう、取り敢えずいきなりビリビリはしないんだ。

 今回は出来るだけ穏便に済ませたいんだね。


「はーい!」


 おいらは、アルトに返事をして、言われた通りこぶしで扉をノックする要領で小突いたの。


 バキ、バキ!


 小突いた場所を中心に、カウンターの天板がへし折れて…。


「ひぃぃぃ!」


 やる気なさげなニイチャンは悲鳴を上げて飛び退いちゃった。

 そんなニイチャンにアルトは再度尋ねたの。


「総長に取り次いでもらえるかしら。」


「は、はい、す、すぐに取り次いでまいります!」


 泡を食ったような顔で、急ぎ足でカウンターを後にしたニイチャン。

 その後、ほとんど待たされることなく、おいら達は総長の部屋に通されたんだ。 


 部屋に通されると、総長と思われる偉そうな人が奥にある立派な机の所に座ってた。

 その後ろにはこのギルドの幹部と思われる人がずらっと並んでいたよ。


 更に、両脇の壁に沿って、屈強そうな若衆が十人以上何時でも剣を抜ける姿勢で控えていた。


      *******


「あんたらが、儂に用があるってモンかい?

 子供と妖精だけってのは妙な取り合わせだな。

 冒険者ギルドなんて荒くれモンが集まる場所にはそぐわないぜ。

 いったい何の用だい。」


 おいら達三人をみて総長は静かに声を掛けてきたんだ。

 『アッチ会』みたいにいきなり喧嘩腰じゃなかったよ。


「単刀直入に言うわ。

 こうなりたくなければ『スイーツ団』から手を引きなさい。

 今のスイーツ団の実働部隊は潰したわ。

 でも、スイーツ団って三ギルドの共同事業でしょう。

 あんたらがやると言えば、幾らでも実働部隊は挿げ替えられるモノね。」


 そう言って、アルトは『アッチ会』の総長以下の幹部と『スイーツ団』のゴーヨクを目の前に放り出したんだ。

 総長は、『アッチ会』の面々を見て一瞬目を見張ったけどすぐに落ち着きを取り戻して。


「ほう、これをあんたらだけでやったのか。

 もしや、そちらの妖精の(あね)さんは、この前、番外騎士団を焼き払いませんでしたか。」


「あら、よくわかったわね。

 あのおバカさん達、私が手間をかけて作った『ハエの王』を討伐しちゃったのよ。

 しかも、スタンピードを引き起こして私の森に迷惑を掛けてくれたし。

 ちょっと、この国の王に落とし前つけてもらいに行ってね。

 幾つか代償を支払わせたけど、その一つがあの騎士団員の首だったのよ。」


「やはり、そうでしたか。

 あの騎士団、絶対に逆らっちゃいけねえモノの不興をかって消されたと聞いてまして。

 逆らっちゃいけねえモノってのが分からなかったですが、姉さんを見てもしやと思いましてね。

 ええ、わかりやした。儂ら『ソッチ会』は今日を限りにスイーツ団からは手を引きます。

 それで、『砂糖』なんぞの取引、今後はどうすれば良いので。

 ギルドは手を引けと言えば仰せのままにしますが。」


 この人は、番外騎士団が消滅した原因を探っていたみたい。

 自分達と似たような荒くれ者が何者かに消されたんだもの。

 注意しておかないと、下手したら自分達も二の舞になると思ってたみたいなの。


「総長、甘味三品はギルドにとっては稼ぎ頭の品です。

 そんな、安請け合いをされたら困りますぜ。」


 後ろに控えていた幹部が総長に不満をもらしたんだけど。


「バカ野郎、おめえら、全員消し飛ばされてぇのか。

 喧嘩する相手は良く見定めえねえと早死にするっていつも言ってるだろう。

 この姉さん、可愛らしいなりをしてるけど、恐ろしいバケモノだぜ。

 甘味三品くらいに欲を出して、死ぬのは真っ平御免だぜ。」


 総長はそう言って、幹部を叱り付けたんだ。

 

「バケモノは失礼ね。

 でも、あんたは彼我の力の差をハッキリと見定めることが出来るようね。

 感心だから、今の言葉、大目に見てあげるわ。

 『砂糖』、『ハチミツ』、『メイプルシロップ』の三品。

 従来通りの条件に戻しなさい。

 銅貨五十枚の売買価格で、双方から一割づつの手数料をとる形に。

 今まで通りの条件でもシノギは大分増えるはずよ。

 おバカの『アッチ会』が無くなったからね。」


「それだけで良いんですかい?」


 甘味三品の取引を取り上げられないと分かった総長はホッとした顔をしていたよ。

 さっき、不満を漏らしていた幹部も。


「ええ、甘味に関してはそれだけよ。

 でも、その約束、破ったら赦さないからね。

 この国の王様は、たった二百年前の約束を忘れててね。

 違反したから、キツイお仕置きをしてあげたわ。

 今の約束、何百年も有効だからね。」


 何百年も約束を破ったら赦さないと言われて総長は苦笑いを零していたよ。

 そして、甘味三品の話が一段落すると。


「甘味に関してはと言うことは、他に何かあるのですかい。」


 総長が尋ねてきたんだ。


「このギルドでも、冒険者を志願してきた若い娘を監禁しているでしょう。

 連れて帰るから、今すぐ開放してちょうだい。

 開放したら体を洗ってあげて、服を用意するのよ。

 それと、全員に一年くらいは遊んで暮らせるくらいの銀貨を渡してもらおうかしら。

 それくらいは安いモノよね、本来ならそのくらいの稼ぎになるくらい使ったんでしょう。

 それと、今後は若い娘を監禁して慰み者にするのはやめなさい。」


 アルトの言葉に今度は両脇で剣に手を掛けている若いニイチャン達から不満の声が漏れてたよ。

 そんなニイチャン達を、総長は刺すような目で睨みつけたんだ。

 その眼光の鋭さに、ニイチャン達、ビビッちゃって黙って下を向いてたよ。


「わかりやした。

 若いモンの楽しみを奪うのはしのびねえが命には代えられねえ。

 その要求も飲ませてもらいます。

 監禁部屋は無くしますし、若いモンにはカタギの娘に手を出さねえようにきつく言っときます。」


「じゃあ、今まで約束したこと、この場で証文も書いてもらおうかしら。

 私とあんたがそれぞれ同じものを持ってけば間違いが起こらないでしょう。」


 総長は完全降伏で素直に証文を書いてくれたよ。


 アルトが言っていた通り、余程のバカじゃなければ『アッチ会』の二の舞になる者はいなかったみたい。

 『ソッチ会』の方はあっという間にケリがついちゃった。


 もちろん、監禁されていたお姉ちゃん達も全員解放された。

 残るは『コッチ会』だけだね。

お読み頂き有り難うございます。

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