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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第五章 王都でもこいつらは・・・
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第110話 四天王って、そうやって決めてんだ…

「げっ!

 イーカツとダイカツがやられちまった!

 おい、コンカツ!

 おまえ、四天王筆頭と呼ばれてるんだから、あのガキ共を締めてこい!」


「総長、無茶言わんでください。

 わっしは武闘派じゃねえんですから。

 若い連中が、四天王って呼んでるのは…。

 ギルドへ納めたシノギの多い順番ですぜ。

 わっしは、風呂屋とか、高利貸しとかがシノギなんですから。

 ゴリゴリ武闘派のイーカツ、ダイカツがやられた連中に勝てっこないですわ。」


 部屋の中を見回すと、一番奥にデーンっと立派な机が置かれてた。

 その向こうに座っている総長と呼ばれるオッチャンと四天王筆頭のコンカツ。

 剣を構えた若いゴロツキが、二人を守るように、その周りを囲んでたよ。


 でも聞こえてきた二人のの会話って、ツッコミどころ満載だよ。

 アッチ会四天王って別に腕が立つ訳じゃないんだ。

 どうりでね、『弱者蹂躙』とか、恫喝だけならとか、変な評価だと思ってたんだ。

 いかにして弱い者からお金を巻き上げるかが、冒険者ギルドの中では大事なんだね。

 こんなんだったら、冒険者ギルドなんて要らないね。

 

「つべこべ言っとらんで、サッサと始末しないか。

 おまえだって、アッチ会の若頭を名乗っているんだ。

 少しは気概を見せたらどうなんだ。」


「ダメですって。

 わっし、風呂屋の泡姫のスカウトから始まって。

 やっとこさ若頭まで昇り詰めたところなんすよ。

 イケメンのいる飲み屋を作って、世間知らずの若い娘を蟻地獄に誘って。

 金をつぎ込み過ぎて困っているところに高利貸しを紹介して。

 借金が返せなくなったところで、風呂屋の泡姫に沈める。

 そんな鉄板の集金ラインをようやく築き上げて。

 やっと、アッチ会随一の稼ぎ頭までのし上がったんですよ。

 ようやく嫁さん探しが出来ると思って、若い娘を物色しているところなのに。

 こんな、バケモノみたい連中相手にしたら壊されちゃうじゃないですか。

 わっしは嫁さん探しに忙しいんで、こんなの相手してられませんぜ。

 総長の方こそ、男気を見せてくださいよ。

 若い頃は、ブイブイ言わせた武闘派だったんでしょう。」


 このコンカツって男、ロクなことしてないよ。

 しかも、髪の毛のが薄くて見た目四十過ぎなんだけど、今頃嫁探しって遅すぎるよ。

 若い娘を物色しているなんて贅沢言ってるし、このハゲ。


「バカなこと言うな。

 儂が今幾つだと思っているんだ。

 こんなにブクブクと太っちまったら剣もロクに振れねえぜ。」


 威張って言える事じゃないよ、それ。それでよく強面の奴らが従ってるもんだ。


 こいつら、マジ、お笑い芸人じゃないの。

 おいら達がカチコンで来たのに、悠長にそんな掛け合いをしてるんだもん。

 周囲にいる護衛役のゴロツキ共も呆れた目で二人を見てるよ。


    ********


「あんたら、私を無視していい度胸ね。

 私は、総長、あんたに落とし前をつけてもらいに来たのよ。」


 アルトが業を煮やしてそう言うと。


「ひぃぃぃ、儂が何をやったというんだ。

 『アッチ会』の幹部をこんなにしてしまいおって。

 これじゃ『コッチ会』や『ソッチ会』につけ込まれてしまうではないか。」


 総長は、いきなり泣き言を言い出したよ。


「今朝ね、こいつが私の身内に風呂屋で働けと脅しに来たのよ。

 やっぱり、身内に手を出されて黙ってたら舐められちゃうでしょう。

 キッチリ、てっぺんのタマをとって落とし前つけてもらおうかと思ってね。」


 アルトは総長に向かって凄みを見せると、目の前にウツケー達を放り出したんだ。


「おい、ウツケー、いったいこれはどういうこった。」


「コンカツの旦那、すまねえ、下手打っちまった。

 シフォンを風呂屋に沈めに行ったんだが。

 こいつらがしゃしゃり出て来やがって。」


 風呂屋の総元締めらしいコンカツは、ウツケーの言葉にこちらを見て。

 やっと、シフォン姉ちゃんの存在に気付いたらしい。


「そ、そいつはシフォンか…。

 わっしの調べじゃ、こんな物騒な奴らが付いてるなんて情報は無かったぞ。

 田舎から出て来て、フラフラと一人暮らしをしてる尻軽女だと聞いてたのに…。

 わっしが悪かった、その女がそっちの身内だなんて知らなかったんだ。

 その女に手を出した報復だって言うのなら。

 もうその女からは、手を引く。

 もう金輪際、その女には手出ししないから勘弁してくれ。」


 勝ち目が無いと分かって、そんな泣き言をいうコンカツだけど。


「バカね、赦す訳ないじゃない。

 この娘は単なる口実だもの。

 私、このギルドを潰しちゃおうかと思って、カチコミを掛ける口実を探していたのよ。

 そしたら、たまたま、私の身内のこの娘を手に掛けてくれたからね。

 これ幸いとやって来たの。」


 そう言って、アルトはキョーカツとドーカツも『積載庫』から放り出したよ。

 このギルドの戦力は削いだと言わんばかりに。


「お、おい。

 この『アッチ会』を最初から潰すつもりだったってのはどういうことだ。

 おめえら、まさか『コッチ会』か、『ソッチ会』の回し者か。」


 アルトの言葉を聞いて総長が尋ねてきたよ。


「違うわ、元はと言えば、私達にチャチャを入れてきたのは『スイーツ団』。

 自由市場(フリーマーケット)で『砂糖』とかを売ってたら、妨害してきたのよ。

 返り討ちにして『スイーツ団』の本部に文句を付けに行ったんだけどね。

 理事長のゴーヨクって奴が、冒険者上がりの使用人の独走だって言ってね。

 自分は知らなかったって、しゃあしゃあと言い張るのよね。

 でもね、ここに転がっているウツケーが、白状したのよ。

 『スイーツ団』ってのは、冒険者ギルド三つが結託して甘味料の値を吊り上げるための隠れ蓑だってね。

 聞けば、理事長のゴーヨクってのは、今でもこのギルドの構成員だって言うじゃない。

 『スイーツ団』って私達だけじゃなくて、王都のみんなにえらい迷惑を掛けてるみたいだから。

 『スイーツ団』を潰そうと思っているのだけど。 

 この際、元から潰しちゃおうかと思ってね。」


 今のままだと、おいら達と『スイーツ団』の根競べになっちゃう。

 『スイーツ団』は冒険者ギルドの単なる隠れ蓑だから、おいら達が王都に居座る間は他のシノギで稼いでればいいからね。

 亀のように手足を引っ込めて、おいら達が根負けして王都を出て行くのを待ってるんだ。

 おいら達が根負けして辺境へ帰っちゃうと、また甘味料の値を吊り上げに走るだろうって容易に想像つくよ。


 だから、アルトは大本の冒険者ギルドをプチってやっちゃうことにしたの。

 そうすれば、構成員が共通の『スイーツ団』も消滅するだろうって言ってた。


 アルトったら、楽しそうに、「くさい臭いは元から断たなきゃダメ」とか言ってたよ。

お読み頂き有り難うございます。

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