第八話 コミュ障の俺、勇者ってチートなんだな、と思う(ただし、俺は除く)
早朝。
体育館と比べるにはおこがましいレベルの広さを誇る訓練場に招集された我々。
訓練のために受け取った鎧と訓練用の武器を手にして、整列。
朝日が俺たちを照らし、木々が揺れ、小鳥たちは囀る。
実に気持ちのいい朝だ。
…足からくるジンジンとした痛みを除けば。
そう、さっきからずっとこの体勢で待たされている。
立ち続けるのは何気にきつい。小学校の時一回やらかしてバケツ持った時くらいだ。
因みに、30分間このまま待たされてます。これでいいの??俺たち、戦闘訓練の前に死ぬよ?主に足が。
死んだらどうしてくれるんだと思っていたら、誰かきた。
「あ〜ごめんね、寝坊した」
「いや、しちゃいけないだろ、寝坊」
氷空が速攻で突っ込んだ。キレいいな。だがしかし75点。
見ていると、若干武装したイヴァが欠伸をしながらこちらに向かってきていた。ライザンさんは叱るどころか惚れ惚れとしていらっしゃる。誰かストッパーをくれ。
そのままのびのびと体を伸ばし、ストレッチをしながら俺たちに話しかけてくる。
「おはよ〜。よく寝れた?まあ、今日から戦闘訓練なんだけど…僕直々に教えるよ、そこら辺の騎士団長よか強いしね」
尚もストレッチを続ける国王様。
その顔のせいか、強そうに見えない………………‼︎?
あ、あれ、ライザンさん?覇気が、覇気が溢れ出てますよ……?
お、俺何も失礼なこと考えてませんからね。これっぽっちもイヴァが強そうに見えないとか思っていませんとも。
だって、俺より絶対強いもん!バイトも力仕事じゃなかった俺を舐めるな!!
うん、虚しい。
と言うか、さらっとパワーワードを言わないでほしい。
え?騎士団長より強いイヴァに勝てと?無理でしょ。
因みに全員持っているのは一様に長剣で、スキルやらステータスやらを鑑みて防具の形とか、武器の種類とか決めることになってる。
因みにこの訓練場、教会のご加護があるそうで、絶対死なないらしい。
あ、うん…いい世界ですね…。
神の御加護、すごいなぁ(棒)。
「まあ、ぶっつけ本番でやろうか」
ん?
「え?」
「は?」
アホなこと考えてたら、爆弾発言をかまされた件について。
……。
はぁあぁああぁぁああぁああーーーー!!??
いや、頭おかしい!イヴァ、頭おかしい!!
俺たちが超混乱しているのを見て、「うわ〜リアクションいいね〜」と手を叩いている。
殴りたい!!
「だって〜俺、教えるの上手くないしぃ〜。習うより慣れろって、どこかの勇者様も言ってたからな〜」
誰だ日本のことわざ伝えたやつ!!
ふふふ、生命的危機。
きっとイヴァの戦闘力は53万なんだ、そうなんだろう?そうだと言ってくれ。
「じゃ〜、遠慮なくいくよ〜、三人でかかってきな〜」
にっこりと微笑む彼。
背筋が凍る思いの俺たち。
刹那、某カーレース顔負けの風切り音と共に、俺の目の前にイヴァの顔が迫る。
少しは手加減して隙を見せるようにしているのか、剣を振り下ろす動きを見せた。
速度だけは一人前の俺は、咄嗟に一歩後ろに下がって切っ先から体を逸らす。
「ふっ!」
その間に後ろに回り込んでいた氷空がイヴァに向かって剣を振るう。
メリーは出方を伺っているようで、少し後ろの方に陣取っている。
氷空の一撃がイヴァにあたろうかという寸前、イヴァがスルッとその剣を避ける。
まるで水の上を落葉が滑るような、そんな錯覚を覚えさせる。
ジャンプそのままに振り下ろしの攻撃をしていた氷空はそのままバランスを崩してしまう。
そこにイヴァが剣を振るうが、そこに見えない壁があるかのように、剣が止まる。
いや、実際に見える壁がある。
「ふーん、やっぱ勇者は面白いな」
いつもの間延びした口調ではなく、真剣そのものでつい口からこぼれたというような感じで言葉を紡ぐと、一歩下がる。
「ッ!」
と、同時に地面が爆発。
ちょっと移動しただけでほぼ動いていない俺は、特に驚きもせず、冷静にその場の状態を分析する。
はあ、あのスキルチートじゃなかろうか。
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創造[1]
1立方メートルあたり50のMPを消費して物を作り出す。一度に生み出せる数は1。
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まあ、やったことは単純で、まず最初に見えない壁を作って攻撃を防ぎ、イヴァがバックステップの挙動をし始めた時に地雷を地中に作った。
地中に作ったのに関しては、まあ、メリーがたまたま開けていた落とし穴がわりの穴にすっぽり生成できちゃったからなんだろうが。
メリーが穴あけに使用したスキルは、氷空と対になるこのスキル。
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破壊[1]
1立方メートルあたり50のMPを消費して物体を破壊する。一度に破壊できる数は1。
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うん、俺の周り根こそぎチート。