第二話 コミュ障の俺、称号にもてあそばれる
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称号:コミュ障[1]
信頼度2以下の半径5m以内の相手との会話が不可能。
沈黙[10]獲得。
視覚強化[5]獲得。
手話[5]獲得。
筆記[5]獲得。
描画[5]獲得。
新聞[4]獲得。
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称号:隠れたがりや[1]
暗殺者系統のスキルが獲得・レベルアップしやすくなる。
隠密[8]獲得。
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うわー微妙。
口に出したいところではあるが、出ないのはもうすでにお約束と化している。
というか、こういう個人情報は隠蔽しなくていいのか。
個人情報は守られないですね、諦めましょう。
…で、まともなスキルが光魔法だけというのはどういうことなのか。
他は何ぞや。まあ、確認する気力も起きないが。
そういえば、信頼度ってどうやって見るの?
信頼度見えねーかなーとか思ってチラッと氷空を見たら信頼レベル1とか出てきた。
意識したら見えるらしい。ついでにじっくり見てたら下に経験値バーみたいなのが出てきた。
もうちょいで2に上がりそうではある。
メリーも後で見ようと思うが、流石に異性をじろじろ見る度胸はないので歩いているときにでも後姿を見て確認しよう。
ちなみに、独り言言いたくても言えなかったあたり、信頼度2以下の人が半径5m以内にいたらもうダメらしい。
あれ、目から汗が・・・。
まあでも、一つ勘違いしてたのは喋れないの称号のせいってこと。
スキル関係ねぇ。
ついでに、称号の横にある数字はレベルか?
スキルにも同じような数字がついているし。
上がる条件なんてわからないからな。もうあきらめモードだよ、俺。
他二人は結構いいものを引き当てたらしく、ちょっと興奮気味な顔が見える。
引き当てた、というか、絶対召喚される前の人となりから称号引っ付いてきてる。
うん、コミュ障じゃなくてよかったね…。
変な想像をしていたら、横から神官っぽい服を着た人がひょこっと顔を出した。
「ッ!!」
思わずびっくりして声を上げそうになったが、もちろん声が出ない。
そして、知っているくせに声が出ないことにテンパってどもり始める。
どもる前に声出ないからただテンパってるだけだけど。
「あ、すみません。お声がけするべきでしたね」
彼がそう言ってくれたおかげで少し胸のつっかえが取れて落ち着きを取り戻し始めるが、今の俺はひどい顔をしているに違いない。
だって、成人男性が人怖がるってどうなのよ。
大学でちゃんと友達作っとくべきだったなと今更ながら思う。
とりあえず、何か返事しようと思っていたら、手が勝手に動いた。
…うん、意味わからんけど動いた。
一通り動きが終わると、彼は「ご丁寧にありがとうございます」と言って水晶を持って出ていった。
…何がご丁寧にありがとうございますなのかはわからん。
…わけでもない。
多分「こちらこそすみません、自分が驚きすぎただけですので」くらいの感じだったんだろうな、というのはなんとなーくわかる。
なぜわかるのかは知らんが、多分今やったのは手話。
日本でちょいちょい手話表を目にすることはあったけど、日本で知っている手話とは違ったから、多分この世界の手話…。
ここで気になること一つ。
何でこの世界の手話が勝手に出て来る。
今分かっている理由は一つ。
スキルの手話だろう。
何でスキルであんのって思ったけど、よくよく考えたらその他も喋れないけどコミュニケーション取れるように、っていう救済措置なのね。
そこまで考えて会人は思った。
…そこまでするなら喋れないのなくしてもらっても…。
そんな都合のいいことは起こらないということは会人にはよくわかっているが、人間皆現実逃避はしたいものである。
そしてまた現実逃避を繰り返していると、ようやく他二人の興奮も冷めてきたようで、同じように水晶をもって神官が出ていった。
そして、俺達もライザンさんに続いて出ていく。
進むにつれ、警備と装飾の数が増えていくのを見て、ようやく王様にでも謁見するんだろうな、とぼんやり考える。
「おい!会人!」
ぼんやりとした思考を現実に引き戻されると、氷空が10mほど先で俺を呼んでいる。
これは俺の悪い癖で、ぼーっとしていると歩幅が極端に狭くなる。
考える時間を確保するための無意識行動だと思うのだが、現実ではあんまり役に立たない悪い癖である。
「あぁ、悪い・・・」
咄嗟に返事をした。
返事ができた。
できてしまった。
「え」
「あ」
氷空と俺が同時に短く言葉を発する。
今、俺の半径5m以内に人はいない。
つまり、称号の効果は絶賛発動しません状態だ。
「え、っと、その・・・」
なんか嫌な空気だ。
えーっと、やばくね?
「お前、喋れんの?」
「えぇーっと…」
とりあえず彼のそばに寄っていけば、また声が出ない違和感が感じ取れるようになった。
で、ここからどうしたものか。
氷空は問い詰めようとするのと止めるのを繰り返し、メリーは心配そうにこちらを見ている。
なんとなく微妙になった俺たちの空気を打ち破ったのはライザンさんだった。
彼は何やら考える人のようなポーズをし、思い出したように俺に向かって話しかけてくる。
「カイト様は称号の効果によって話すことができないのではないですか?」
うわー、なぜバレた。