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第一話 コミュ障の俺、称号は『コミュ障』だった…

ハァ、と俺はため息をつきたくなった。

もっとも、声が出ないので軽い空気の流れが起きただけだったが。

なんとなしに残りの二人とは仲良くなりつつあり、今も筆談を交えたスローペースの会話が細々と繰り広げられている。


これが前の俺だったら・・・。


「渡辺くん、ここわかる?」


「え、あ、えと、わか」


「あ、ごめんね、他の人に聞くね」


「・・・」


速攻で向こうに離れられたな。うん。

あの時は俺も焦りすぎたし、今は焦りが一周回って冷静になっているから、こう・・・コミュ障らしからぬ会話ができているんだろう。

俺、頭の中は騒がしいコミュ障なんだろうな。

コミュ障ってみんなそんなもんだと思うけど、もしかしたら違うかもしれないし。

周りに仲間いないからわからん。


それに比べて、二人は辛抱強いイメージがある。

なんでこんなノロノロとした会話を続けられるくらい辛抱強いのかは、遠回しに聞いてみたところ、「そういう人もいるだろう」というなんともシンプルな答え。シンプルが故になんとなく安心する。


「どうしてそんなこと気にするんですか?」


メリーが尋ねる。

どうして、と言われても・・・。

答えは一つだ。


[気を遣わせるのはなんだか申し訳なくて]


そう、これである。

申し訳ない、以上。

地味にコミュ障になったのも人と話す、ということは大概気を遣わせることだ、と思ったからだ。


そう答えると、メリーはプクゥと膨れっ面をし、氷空は苦笑いする。


「もうっ!誰ですかそんな風に人の相手をしたのは!!」


「メリー、代表的なのは俺だ」


メリーはあちゃーと言う顔をした。

氷空は苦笑いして、陰キャと絡もうと思っても怖がられるからな・・・と言う。

確かに、彼の顔はどちらかというと強面だ。

でも、何処と無く爽やかイケメン感も出てるのはすごい。

きっと生まれがいいんだろうな。顔の遺伝子的に。

それはめちゃくちゃ自分にとってブーメランだと言うことを、会人は思っても見ない。


そして、流石に続いていた会話の話題がなくなった頃、ライザンが口を開いた。


「では、詳細な説明をいたしましょうか」


どうやら会話のネタが尽きるまで待っていたらしい。有能である。


「まず、この世界では人族、獣人族含めた『人類』、鬼や魔族を含む『魔類』、エルフやドワーフなどの『妖類』がいます。妖類は中立派で、人類と魔類が幾千年、幾万年と争いを続けています」


ふむ、妖類の妖は妖怪ではなく妖精だろう。

妖怪だったら鬼がしっかり入ってるだろうし。


「争いの理由は『魔力』です。魔力は人類には薬ですが、魔族には毒。逆に魔力を加工した『瘴気』の場合、人類には毒ですが、魔族には薬になります。つまり、お互い魔力と瘴気を生産し合い、それが年を重ねるごとに激化、今に至ります」


ゆったりと階段をのぼり、廊下を歩く音が響く中、俺は考える。

魔王は世界を滅ぼそうとしているそうだが、体質の違いだけでそんなに喧嘩するものだろうか。

例えば、世界を半分くらいに割って、瘴気地帯と魔力地帯に分ける、とか。


それを聞こうかと思ったけど、喋れないから聞けない。

だから、この件は保留にすることにする。

・・・聞く前に、次に説明されることで謎が解けるかもしれないけど。


「妖類はどちらでも生きられますが、他の種族は最悪死に至りますし、世界各地に国や街などの拠点がありますから、単純に魔力地域と瘴気地域に分けるのも難しいです」


有 能 。

俺が疑問に思ったこと全部言ってくれた。

さては心読んでる?読んでるな?

それについては心を読んでいないと言うか、元から読めるわけもないので特に答えもなく、続きが話される。


「勇者様方がいらっしゃった世界では、魔力も瘴気もない、と神からの啓示が数千年前にあり、そこから魔王が代替わりするたびに勇者様を召喚する運びになっているのです」


あ、なるほどね。

魔力も瘴気もない世界から来たらそれはそうか。

どっちも毒にも薬にもならない。


そうこうしていると、とある部屋に通される。

そこは、三つほど水晶が置かれた部屋で、いかにも魔法を使いますと言った感じの薄暗い綺麗な部屋だった。

正直言って、この部屋は水晶に比べて大きすぎる気もするが、そこはこの世界の様式だとか、道具の扱い方だとかに関わってくるので触れないでおこう。

触れる触れないの前に、俺、喋れないけど。


「国王陛下に謁見する際に、ステータスの提示が絶対条件となりますゆえ、こちらの水晶に手をかざしていただければ」


なんとなく予想してたー。

水晶、異世界、勇者、魔王。

ステータス、あるよね。

作品によってはHPがなかったり、スタミナまで数値化されてたりするけど、ここはどうなのだろうか。

・・・俺、体力とか自信ないけどさ。

気になるものは気になる。


ちょっと不安を覚えながら手をかざすと、一瞬強く発光して、すぐに収まった。

他の二人も同様だが、光った時の色が地味に違うのは何で?

俺が白、氷空が黒、メリーが水色。

・・・ほんとに何で?


兎にも角にも、水晶から青っぽいゲームのパネルみたいなものが出ている。


_____________________________________


名前:カイト・ワタナベ


種族:人族(勇者)

Lv.1


MP:10000/10000

攻撃力:20

防御力:30

知力:90

器用:120

素早さ:100


スキル:沈黙[10] 隠密[8] 視覚強化[5] 手話[5] 筆記[5] 描画[5] 新聞[4] 光魔法[1]


称号:コミュ障[1] 隠れたがり[1]

_____________________________________


・・・偏りすぎじゃね?

ついでに・・・。


『コミュ障』って、ふざけてやがる。

沈黙なんてスキルもあるし、喋れないのこれのせいだろ、絶対。


会人は、差のありすぎるステータスと、己の性格に心の中で舌打ちをしたのだった。


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