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《消えた御守り》  作者: びたみんC
4/6

消えた御守(4)

 家に帰ってお爺ちゃんと今日知った話をして盛り上がったんだけど、こんなに話をした事はなかったかもしれない。


 気分も良くお風呂に入って疲れを取ってからベッドに向かうと、総司から無料通話の電話が何件もかかってきていた。


 普段夜はグループチャットなどでやり取りするので、少し驚き折り返す。

 するとコール音が鳴るか鳴らないかという速さで総司は着信をキャッチした。


「はやっ」

「水希無事か!?」


 開口一番、訳分からない言葉を口にした。

 無事とはなんぞ?私は君たちと別れるまで一緒にいたのだよ。


「今日使った共有写真。あれの一枚がおかしい」

「はぁ?焼けてた?てかデジタルよ…無い無い」


 総司が言うには、三人で撮った写真に人影のような物がホームに写っていると言う。


 山中色々なものがあるから影にでもなったのだろう。とにかく確認して欲しいと言って電話を切ってしまった。


「慌てん坊のサンタクロースめ」


 独り言を呟き写真を一枚一枚確認していくが、緑豊かな山中の写真が多く特に変なところは見当たらない。


 だがそこで橋上の三毛猫とのやり取りを思い出し、背筋に寒いものが走った。



 藪の中…九十九折…マーキングリボン…廃駅……


 だがホームには特に何もなかった。

 そう、何もいないじゃないか。


「総司のやつ、私をビビらせる作戦か!あいつめぇ」


 信号機を見つけた嬉しさで三人が手を繋ぎ映った写真。そして廃駅の全景。


 …まさか最後に3人で廃駅をバックに撮った写真がそうなのか?

 恐る恐る震える指でスライドさせていく…


 そして、例の写真。

 だがやはり何も写っていない。


「そうじぃー!」


 ベッドの横になり携帯を放り投げた。


 騙された!


 完全に総司にしてやられた事に面白さ半分、悔しさ半分と言った感じであった。


 そうだ。

 電話だったからサチは知らない。


 ははーん、私はサチに同じカマを掛けてやろうと画策し、携帯を引き寄せた。


 すると携帯の画面は、信号機を見つけて喜ぶ写真までスライドされていた。

 私は直ぐにサチに電話をかけようとした所で目を見開いた。


 …ーッ!!何よこれ!


 なんで()()()()()3()()()()()()()()()


「じゃぁこれ、()()()()()()()!!!」



 私は携帯を投げ捨てようとして、ホームに黒いモヤがある事に気がついた。

 これは影ではない、間違いなくおかしい。


 焦り消そうとするも消えない!

 何で!?共有だから?!


 削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除…


 だめ!!


 すると窓の外にギョロリと目玉のようなものが動いた。


「キャァァァアアアァァァ!!!」


 ダッシュで祖父の部屋にダッシュで行くと、捲し立てるように助けを求めた。


「お爺ちゃん!」

「御守、どうした?」


 祖父に言われて気が付いた。

 あれは学校のカバンに付けており、無くしてはいない。

 祖父はそれが必要だと言い、仏様に念仏を唱えて待ってるように言われた。


「えっ、私の部屋に入るの?」

「ダメか?」


 ダメじゃないが、今はそう言う時でもない。

 でも…ダメなの、てへっ。


 念仏を知らないと言う理由で、祖父が念仏を唱える代わりに私が部屋に戻り御守りを取りに戻った。


 あの時に見えた目玉は錯覚だったのだろうか?

 私には理解できない事が起こりまくっている。


 スッと御守りをカバンから外して、もう一度窓を一瞥するも月明かりが照らす田舎に、バイパスの街頭が煌びやかだ。

 因みに高速道路には街灯がない区間である。


 仏間に戻ると祖父が念仏をやめ、こちらに振り向いた。わたしは御守りを渡すと祖父は中身を確認するかのように指先で押していた。


 やがて頷き、私に御守りを渡してこう言った。


「以降絶対に離してはならないよ。

 私の父、つまり水希のご先祖様が子供の時に経験した、神隠しから身を護るって言われていてね…」


 その日の晩は久しぶりに仏間でお爺ちゃんと一緒に寝た。両親とも小学生までで、誰かと寝た事自体懐かしさと暖かさを覚えた。



 次の日。

 カーテンがなく朝日が差し込み、自然と起き上がるもまだ朝の4時だった。


「こんなに早く起きたの、カブトムシ捕り以来ね…」


 祖父は畑に行ったのだろうか。もう布団も片付けてあった。

 髪はボサボサで、普段は後ろで縛っている物が前に来るから鬱陶しい。だけどショートにすると本当に男と間違えられるから髪はこのままだ。


 夏の朝は涼しく、散歩に適している。

 昨日の夜の事が嘘のように晴れ渡っており、気持ちの面ではやや落ち着いたように感じた。


 だが現実は変わらない。

 あの写真はそのままなのだ。


 するとこれまた大量の着信履歴が来ており、その量に驚き目を見開く。


「68件!?何よこれ!」


 全てサチからだった。

 携帯を放り投げて逃げ出した後から連続してきている。

 そして途中からキッチリ5分おきに変わっている。


「最後は3時…かけてみるしか無いか」


 コール音がしても一向に出る気配がない。寝ているのだろうか?

 なんか私が悪いみたいね…


「もしもし?」

「サチ?何かあったの?」

「水希、逃げ…て……はげ……く…」

「サチ!!ハゲって何!?」


 ノイズに遮られてよく聞こえない。

 逃げてと言う単語は聞こえたが、ソレ以外が全く分からない。


「サチ!サチ!!」

「ザザッー……ブッ!……あっ、水希」

「どうしたのよ本当に…」


「今どこ?あなただけ分からないの」


 はっ?

 なぜ何処にいるか聞くの?

 朝の4時は家に居るに決まっているじゃない!


「…あなた誰?」

「にえ……」


 ブツッ!


 切られた。

 途中から明らかにいつものサチとは違ったわ。


 そのまま総司に電話をかける。寝ているかもしれないが構う事はない。

 だって総司だもん。


「…ぁ〜もしもし?常識って何処でふか?」


 良かった、いつもの総司だ。

 安堵が胸を支配して、いつもの砕けた調子で答える事にした。


「あんたが言うの?歩く非常識め」

「サチの事だろ?話がしたいけど、今お前何処にいる?」

「家に決まってるじゃない、あんたアホなの?」


 すると突然声色が変わったように高い声になり、返事が返ってきた。


「…山神は…にえを隠し……」


 ひっ!

 何!何なの!?


 サチの時と一緒じゃないの…バカバカ!私のばかぁ…


 今は逃げるしかない。

 家に居ると言ってしまった以上、得体の知れない何かがこちらに来るのだろう。


 山神は贄を隠す?

 それって神隠しのこと?!


 それじゃもう2人は…とにかく見つかったらアウト!



 (何よこれ!)


 勝利条件不詳、見つかると人生終了。

 ヒントは廃駅の写真。


 詰まるところ、これは…


「時間無制限の『かくれんぼ』なんて、無理ゲーー!!」



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