婚約破棄?私はかまいませんが。どうぞご自由に。
初投稿です。
どうぞ最後まで読んで頂けると幸いです。
「エリーティア・フィールリード!お前との婚約を破棄するッ!」
そう声高々に学園のダンスパーティーで宣言した婚約者を前にして私はさらりと言い返した。
「婚約破棄?私はかまいませんが、本当に良いんですね?」
私の名前はエリーティア・フィールリード。
ここアナレイト王国のはるか昔からこの国を支えてきた名家、フィールリード公爵家の長女で、私に婚約破棄を言い放った金髪の美青年ともいえなくもないこの男はリカルド・デリエンス。私の婚約者である。
私が言い返すとリカルドは
「ふん、良いに決まっているだろう? お前のような悪女と婚約していたなど……最悪だ、反吐が出る。だが、ずっと騙されていたとでも思ったか?」
そうあざけるように笑った。
「はあ……悪女、ですか。私そう言われるようなことは一切しておりませんが、何か間違えているのでは?」
ウンザリしながら言い返すと私の態度が気に入らなかったのか、逆上し顔を赤くして怒鳴った。
「どの口が言うかッ! この悪女め! ……まあいい、その余裕も今終わるさ。おいで、リリー」
そう私への口調とは一転、優しげに後ろに隠れていた少女を呼んだ。
「はい……リカルド様」
そう少し怯えた様子で出できた少女は確か、
リリアーナ・ハーデリク、ハーデリク男爵家の令嬢……だったっけ。
ふわっとした茶色の髪と小柄な体でとても庇護欲をそそる可愛い少女だ。
今はそのぱっちりとした目を潤ませながらリカルドに大切そうに抱きしめられている。
パーティーの注目が集まる中、
「そう、この悪女はここにいるリリアーナを俺と仲良くするのが気に入らないからと日頃から陰湿な嫌がらせを行なっていたのだ! そうだろう、リリー?」
そうリカルドは得意げに言い放った。
「はい、私はエリーティア様にずっと嫌がらせを受けていました!」
と、怯えながらも覚悟を決めたような顔でリリアーナ嬢は言った。
はぁ? 全く身に覚えがないんですが。
そもそもなんでリカルドみたいな俺様(笑)男に嫉妬するのよ。するわけがないでしょう、こんな男。こっちは家の事情で仕方なく婚約したんですけども?
というかそんな覚悟決めたような顔してもリカルドに抱きついたままだから雰囲気が台無しなんですが。
それに周りを見てみなさいな、せっかく楽しいパーティーを中断して見せつける様に婚約破棄を言い放って。
めっちゃ白い目で迷惑そうに見てるよ……
というかすっごい同情した目で周りの人達が私をみてくるんですが。
……見てないで助けてくれてもいいんですよ?
そんな人々の視線もつゆ知らず、彼女は
「毎日私の私物を隠したり、わざとぶつかったり、私を仲間外れにしたり……それに昨日はパーティーに出られないようにって階段から突き落とされたんです……っ! もう毎日辛くて……っ」
なんでー?
「あのですね、好き勝手言っていますけど証拠はあるんですか? 私そんなことした覚えないですし」
そう私はため息をつきながら言うとリカルドは
「証拠?そんなものここにいるリリーが証言しているではないか!」
とドヤ顔で言い放った。
「「「…………」」」
周りからの視線が白い目から汚物を見るような目に変わった。
えぇ……本気でそれでどうにかなると思ているのか……
というよりもドヤ顔で言うからどんな偽の証拠が出てくるのかと思ったけどなんにもないって、どうなの?
こんな計画で追い詰めるつもりだったのか。
あ、まず計画すら立てていないとか?
なんかこんな余興みたいなことで責められていると思ったらイライラしてきた。
お返しとして私は
「言っておきますが、私物を隠された、ぶつかられたなど証拠もないのなら自作自演でどうとでもなりますし、階段から突き落とされたと言っていますがその割には元気そうですね? 普通に歩いていましたし」
と、嘲るように笑って言ってやった。
私の反論に周りの人々から失笑が漏れる。
リカルドはその声に気がつき、焦った様な顔で辺りを見回した。
ようやく自分がどんな目で見られているのかわかったようだ。
リカルドがたじろいでいるが、
「そもそもあなたとの婚約はデリエンス公爵家が事業に失敗して大赤字を出し、財政状態が芳しくなかったから私達フィールリード家に援助を求めるためにあなた方デリエンス公爵家が申し出てきたのでしょう?
確か、私達フィールリード家の先代がデリエンス領で盗賊に襲われてデリエンス公爵家の方々に助けられた、という恩があったからしかたなくしかたなく婚約したのですけれど」
と、さらにリカルドを追い詰める。
この話は社交界でも有名であるのだが……
どうしてリリアーナ嬢は目を見開いて驚いているのか。
もしや知らなかったのだろうか? まぁ、公爵家という地位と顔に釣られて何も考えずに行動したのだろうけど。顔はそこそこいいし。
でも誘惑するならせめて相手の情報くらい集めるものでしょ。
「ぐっ……! だ、だが我々はフィールリード家の手を借りずとも立て直せるっ!」
「ならいいですが。というかこの話はデリエンス公爵様を通してのお話なのですか?」
と、問うとリカルドは
ぐっと言葉に詰まっている。
「まさか……独断なのですか?」
「も、問題ない。婚約破棄した後で父上に報告するからな!」
それ、ダメなやつでは?
常日頃からリカルドの行動は目に余るものだったが、これほどとは……
耐えていた私がばかだった。
フィールリード家のためと思っていたけれど、そもそもこの婚約にお父様も、昔の恩を盾に図々しくも婚約して援助しろなど横暴だが、仕方ないが家の面子に関わるからすまない、と申し訳なさそうに私に言ってたし、婚約破棄できるならしてやりたいとも言っていた。
だから、いいよね?
「もういいですよ、婚約破棄しましょう?
もともとあなた方が申し出てきたことですし、取り下げるのであればそれで構いません。
いいですよね?」
そう言うとリカルドは
「なっっ?!」
と驚いた。
何に驚いているのだろうか。
「お前、悲しくないのか?! この俺に振られたのだぞっ?!」
……そこ? え、自分は好かれてるとでも思っていたのだろうか?
めんどくさいからずっと愛想笑い張り付けていたせいかな? そこに俺様思考が加わってそんな勘違いを起こしたのだろう。これだから俺様(笑)は……
「全く。あなたのことを愛したことは、一度もございませんので悲しくもありませんが」
と、勘違いされたままは嫌なのでキッパリと言ってやった。
「くっ! 後から後悔しても知らないからなッ!」
いやあなたが言い出したんでしょう。
なんであなたが悔しがっているのですか。
そんな白けた目を送っていたときだった。
「へえ、なかなか興味深い話をしているじゃないか」
その青年の登場に私達のみならず、周りの人々までもがどよめいた。
その青年は凛々しく、美しかった。
銀色に輝く髪に美しい碧眼。その容姿はまるで神がひいきして特別に作り上げたのではないかとすら思えるほど、彼は美しかった。
ッ! この声は、まさか‼︎
彼を知らない人間はここにはいない。
彼は、この国の王太子である、
アルベルト・フォン・アナレイトなのだから。
“フォン”は王族にしか名乗ることを許されていない、真に王家であることを示す証である。
「で、殿下! どうしてこちらに?」
と私が慌てて臣下の礼を取りながら言うと、
「ふふ、僕もこの学園の生徒なんだけどなぁ、忘れるなんて酷いじゃないか」
と可笑しそうに笑う。
そうだった……静観していらっしゃるようだったからうっかり忘れてた……
「いいよ、気にしてないからさ。それより、婚約破棄したんだって?」
と突然の登場に固まっているリカルド達をちらりとみやり、言った。
「え、ええ。そうですが……」
もしかして、パーティーの邪魔をしたことを怒っていらっしゃるのかな……
そう少し怯えながら彼を見ると、なんだか嬉しそうな顔をしている。
なぜ嬉しそうなのか分からず、困惑していると、
「なら、彼女は僕が貰う。
エリーティア、僕と婚約しよう」
と満面の笑みで言った。
……え?
たっぷり数秒間固まってしまった。
「冗談、ですよね?」
「本当だよ? 君のことはずっと好きだったんだ。でも婚約者がいるからこの恋は諦めるつもりだった。でも、婚約を破棄してくれた。なら僕はもう遠慮はしないよ」
と、蕩けそうな笑みで言う。
どうしてだろう、ほとんど会ったことなんて無いのに。
どうしようもないほど、顔が熱い。
私は何も言えずにいた。なにか言おうとしても喉につっかえて言葉にならない。
だが、そこに異を唱える者がいた。
「ま、まってください! その人は私をいじめていた張本人なんですよ?! 殿下、どうぞ考えを直して下さいませ!」
と、さっきまで固まっていたリリアーナ嬢が言った。
「そうです! その女はリリーをいじめたどうしようもない悪女なのですっ!」
さらにリカルドも慌てて追尾する。
だが彼は冷たい目で、
「そろそろ君達の言っていることが無茶苦茶だと気づいたら?そもそもそんな証拠もないのに騙せるなんて思っていたの?まぁ君達のおかげでエリーティアは婚約破棄出来たんだ、今なら騙したこと許してあげる。だからもう二度とエリーティアには近づかないでね?」
「「ッ!」」
たじろぐ二人を冷たい目で見やったあと、彼はこちらを向いた。
「ごめんね、邪魔が入ってしまった。それで、返事を聞いてもいいかい?」
そう私に、少し不安そうに言った。
「ですが、私、まだアルベルト様のことを知りません……」
「大丈夫、今僕のことを知らないなら、これから知っていけばいい。好きでないのなら、これから君を惚れさせてみせるよ。だから、どうか婚約を受け入れて欲しい」
やっとのことで言葉にした私に微笑みながら、彼は言った。
「……はい! 私は、あ、アルベルト様と、婚約したいです!」
私は、顔を赤くしながらも笑みを浮かべて言った。
そう答えた私に彼、いえ、アルベルト様は嬉しくて堪らないといった顔で笑った。
二人で笑い合った後、
「じゃあ、父上に報告しに行こうか!」
と至極当然のように言った。
「え?! 今からですか?!」
「ああ、大丈夫だよ、エリーティアが婚約破棄したら次は僕が婚約してもいいって父上もおっしゃったからね。一刻も早く公表したいんだ。さあ、行こう? 僕のお姫様?」
「ええ?!」
そう歯の浮くような台詞を平然と言い、私の手を取り、呆然とした人々の間をすり抜けてパーティーを後にした。
そこには、衝撃を受けて固まったままのリカルド達と呆然とした人々が残った。
後日、無事国王陛下に認めてもらった二人は婚約を発表した。
それから学園を卒業し、結婚。
新しい国王は側室すら迎えず、ただ一人の妃への寵愛ぶりは他国でも有名な話になっていたのはまた別のお話。
ちなみに妃の元婚約者は意中の女性と破局し、結局没落したとか。
初めての投稿なので改善点、誤字などの感想を頂けると幸いです。
高評価、宜しくお願いします!