とりあえず街を散策します
無事城を脱出したが、どこに何があるかが全く分からないため俺はエルトピア王国を歩き回ることにした。とりあえずは真っすぐ進んでみて端まで行ったら右に曲がって進む感じで行こう。
(それにしてもあっさりと城を脱出できたのはなんでだろう?)
一国の王が住むところなら警備も厳重なはずなんだけど特に何もなかったことに少し疑問も覚えながらも進むことにした。
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歩き続けてしばらくしたところで疲れてきたので道の端の方で休憩することにした。おなかもすいてきたのでカバンの中のお菓子を少し食べる。
(この世界のお金を持っていないから仕方ないとはいえやっぱり足りないな。早いうちに金銭を確保できるようにしなきゃなぁ。見た感じはファンタジーな世界だから俺みたいな出どころの不明な奴は冒険者ギルドに行くしかないかなぁ。とはいえ戦闘は現実的に考えて無理だから採取系でちまちま稼ぐことになるだろうけど)
とりあえず休憩は済んだので散策を続けることしよう、と考えた俺はすぐ近くにあった道に進んで行った。道を進んで行くとどんどん人が少なくなって辺りも薄暗くなってきた。
(なんか嫌な雰囲気になってきたなぁ、早く通り抜けるか戻るかしなきゃ)
嫌な予感を感じているとどこからか怒鳴り声が聞こえてきた。
「なめてんのかてめぇ!調子こいてんじゃねぇぞ!」
(やっぱりかぁ)
案の定面倒ごとがやってきた。見た感じ明らかに悪そうな男がフードを被った背の小さい人にいちゃもんをつけていた。巻き込まれたくないので早く離れようとしたが周りからも男の仲間と思わしき奴らが集まってきたので逃げるのはやめて捨てられている木箱に全力で隠れ、バレない様に木箱に空いている小さな穴からのぞくことにした。
「そんなに怒るでない、さっきも言ったがワシはただ通りがかっただけじゃといっておろう」
「うるせぇ!何の理由もなくこんな所に来るやつがいるわけねぇだろ!おい、お前ら!口封じだ、殺せぇ!」
『ヒャッハー!』
男の号令に合わせて周囲に潜んでいた奴らが襲いかかっていく。
「やれやれ、話の通じない者は面倒くさいのう、全く…」
大量のナイフや剣が一人の人間に迫り、刃が届くかどうかといった距離にまで近づいたときその時、いつ攻撃したのかは分からないが最初に怒鳴っていた男も含め全員が倒れ伏しており、フードを被った人物がつまらなそうに体を払っていた。
「はぁ、相手の力量も見切れずによくぬかしおるわ。さて、伸びているうちに詰所にでもぶちこむとするか」
うわぁあの人数を一瞬かよ…、セリフから悪い人ではなさそうだけど状況的に見つかったらやばそうだな。よし、かくれんぼ続行で。
「う~む、何かもう一人隠れている気がするのぅ。そこか?」
言葉と同時にとなりのタルにナイフが刺さる音がした。その間の俺は無心を貫いていた。
「ふむ、気のせいじゃったか。ならば、さっさと詰所に行くかの」
(・・・・・・・)
そう言った後、フードの人物は倒れている奴らを縄で縛って連れて行った。しかし、俺は安堵して少しの間動けなかった。
(よかったぁぁぁ、ナイフが飛んできたときはどうなることかと)
もしナイフが木箱の方に飛んできていたら今頃牢屋いきだったかもなぁ俺、身分も証明できずこの世界では珍しい格好しているところとか見るからに怪しいし。
まぁいいや、とにかく一刻も早く人通りの多いところに行こう、いつ何が起こるか分かったもんじゃないし。
(でも、いくら俺が空気になりきっていたとはいえあのレベルの人だったら気づきそうだけどな。なんでだろ?)
城を脱出した時と同じ疑問を再び抱きながらも、俺は人通りのある道へ歩を進めていった。