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047「また逢う日まで」

 常春の楽園にも、短い冬が来る。木々は葉を落とし、草花は土に眠りにつく。パサージュを行き交う人々は皆、めいめいにマフラーやセーターを身に付けている。


「月日が経つのは、早いものだね。このあいだ来たばかりだと思ったのに、もう聖誕祭の時期になるとは」

「そうね。私も、アッという間に感じたわ」

「パパ。おじさんくさいこと言わないでよ」


 クロエをあいだに挟み、アランとエマと三人で手を繋ぎ、汽車が待つ駅へと歩いている。エマの手には、来るときと同じトランクが握られていて、アランの腕には、大きめの紙袋が抱えられている。ここへ来たときと違うのは、エマが赤毛でそばかす顔の少女だという点と、クロエの背が伸びた点だろう。 


「手紙は届いてるだろうけど、どんな反応をされるだろうね。僕のことを無責任だと思ってなきゃ良いけど」

「そんなこと、思ってないわよ。まぁ、パパは多少、今回のことでショックを受けてるかもしれないわね。一応、帰るときはテオくんも一緒だと書いたんだけど」

「何がショックなの? テオは、とっても優しくて良い人よ?」


 憂え顔のアラン、思案顔のエマに対し、クロエは頭上に大きな疑問符を掲げ、二人の顔を交互に見る。二人は、クロエの発言が聞こえなかったフリをしつつ、声を潜めて話を続ける。 


「テオくんのためとはいえ、変身出来なくなったのは困っただろう?」

「まぁ、前夜祭には無理でも、後夜祭の頃には魔力素も回復するわ。修業の身には痛手だったけど、不思議と平気なの。それに、最近は簡単な魔術なら使えるようになってきたの。――このあいだも、また妖精さんに助けてもらったものね、クロエちゃん?」

「あっ、エマ。アレは内緒にしてって言ったじゃない!」


 エマが悪戯っぽくウインクすると、エマは頬を膨らませて抗議する。

 そうこうしているうちに、三人は駅に到着し、改札前で立ち止まる。アランは、持っていた紙袋をエマに渡すと、別れの挨拶をする。


「それじゃあ僕たちは、このへんで。また、年が明けて暖かくなったらおいで。いつでも歓迎するよ」

「はい。ありがとうございます」

「私も待ってるからね、エマ。きっと来るのよ? 忘れちゃダメなんだからね?」

「えぇ。約束するわ、クロエちゃん」


 エマは、アランから紙袋を受け取って挨拶を返し、名残惜しそうにしているクロエの頭を撫でて微笑むと、トランクを持ち直し、改札へと向かって行った。

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