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042「時は一刻を争う」

 階段落ちから間もない頃、ドミニクは意識が混濁しているテオに簡単な応急処置を施し、仮説救護所へと運ぼうとしていた。

 ドミニクにおぶさっているテオは、頭にギンガムチェックのガーゼタオルが巻かれ、右足首は唐草模様の手拭いで固定されている。


「あぁ、もう! 細身のくせに、ソコソコ筋肉がついてるから重いや」


 身長差のため、半ばテオの足を引きずるようにしながら、ドミニクは唯一無二の親友を背負って移動している。しかし、根底に友情で結ばれているとはいえ、体重差もあるテオを運ぶのは難行苦行であることに変わりなく、ドミニクはついつい、口汚い悪態を吐いてしまう。


「自分で歩いてくれれば楽なのに。おい、テオ。もしも狸寝入りだったら、僕だって許さないからな。化けて出て来たら、容赦なく除霊してやるから、覚悟しやがれ!」


 生死の境をさまよっているテオを、ドミニクがブラックジョークともとれる罵倒をしていると、角からクロエとマリーが姿を現す。


「あっ、リスのお兄さんだ!」

「悪いんだけど、クロエちゃん。今の僕には、君に構ってる余力は無いんだ」

「あらあら。今日は冗談抜きで、ホントに大変なのね。足のほうを持つわ」


 そう言うが早いか、マリーはテオの両膝の裏に腕を回して抱え上げようとする。するとドミニクは、その前にテオを一旦地面に座らせ、背中側に回って両脇の下に腕を回して手を取って抱え上げる。


「わぁ、スゴーイ!」


 場違いにキャッキャと喜んでいるクロエに対し、脚を抱え上げているマリーは、ドミニクと歩調を合わせつつ、クロエに伝言を頼む。


「クロエ。あなたは先にお家に帰りなさい。それで、エマかパパがいたら、テオが大変だって伝えるの。出来るわね?」

「わかった。エマに、テオが凄いことになってるって言うわ」

「寄り道するんじゃないわよ。なるべく早くね」

「ハーイ。急行列車、出発進行!」


 クロエは、両手を汽車のシリンダーピストンのように回転させつつ、脱兎の勢いで嬉々として家路を急いで行った。

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