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014「偉いか偉そうか」

「おっしゃる通りですよ、アランさん。僕は、まぎれもなく、その一人息子です。苗字(ファミリーネーム)を名乗らなかったのに、よく気付きましたね?」


 平板な機械のような冷たい声でテオが答えると、アランはフッと冷たく薄笑いしながら応える。


「その特徴的な青い髪には、忘れたくても忘れられない忌まわしき思い出があるんでね」

「そうですか。それで、どうしますか? 僕を監禁して、身代金でも要求してみますか?」


 テオは、自嘲とも自虐ともつかないアイロニカルな表情をする。すると、アランも皮肉交じりに言葉を返す。


「魔女たちは無垢な人間をたぶらかす悪玉であるから、善良なる騎士として、秩序を乱す分子を排除せねばならない。そう言う考えを、教団の連中は、数の同調圧力を用いて洗脳教育するだろう。そうなれば、君も憎き父親と同じ人間に変わるさ」

「おやおや。教団や、その訓練学校の騎士候補生に対して、ずいぶんと偏見を持ってらっしゃる」

「偏見を持ってるのは、君のほうだろう。家を留守にしてばかりの両親を冷淡だと思い、悲劇の主人公ぶっているのだから。君は、自分がどれほど恵まれているか、よく理解するべきだね」


 沈黙を保ったまま、数秒ほど互いに目を合わせていたが、やがてアランが吹きだし、つられてテオも口に左手を当てて笑い出す。


「アー、駄目だね。僕は、こういうシリアスな話には向いてない」

「僕も。つい、柄にもないことをしてしまって、自分で自分が可笑しくて仕方なかった」

「ハハッ。まぁ、アレだな。息がつまりそうになったら、いつでもおいで。悩み相談に乗るよ」

「はい。ありがとうございます」


 ついさっきまでの緊迫感は、どこへやら。相好を崩したアランが右手を差し出すと、テオは即座にイスから立ち上がり、その手を掴んで握り返す。そして、軽く上下に振ったあとに手を離すと、旧知の友のように心を通わせ合った二人は、テラス席に続くフランス窓へと歩き出した。

 窓の外では、いつの間にか、クロエ、エマ、マリー、そしてドミニクの四人が揃ってテーブルを囲み、店内の二人をチラチラと見ながら、口さがない噂話に興じているのであった。

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