97 有能クラスと微妙なクラス
「じゃあ1人ずつ相手をするってことでいいな!!?誰を相手するかは早い者勝ちで、俺はこのガリアスってやつにするわ!!」
少し挑発的に、俺はそう宣言する。
こちらの勝利はすでに確定している。狩られるのはお前達だ。
そう聞こえるような台詞回しだ。
実際はそれ以外の戦いーーーーー例えば乱戦になった場合の対応が難しいため相手が俺の提案に乗ってくれることを期待しての言葉だったのだが、それは見事にハマったと言えるだろう。
「随分と自信満々だな?よかろう、おまえのあいてはこの俺がしよう。お前らも各々の獲物を見定めるがいい。」
ガリアスが代表して1対1で戦う提案に賛成した。
ついでに、俺の相手をしてくれるとのこと。
よかった。
「じゃあボクはこの女の人にするよ!!」
「私はこっちの太った人にするわね。」
「えっと・・・じゃあ細い男の人で・・・」
それぞれ相手が決まったみたいだ。
シュラウドを戦闘に参加させるのか?と思われるかもしれないが、今回は大丈夫だろう。
今日の彼には心強い味方がいる。
勝つことはできなくても、俺たちの誰かが助けに入るまで持ちこたえることくらいはできるだろう。
「じゃあ、戦闘開始だな。」
俺は剣を両手で構え、敵の出方を伺った。
「ふっ、この前は負けてしまったが今回はそうはいかん。なぜならあの時とは違い今日の俺は最高の武具で身を固めているからだ!!」
自信満々に、ガリアスがそう言って直後彼の姿が掻き消えた。
これは彼が得意とするスキルを用いた敵の背後に移動する技だ。
それを察知した俺は前に構えていた剣を今度は後ろに軽く突き出した。
「グワッ、、!!?」
「やっぱりさ、装備を強くして性能を強化しても動きが前と同じじゃあ強くなったとは言えないんだよな。」
ガリアスのスキル移動は発動後一瞬で移動を完了する。
これだけ見ればかなり強いスキルなのだが、問題は次だ。
一部のスキルにはディレイという概念が存在する。
要はスキル使用後、決められた時間行動薄ことができなくなるあれだ。
一瞬で移動し、そしてそのまま攻撃を仕掛けていると思われるガリアスも、このディレイには逆らえない。
俺がこのスキルを見続けた際、彼は移動後約0、5秒間その場に突っ立ったままだった。
1秒にも満たないその時間だが、相手の近くということを考えれば十分すぎる危険な時間だ。
何せ来ることさえ分かっていればそこを狙い撃ちすればいだけの話なのだから。
「結局の敗因は、スキルという補助機能に頼りきった戦術を使ったことだろうな。」
呻き声をあげるガリアスを前に、俺はそう締めくくった。
軽くとは言え、剣が刺さったのだ。
この世界のダメージはHPの減少値、、、、といえど痛みは別だ。
ダメージ的になんら命に問題があるわけではなくても、こうやって刃物で刺されて痛くないはずはないのだ。
ガリアスはその精神力で膝を折ることはしないが、あれでは普段の動きをすることはできないだろう。
俺とガリアスの勝負は、初めのやりとりで勝敗が決まったと言っても過言ではなかった。
「さて、他の奴らは大丈夫だろうな?リリスとかはともかく、、、シュラウド達は大丈夫だろうか・・・」
若干心配だったため、俺は早急にガリアスを無力化し仲間の様子を見守ることにした。
「うふふ、貴女召喚士なのね。珍しいわ。」
ノアの相手を務める女性は不敵に笑う。
「そうだね。まだお仲間さんには出会ったことがないんだよ。」
「そう。残念でしょうね。それにしてもかわいそうね。召喚士だなんて・・・」
「む、何がかわいそうなのさ!!」
「だって魔法使いから派生するクラスの中で1番微妙なクラスじゃない。あぁ、無能な召喚士さんはそんなこともご存知でないでしょうね。」
「あー!!もうボク怒ったよ!!全力で行くからね!!」
自分を、ひいては世界中の召喚士を馬鹿にするような発言をノアは許せなかった。
彼女はすでに呼び出していたシルフを敵に向かってけしかけた。
「風属性の精霊ね。なら、《炎魔法:焼け付く大地》!!」
シルフが飛びかかって来る中、相手は悠長に詠唱・・・とはいかずに言葉だけで魔法を発動させた。
彼女の魔法が発動すると同時に、そこを中心に地面が赤熱する。
「わわっ!!?熱い!!あち、あちちち」
ノアは足をジタバタさせてどうにか暑さを耐え忍ぼうと試みる。
その反面、相手の方は何か対策を練っているのか、暑がる様子はない。
また、空中を飛んでいるはずのシルフであったがそれらもまた暑さにとらわれ苦しんでいるように見える。
その様子は相手に近づいているものほど大きい。
おそらく、魔法の発動地点が一番の高温なのだろう。
それを瞬時に理解したノアは一度大きく距離をとった。
「ふぅ、ここまでくれば一応普通に立つくらいなら大丈夫だね。」
額を伝わる汗をぬぐいながらため息をつくノア。
そんな彼女に、1つの言葉が投げかけられる。
「召喚士相手はどうすればいいのかがわかりやすくて楽でいいわ。」
明らかな挑発だ。
大方、ノアを逆上させて大量のMPを使わせるつもりなのだろう。
それを言われたノア自身も、それはよく分かっている。
召喚士の特徴として、彼らは何かを呼び出すだけであるというのがある。
召喚士は呼び出すだけで、攻撃や防御は全て呼び出された側が行うのだ。
防御はともかく、攻撃という面においてはこれは少しのハンデを与えることになる
なにせ呼び出されたものによって攻撃方法がバレているからだ。
その為すぐに魔法を放つものができるクラスの者からしたら、他の相手より一瞬早く対応に走ることができる。
これが知性のない魔物相手だったら問題ないのだろうが、対人戦では大きすぎるハンデだ。
その為この世界では、召喚士は微妙なクラスと言われているのだ。
「むー、ならこれならどうかな!!?本当はもうちょっと後にお披露目するつもりだったんだけど・・・来て!!」
ノアは軽く詠唱を唱え始める。
魔法使いにとって、詠唱中は最も無防備な瞬間だ。
それを相手がみすみす見逃すはずはない。
「召喚士は無詠唱化のスキルを取れなくて辛そうね。《炎魔法:暴発》!!」
《炎魔法:暴発》とは術者のMPを最大半分までランダムに使用し、その使用量に応じた威力の炎魔法を行使する魔法だ。
消費MPの下限値は術者の最大MPの1%、最低値を引いたとしても最低限の威力は保障されている魔法である。
そして今回、ノアに向けられて放たれたその魔法の消費MPは・・・・・
「41%よ!!うふふ、召喚士は運も無いのね。つくづく不遇なクラスだわ。」
目をそらしたくなるほどの業火が、一直線にノアに向かっていく。
「運がないのは認めるよ!!どうせなら最大値をひきたかったものだよ!!」
ノアの詠唱は驚くほど早く終わった。
詠唱時間が短いということは、あまり強いものは呼び出せないということだ。
それを分かっている相手は自分の勝利を確信して笑みをこぼした。
「じゃあ、これ貰っていくね!!」
「ーーーえ?」
だが、次の瞬間に起こった事実を目の前に呆然とするしかなかった。
自分が放った魔法ーーーMPを41%も込めた魔法ーーが跡形もなく、なんの減少も引き起こすことなく消え去ったのだ。
これには驚くほかはない。
「あ、貴女何をしたの!!?いや!!?違う、貴女のその手にあるものはなんなの!!?」
ノアはその詠唱を終えるまでどこにもなかったものを今、手にしている。
球体のような、、、しかしどこか禍々しい装飾を施された何かが・・・
「召喚士は数が少ないから、あんまり情報は出回ってないっぽいね!!これなんなのかは君が負ける少し前にわかると思うよ!!」
相手が知らない情報なのだ。それを律儀に解説してあげる優しさはない。
「わたしが召喚士ごときに負けるですって!!?冗談が過ぎるわよ。」
プライドを傷つけられたのか、自分が見下す相手が勝ち誇った顔を見て苛立ちを覚える。
「冗談じゃないよ!!君はボクに負けるんだ!!」
完全な勝利宣言。
それをするほどの自信が今のノアにはあった
ついにスマホ用のキーボードを買ったので、今回はスマホからの投稿なのですが、、、、、
こっちから投稿すると今何文字書いたかというのが表示されなくて少し不安ですね。