表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第3章 終わった機械と刻む歯車
95/293

95 見えているものと見たかったもの

後ろ半分はおまけみたいなものですかね。



「へぇ、これが言っていた防衛機構ってやつか。」

建物の2階、そこに俺が踏み入った瞬間に奥に置いてあった機械がひとりでに動き出した。


作られてから、あまり動かす機会がなかったのかそれは少し錆びついているような音を響かせながらゆっくりと立ち上がる。


「っていうかこれ、防衛機構というよりはどっちかで言うと殲滅機械って感じだよな?」


目の前のロボの目に当たる部分に、赤い光がともる。

やばい!!攻撃色だ!!


内心で若干ふざける余裕ができたのは、目の前の敵を倒すことができれば当面の目標が達成できるという確信があるからである。

あの中にシュラウドの核といえる部品が入っているはずだ。その思いがあるからこそ、俺は冷静に目の前の敵の分析をすることができるのだ。


「まずは攻撃性だな。」

俺はゆっくりとロボに向かって歩き出す。

そしてそのロボは俺がある程度近づいた瞬間に素早い動きで拳を突き出してきた。


ある程度予測が可能な行動のため、俺はそれを後ろに軽く飛ぶことで回避する。


「ふむ、結構攻撃的な性能をしてるっぽいか?当たったらただじゃすまないだろうな。」

大抵の物体はその一撃をもろに食らうと壊れてしまう。そんな印象さえ与えてくるような強力な一撃だった。

こういう高火力の攻撃を見た時人は当たらなければどうということは~、とか言っているが、それは実際当たった時の保証はないということの裏返しである。


注意はしなければならない。


「火力特化なのかな?敏捷性も結構あるみたいだし、防御面はどうだろうか?」

そうやって一つ一つ口に出しながら俺は目の前の機体の性能を確認していく。


ある人はこういった機械相手は人と違い弱点が明確でない―――とか、痛みを考慮しないからやりにくい―――とかいうが、俺からしたらこういう相手のほうが楽に戦えると考える。

いかに優れていても所詮はシステム、決められた範囲でしか動くことはできないのだ。


AI(人工知能)は人類の知能を凌駕している。


そんな言葉を度々耳にするが、俺はそれは間違っていると思う。

いや、間違っているとまでは言わないが少し考えるべきだと思うのだ。


AIは確かに人より正確な答え、正しい答えを導き出しているように見える。

だが、それはただの統計に基づく予測でしかない。

考え抜いた先の答えとは少し異なるのだ。



AIは行動の意味を理解する、ということは一切しない。

それが正しいと、何も考えることなく教え込まれているだけなのだから・・・・


例えば、いかに高性能のAIが作られようとも、英文を機械に訳させるととんでもない訳を平然と提示する。

これは単語の意味と文法を無理やり詰め込んで並べているだけだからだ。そこに存在する意味を理解せずに、ただただ与えられた作業を与えられたマニュアル通りに行っているだけ。



だから機械相手は単純で簡単だ。

相手に情報を与えてあげればいい。


俺がどんな時、どんな行動をとるかをある程度パターン化して見せてやればいい。

そうすれば吸い込まれるように予想通りの行動をとってくれる。


「防御面も結構完全なものだな。攻守ともに高性能ってわけか・・・・あ、そんなものを作っているから燃費が悪くて今まで使えなかったのか。」


こちらの攻撃は先読みしているのだろう。

俺が攻撃行動を開始したときにはもうすでに迎撃態勢を準備するほど早く防御に走る。


例えそれが攻撃行動をとろうとしている最中であってもだ。


「っていうことは、こいつはどっちかで言うと防御寄りの性能をしているっていうことだろうな。あ、だから防衛機構なんて呼ばれてるのかも?」

守る、ということに重点を置いているのだろう。

倒されなければいつかは相手が倒れる。そういうコンセプトで作られているのかもしれないな。


「機械系の弱点って言ったら部品を外される―――とかありがちなんだけど・・・かすめ取れそうな部位はなし、と」

まぁ、あったらあったで欠陥品もいいところだしないほうが自然ではあるのだけどな。


こうなったら隙をついて攻撃をして端から削っていくのが確実なんだけど・・・・俺、今素手だしなぁ。


素手でも戦えるといってもそれは素手の攻撃力が相手の防御力を突破できている場合に限った話だ。

正直、金属製の体は今のステータスじゃどうしようもない気がする。


下の階に行って何か使えそうなものを調達してきたほうがいいかな?

あ、いやそれよりもリリスに協力してもらったほうが早く終わりそうだな。


俺は大きく後ろに飛んでロボから距離をとりそのまま下の階に降りた。


「リリス!!ちょっとこっちに来てくれないか!!?」


「ええ、今ちょうどそっちに行こうとしていたところよ。何か問題でもあったの?」

下の階層はリリスによって惨劇の後みたいなことになっていた。

その場にいたもの全員もれなく床を舐める結果になっている。彼女の圧倒的なパワーの前にひれ伏したんだろうな。


しかしそれでリリスの機嫌が少し良くなって口調が柔らかくなっているのだから、まあいいのかな?

そもそもの原因を作ったのがこいつらだし・・・・


「ああ、シュラウドを助けるめどがついたんだけどちょっと硬い敵がいてな。手伝ってくれないか?」


「解ったわ。すぐに助けに行くわよ!!」

おお!!リリスがいつになくやる気だ。

彼女は俺の言葉を聞いてすぐさまこちらに走ってきてそのまま俺の隣をすり抜け1人上の階まで駆け上がる。

なんやかんや、リリスはシュラウドのことを気に入ってたからな。

彼が動かなくなったときに一番悲しむのも、怒るのも、そして助けられると思って気持ちがはやるのもリリスなんだろう。


少し悔しいような気はするがそこはいい。


「ちょっと待てよ!!少しだけ注意事項があるから!!」

俺はその背中を追いかける。

あのロボットを叩き壊すにあたって1つ、やってはいけないことがある。

それだけは伝えておかなければならない。


「注意事項?」


ああよかった。ちゃんと止まってくれた。


「ああ、あの中にはシュラウドの核となっていたらしい動き続ける歯車が入っているらしいんだ。それだけは壊さないようにしなきゃならない。」


「へぇ、で?それはどの部位に入っているの?」


「多分胸部だ。シュラウドから聞こえてきた音と同じものがあそこからも聞こえてくる。」


「了解よ。それ以外の部位なら好きに壊してもいいのよね?」


「問題ない、やっちまおうぜ!!」

最低限の注意事項を話し終えた。これであとはシュラウドをあそこから抜き出すだけだ。


それに、俺の中であのロボットのパターンは大体把握している。

待ってろよシュラウド、今、そこから連れ出してやるからな。













――――――――――――――――――――――――


自分はタクミ様に拾われた。


リリス様に体を貰った。


2人にこの恩は返さなければならない。そう思い必死で自分ができることを探していた。

それは意外にも向こうから舞い込んできた。


いや、与えられた。


タクミ様は悩んでいる自分を見てか自分に役割まで与えてくれた。

これは全力で答えるしかない。足りない頭ながらも自分はそう思った。


そこから先はいかに自分の有用さを理解してもらえるか。そこに努めた。

思えば、この行動はタクミ様やリリス様、またその仲間の方々に対するお礼などではなく、また、ああやって捨て去られた状態で日々を過ごすのが嫌で自分を必要だと思ってもらおうとした行動だった。


要するに、自分のことしか考えていなかったのだ。


タクミ様や、リリス様が自分のことを捨てるなんて思いたくもない。

棄てられるなんて思いたくもない。その一心だけで店の経営に従事した。


ここで結果を出せばきっと必要と思ってもらえる。

そんな自分勝手な思いがあだとなったのだろう。終わりは突然やってくる。


その日、いつもは賑やかな店が突然静寂に包まれた。

自分の体もうまくは動かない。動かないのはリリス様からもらった体の部分だ。


それについて文句を言うつもりはないが、肝心な時に役に立たない。そう言いたくなった。

少しして、店の中が再び騒がしくなっているのが聞こえる。

自分は店の奥の部屋にいて、何が起こっているか正確なことはさっぱりわからないが、声を聴くにタクミ様と誰かが争っているみたいだ。


だが、その音もある時を境に聞こえてこなくなる。


その部屋を再び静寂が包み込んだ。

そして途端に不安が押し寄せてくる。


まさかタクミ様は負けてしまったのでは?

その予想は正しかった。タクミ様を担いだ1人の男が部屋に入ってくるのが見えた。


その男は動けない自分の体を担いでそのままどこか別の場所に運び出す。



運び出された先は牢屋だった。

自分たちはここで少しの間待っていろということだった。

おそらく、時間が来れば自分たちは何か酷い目に合わされるのだろう。

早くここから抜け出さなければいけない。



だが、タクミ様は意識を失っておられるし、そもそも牢屋には鍵がかかっており見張りの人もいる。

自分だけ逃げるという選択はできなさそうだ。


ここはタクミ様が起きるのを祈ったほうがいいかな?



タクミ様はあっさりと牢を破り脱出を成功させた。

玄関を守る見張りもすべて素通りして窓からの脱出だ。


タクミ様は前に、敷地の外に出て店まで走れといった。

自分はその言葉に1も2もなく従った。それが助かる最善の道だと思ったからだ。

タクミ様もすぐに追いついてくる。そう思い自分は店までの最短ルートを選択して走る。


そこで、意識を失った。

最後に感じたのは後ろから何者かに殴られる感覚。

誰だろうか?それを考える間もなく意識は闇に引っ張られた。



目を開けると見慣れない風景。

どこかの建物の中だろうか?目の前には白衣を着た少し年老いた男。

髪の毛には白髪が混じっており、顔にはしわがみられる。しかしその目は子供のころの理想を今も信じているかのように希望に満ちたものであった。


自分は体を動かしどうにかして逃げようと試みる――――が、体が全く動かない?


どういうことだろう?

見るとリリス様から賜った体がなくなっている。まさか・・・持っていかれた?


「どうだ?今からわたしたちに協力する気はないか?給料ははずむぞ?」

そんな内容の言葉を投げかけられる・・・が、いまいち心に響かない。


彼らの店に、自分が作った商品を独占させろという内容だった。

その申し出は即座に断った。本当はここで首を縦に振るのが正解だったのだろうが、自分はどうしてもここで頷きたくはなかったからだ。


どうして?と聞かれると返答に困る。

どうしても、としか答えられないかもしれない。



自分が断ったとたん、目の前の男の顔が嬉々としたものとなった。

手には何かの工具が握られている。

そしてそのまま近づいてきて――――――――――自分は再び意識を失った。




そして目が覚めた時、体は自由に動かない。

目の前にはタクミ様、そして彼を攻撃するように動く自分の腕・・・・


止めようにも止められない。

自分がここにいることを伝えたいが―――声が出ないのでそれもできない。


あぁ、止まって!!止まって!!


必死のその願いは、受け入れられる様子は微塵もなかった。

ちなみになんですが、twitterで更新宣言をやっていたりもします。

基本的に毎日更新するので意味はないですが一応・・・話の構成の都合上明記することができていない設定を小出しし始めたので・・・→https://twitter.com/fis25476704

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ