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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第1章 少女の陰と手にしてしまった罪
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9 初の冒険と今回の作戦

ここから第1章です。

「うわぁ、見てみてタクミ!!いっぱいいるよ!!」


俺の前を歩くノアがこちらを振り返りながらそう言ってくる。

魔法使いが戦士の前を歩くなとか、言ってやりたいことはあったのだが、この状況下ではそんなこと関係ないだろう。

なにせ、

「いや、多すぎるだろこれ・・・」


俺たちの目には大量のゴブリンが映っていた。

その数はざっと見ただけでも50はくだらないだろう。


いや、確かにね?依頼書にはゴブリンが大量発生していると書いてあったよ?

でもね、さすがにここまで集まっているとは思わないじゃないか。


俺は少し卒倒しそうになりながらも、遠くからそのゴブリンの群れを眺める。

あいつらは今はまだ、あそこで屯っているだけで、何か行動を起こす様子はない。


その為、倒すにしても逃げるにしても、十分な余裕があるのだ。


「ちなみに、ノアはどんな魔法が使えるんだ?」


俺は目の前ではしゃぐ彼女に聞いてみる。

これの答えによっては何とかなるかもしれないからだ。できれば、範囲攻撃を持っていてほしいものだ。


「うん?ボクが使える魔法?えっとねー・・・」


ノアは少しじらすように、もったいぶって答える。

彼女はレベルがまだ低いことも関係して、使えるのは水の魔法一つだった。

そしてその効果は、圧縮した水を対象に向かって飛ばして攻撃するというものだ。


一度の魔法で一度の対象にする必要はないが、対象を増やせば増やすほど威力は下がるらしい。


「うぅ~、やっぱり、だめだよね?」


話す前は自信満々だったノアだが、魔法の詳細を話していくにつれて、この魔法ではあのゴブリンの群れをどうこうすることはできないと思ったようだ。

ノアは少し上目遣いでこちらを見ながら俺にそう言ってくる。


確かに、ゴブリンは数が多いのだから一気に倒しきることはできない。

この世界の魔法の法則はまだつかめていないが、基本的には魔法使いは遠くから一方的に攻撃してこそその真価を発揮する。

相手のリソースを対処に割かせ続けるのが魔法使いの基本戦術なのだ。


それをノアは分かっているのかどうかはわからないが、この場で自分はあまり戦力にならないと思ったのだ。

しかし、それは違う。


「いや、今回はノアがいれば何とかなりそうだぞ。」

ノアが使える魔法なら、あのゴブリンの群れを全滅は無理でも、ある程度安全に倒すことができそうだ。

それを聞いたノアが表情を明るくしてこちらを向いてくる。


「え!?ホントに!?ボクは何をすればいいの?」


自分が役に立つというのがうれしいのだろうか?彼女はいつもの調子を取り戻す。


「ああ、だからノアは俺の言う通りに魔法をかけてくれ。」

そう言って彼女に作戦を伝える。

それを聞いたノアは少し不満げだ。


「え~?本当に大丈夫なの?」


「大丈夫だって。それに、もし大丈夫じゃなかったら後ろの街に逃げ込めばいいんだ。気負うことはないさ。」


「なんというか、タクミってずるいよね・・・いつもそんな卑怯なことばかりやってきたの?」


「なっ!?卑怯とは心外だな。俺は常にその場でできる最善を選んでいるんだぞ!?お前は今日が野宿になってもいいというのか!?」


「え!?それはだめだね!!早くあのゴブリンを倒してお金を手に入れないと!!」


しかし、少し説得するだけで納得してもらえたみたいだ。

彼女は魔法を放つ準備を始める。


彼女は持っていた木の杖をゴブリンの群れのほうに向けて詠唱を始める。


―――――ふむ、詠唱があるタイプの世界なんだな・・・


俺はそう思いながらも、彼女より前に出る。

戦士だからこその行動だ。

本心を言えば、あの群れと対峙したくはないが、先ほども言った通り今日収入なしだと野宿になる。


まだ1000G残っているが、これには手を付けるつもりはない。

常に一定数のお金を残しておくのが俺のプレイスタイルだからだ。


俺は木の剣をゴブリンの群れに気づかれない程度の距離で構える。

そしてその数秒後、


「ウォーター!!」

というノアの叫び声とともに、魔法が放たれた。

その魔法の対象は・・・・・ゴブリンの群れ全体だ。


大量の水球がゴブリンたちを襲う。水球一つ一つはかなりの大きさで、そしてそこそこの速度が出ている。

普通なら、あれが当たればすくなからずダメージを受けるだろう。

しかし、ここはゲームの世界。

現実世界とは違う法則にのっとっている。その水球は見た目ほどのダメージを与えない。

下手したら、ノーダメージということもあり得るだろう。


それに、ゴブリンたちは攻撃を受けたことにより、こちらに気づいた。


「ギャア!?ギャア!!」


「グギャ!!」


「ギャ、グギャギャ!!」


ゴブリンたちは俺には理解できない言語で何かを言っている。

その言葉に意味はないのかもしれないが、そいつらは一斉にこっちに向かって走ってくる。


しかし、その動きは昨日見たゴブリンとは比べ物にならないほど遅い。


俺はゴブリンの群れに向かって突進をする。

だが踏み込みすぎてはいけない。

群れの端のほうをあいつらの間合いの外からちまちま叩くような戦い方だ。


何故、こんなにも相手の動きが悪いのか?その答えはその足元にあった。

そこは水浸しになり、地面が柔らかくなっていた。


前にも言ったが、ゴブリンたちは手足が短い。

それ故に、こういった地形の影響を人間より強く受けてしまう。

その結果が、こうやって足をとられている間に端から削られていくゴブリンの図だ。


それに、昨日確認した通りゴブリンたちの技量は低い。

たとえ一度に数匹相手にすることになっても、何とかなるだろう。

ちなみに、ノアは追い打ちをかけるようにあたりを水浸しにしていっている。

このまま削り続ければ、そのうち倒しきることができるだろう。


俺はそう思った。

そう、思ってしまった。

それは実際は何も関係していないのかもしれない。だが、俺の建てたフラグと呼ばれる強制力のある流れをそうように、そいつは現れた。

ゴブリンたちとは違い、人間より大きな体。

豚のような顔、膨れた腹。俺のこれまでの経験から、オークと呼ばれる存在だ。


「ガアアアアアアアアァァァァァァァァ!!」


そいつは俺とゴブリンの戦いに乱入して、雄たけびを上げる。


そして、周りで足をとられているゴブリンには目もくれず、こちらに向かって走ってくるのであった。

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