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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第3章 終わった機械と刻む歯車
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89 新たな力といない友

静かになった店の中、その場所で初めに動き始めたのはやはりというかノアだった。


彼女は争った形跡のある店内を軽く見渡した。

「えっと、、、う~んと、、、緊急事態だね!!?」

彼女はその状況が非常にまずいものであることを理解し、そしてまず初めに自分が何をするべきなのかを考える。


通常ならこのような場合、的確な指示をくれる仲間がいるのだが、彼の姿は何故か見えない。

無事だといいが・・・そう思いながら彼女はまず真っ先にその場に倒れている者を起こすところから始めることにした。


「リアーゼちゃん、リリス、起きて!!」

まずは仲間の体を揺さぶりながら起こそうとする。

いつもの朝なら多少強引に起こすのだが、今は周りの状況が状況だ。


もしかしたら倒れている理由が眠っているというのが理由ではないかもしれないのだ。


「ん、ノアおねえちゃん?」

よかった、無事みたいだ。

ノアは目の前のリアーゼが特に体に不自由がない様子を見せたことに安心感を抱く。

これならいまだに呼びかけに答えないリリスのほうも問題ないだろう。


「ほら、リリスも、早く起きて!!」


彼女は先ほどより少しリリスの体を揺さぶった。

すると彼女から反応が返ってくる。


「えっと・・・これはどういう状況なのかしら?」


「緊急事態だよ!!タクミがいなくなってるんだ!!」


「それだけじゃないよおねえちゃん!!シュラウド君もいなくなってる!!」

奥の部屋にいるはずのシュラウドも、自分たちが眠っている間にいなくなっているらしい。


「タクミが!!?緊急事態じゃない!!」


「だからそう言ってるんだって!!」

彼らがどこに行ったのか・・・いや、どこに連れ去られてしまったのか、それはそこにいる者たちだけではわからない。


だが、明らかに知っている人間がこの場に放置されている。


この状況を作り出したものと関係があるのだろう。

店のカウンターの横には縛られた人が3人、その場に放置されていた。

おそらくタクミと戦い負けたのだろう。


彼らを縛るのに使っているロープは、この店に彼がいつもそなつけていたものに相違なかった。


「ほら、君たち、早く起きるんだよ!!」

ノアはその者たちに向かって容赦なく足を振り下ろす。

仲間が大変な目にあっているかもしれないのだ。あからさまに悪いことをやった奴に優しくしてあげる余裕は今のノアにはない。


「ぐっ、なんだぁ!!?」


「ねぇ!!タクミたちはどこに行ったの!!?」


「あぁ!!?あのショップ店員のことか?俺が知るわけねえだろうが、奥にいた奴ならともかくよお」


「奥にいた奴・・じゃあシュラウドはどこに行ったの!!?」


「はっ、いうわけねえだろ?俺を何か都合のいい奴か何かかと勘違いしてないか?」


「早く言えよ。こっちは急いでいるんだ。幸いなことに後2つ、情報源は残ってるんだ。お前を殺してもこっちとしては構わないんだぞ?」

口を開こうとしない男に対し、リリスが脅しをかける。

その口調からは明らかに苛立っていることが見て取れて、それを向けられた男を強く威圧した。


だが、それでも男は口を割らなかった。

しかしその代わりに1つ、情報をくれる。


「こちとら前回失敗してから魔法契約で縛られることになってんだよ。雇い主の目的とか、ポロっちまわないように・・・」


彼らは言わないのではなく、言うことができない。


その情報はノアたちの心に深く突き刺さる。

目の前にはおそらく自分の欲しい情報が落ちているのに、それを手にすることができないのだ。


歯がゆいことこの上ないだろう。


「じゃあ、お前はもう寝ていろ。」

リリスが男にけりを放つ。

縛られている男がそれをかわせるはずもない。

その蹴りは見事に男の脳を揺さぶり、再び気絶させることに成功した。


「リリスさん、ノアおねえちゃん、どうするつもりなの!!?」

焦ったようなリアーゼの声が店の中に響く。


目の前の情報源は当てにならない。

彼らがどこに行ってしまったのか、手掛かりすらない。


それなら――――


「探すしかない!!」


「でもおねえちゃん、探すって言ってもどこを?」


「まずは街の中全部!それでだめなら街の外まで!!」

しらみつぶしに探すしかない。

ノアが悩んだ結果、その答えに行きつく。


タクミならこんな時、どうしたのだろうか?

そう考えてもみたが、自分は自分だ。彼がどう考えるか?と考えても正確な答えが出てくるわけではない。

タクミは自分で輝くのが綺麗だといった。

なら、こういう時くらい自分の答えを、自分のできることを全力でやるんだ!!

ノアはそう決心し、その後すぐにその言葉どおりの行動を起こす。


「街の中全部って、あなたそんなことができると思ってるの?」


「とりあえずやるんだよ!!まあ見てて、ボクなら何とかすることができるから」

ノアはそう言って魔法の詠唱を始める。

今まで一度も聞いたことのない詠唱だ。


「―――――来て!!ボクの新しい友達!!」


ノアの呼びかけに応え、1つの光が姿を現した。

それは付与付与と形を変え、そして最終的に小さな人型のものになった。


「タクミを探してきて!!」

ノアはその人型に短く命令を出す。

人型はその命令に従うべく、割れた窓から店の外に出た。


「ノア?今のは?」


「ボクの新しい召喚精霊のシルフちゃん―――風の精霊だよ。待ってて、もっと大量に呼び出して数を使ってタクミを探して見せるから!!」

ノアは再び同じ魔法の詠唱を始める。


彼女が詠唱を終えると、それと同時に先ほどと同じような人型がその場に現れる。

ノアはそれに軽く命令を出すとまた、詠唱を始めた。

そのことをただただ、永遠と繰り返す。


≪召還魔法 風精霊召喚≫はいつも使っている≪召還魔法 下級悪霊召喚≫とは比較にならないほどのMPを消費する。

MPとは体の中をめぐる力、つまりは血液のようなものだ。


それを大量に消費し続ければ、当然つらくなってくる。


今のノアでは、精々20体も召喚すればMP切れになってその場に倒れ伏すしかないだろう。

そんなこと、本人が一番わかっている。


「リアーゼちゃん!!魔力水をとって!!」


「えっ!!?はい!!」

足りないなら補えばいい。

そんなこと、子供でも分かることだ。


ノアは魔法の詠唱の間に少しだけ休憩をはさみ、そして再びその行動を再開した。

その動作を、彼女は永遠と繰り返した。


それを数えていたものはいないが、もうすでに100を超える精霊を呼び出すことに成功しているだろう。

彼女は数に任せてタクミとシュラウドを見つけ出すつもりなのだ。


下級悪霊であるウィルオウィスプでは複雑な命令は理解できない。

その為大量のMPを消費することになろうともシルフのほうを召喚するしかないのだ。


100程度の数では、まだ街をすべて探しつくすには足りない。

彼女は呼び出した数が3桁を超えてもなお、その行動をやめるということをしようとはしなかった。

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