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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第3章 終わった機械と刻む歯車
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86 ドラゴン再びと向かない意志


えっと―――竜爪の剣をかった奴が何か話をしたいということだったのだが・・・・どれだ?

店内にはそこそこの人が入っているため、どれがその人物なのかが判断突かない。


っとそうだ。人じゃなく剣のほうを探せばいいのか。


竜爪の剣を売ったのは一本だけのため、それを持っている人が店主を出せといっている人物ということになる。

俺は客が持っている武器を一つ一つ見ていく。


槍―――槍――普通の剣――戦斧―――杖―――普通の剣――普通の剣―――竜爪の剣!!


――――見つけた。

というか探していて思ったのだが、この店はそこまで広くないのだから槍とか戦斧とかの大きな武器を持ったまま入店するのはできるだけ控えてほしい。

ないとは思うがそれを使って強盗じみたことをされても厄介なんだが・・・・


「あの・・・・」

俺は竜爪の剣を持ったまま店のものをまじまじと眺めている人物に話しかける。


「ん?その服装―――ああ、君がこの店の店主なのか?」

おっと、俺としたことが話しかける前に見た目からわかる情報を抜き出すのを忘れていたな。

俺は目の前の人物の見た目の特徴を心の中で挙げながら受け答えを始める。


「はい。一応、そういうことになっているそうです。」


「そうか!!なら少し聞きたいことがあるんだが、この剣は竜の素材で作られたもので間違いないのだな?」

目の前の人物は声や体つきから判断できる限り女性であるようだ。

しかしその顔は深めのフードで隠されており、一部分しか見えない。


「はい。そうですね。アースドラゴンの―――爪の部位を使っております。」


「その素材はどうやって手に入れたものなのだ!!?いや、違うな・・・誰がその素材を持ち込んだのだ!!?」

服装の見えている部分は普通の冒険者と同じような冒険に適している格好をしているように見える。

しかし、よく見てみると作りはかなり良く、それでいてほとんど汚れがついていない。


まるでその服は新品であるかのようだ。


「持ち込み・・・?」


「そうだ!この店は聞いた話によると素材の売却も請け負っているのだろう?」

ん?シュラウドのやつ、魔石だけでなく素材も引き取るようになったのか?

まあ、素材があれば新しい武器が作れるからそれでもいいのか。


だが、


「いいえ、その武器の素材は別に持ち込まれたものではなく、この店を開いたときから余っていたものです。」

別にこれは誰かから買い取ったものではない。


「そうか?それではどのようにしてその素材を手にしたのだ!?」

ん、見てみると目の前の女性はこの店で購入した武器のほかにまだ持っているな。

見ただけで名品とわかる一振りの剣だ。


「それでしたら自分で調達―――というかお金が必要になった時にドラゴン狩りに行ったときにドロップしたものです。特に特別なことはしていません。」


「なっ!!?自分たちで竜を狩ったというのか!!?」

あ、その武器をよく見てみると何か紋章的なものが刻まれてる・・・・どこかで見覚えがあるような?


「はい、そうです。」


「そ、そうか・・・それなら少し話したいことがあるのだが・・・・その前にその、人の体をじろじろ見ながら話すのはやめてもらえるかな?」

あ、ばれてたのか。

男が女の体をチラチラ見る動作は結構ばれているっていうしな、今回俺は特に隠すつもりはなく色々見ていたから気づいていて当然だろうな。


「そうですね。それについては謝罪いたすとします。では、ここでは何ですので店の奥に入ったところにある部屋で話をするのはどうですか?えっと、オベール様でよろしいですよね?」


「なっ!!?何を馬鹿なことを・・!!?」

ああそうだ。この紋章、確かエリックが来ていた服や持っていたレイピアに同じものが刻まれていた。


彼の家に代々伝わる―――とか言っていた聖剣にも同じものが入っていため、それが彼の家の家紋であり、目の前の人物がエリックと何かゆかりのある人物であることは考えるまでもないだろう。






「分かっているなら別に隠す必要はないな。私の名はヴィクレア=オベール、オベール家の長女だ。よろしく頼む。」


「私は天川 匠と申します。周りからはタクミと呼ばれているため、よかったらそう呼んでいただけると」


「そうか?それとそんなにかしこまる必要はない。仕事の途中で無理言って時間をとってもらっているのは私のほうなのだ。」


「そうですか。では、そうさせていただけますね。」

そう言ってもらえると非常に助かる。

敬語っていうのは結構難しかったりするため、完璧に使いこなす自信はないのだ。


「それで、話というのは?」

それでも一応、丁寧な言葉遣いだけは忘れないように本題に入る。


「ああ、そのことなのだが、単刀直入に言えば竜を退治するのを手伝ってほしいんだ。」

うーん、このいきなり本題に入ってそれでいて話が飛んでいる感じ―――どうしてこうなった?


「竜退治・・・ですか?」

思うところはあるのだが、とりあえず先の言葉を期待した言葉で返事をする。


「そうだ、現在この近くに1体のドラゴンがいることが確認された。そのドラゴンは街を襲う可能性があるため、先んじて討伐してしまおうということだ。」


「?それとその話がここに持ってこられていることに何の関係が?」

冒険者ギルドで呼び掛けて討伐隊でも組めばいいんじゃないのか?

流石にドラゴン相手といえども数をそろえればそこそこ戦うことができるだろう。


「それなのだが、流石に相手が竜ともなると、みな、行きたがらないのだ。勝てないと思っているのだろうな。」


「まあ、それはそうか・・・ちなみに、そのドラゴンの特徴はわかりますか?」


「ああ、まだ言っていなかったな。敵はブラックドラゴンと呼ばれ、巨大な翼をもっている黒竜だ。それより強いとされるアースドラゴンを討伐することに成功した君なら倒すこともできるだろう?」


「いいえ、無理です。できればお断りさせていただければ幸いなのですが・・・」

飛ぶといわれた瞬間、俺はこの話を断ると決めた。

ノアにも言ったが、翼をもっている竜は戦いにくいのだ。


「え!!?あぁそうか!!もちろん、私も手伝うし報酬も支払おう!!とにかく、あのドラゴンを何とかしてほしいのだ。」


「いや、これ報酬とかの問題じゃなくて、普通に戦ったら負けるから戦いたくないんですが!!?」


「で、でもアースドラゴンは倒せたのだろう!?それならそれより弱いといわれるブラックドラゴンだって・・・」

いや、だってそのドラゴン、とぶらしいじゃないか。

ステータスの差とか関係なしに、飛ぶかどうかが俺としては重要なのだ。


一応、飛んでいるドラゴンと戦う作戦も持っていたりはするのだが、それは安定性がない。

少し予想外の行動をとられるだけで瓦解する作戦など作戦とは認めることができないのが俺の性だ。

その為、今回この話を受けることはできない。


「アースドラゴンだって偶然勝てたようなものなんです。2度も奇跡は起こらないんですよ。それに、今結構忙しいし・・・」

どうしてこの店が襲撃されることが確定している今、ドラゴン討伐になんか行かなきゃいけないのか。


「なら用事が全部終わってからでいいからどうか、手伝ってはくれないだろうか?」

ヴィクレアがその場で深く頭を下げる。

日本人としては結構見慣れた光景なのだが、この世界で、それも貴族が頭を下げるのは非常に重いことのように思える。

俺はこの世界での身分としてはおそらく平民といわれるところにある。


そんな人間に、惜しみなく頭を下げる姿はどこか必死さが感じられた。


「本当に他に手伝ってくれる人はいなかったのですか?ほら、国に要請とか・・・」


「国は私を手伝ってはくれません。家名を出して断るだけです。」

家名―――そういえば、エリック達オベール家って確か英雄の家計だったんだっけな?

あれか?英雄の血を引くのだからそのくらい自分たちで――――――とかなんとか言われるのだろう。


今日もそう言われないために、深いフードで顔を隠していたのかもしれないな。


だが、そこまで頼まれても流石に自分の命をかけてドラゴン討伐に行くというのは・・・・


「え!!?何々!!?タクミたち何か面白そうな話してない!!?」

ノアが空気をすべてぶち壊して、俺たちの会話に入ってきた。


「いや、何も面白い話はしていないから、ほら、早く手伝いに戻れって。」

こいつをこの場に放置してはいけない。そのくらいは今まで付き合ってきたため感覚でわかっている。

その為俺はいち早く、会話が進む前にノアをこの部屋から退散させようとする。


「んー?ボクに隠して何かやろうとしてるんでしょ?そうはいかないよ!!」

しかし、ノアはこの場を離れようとしない。

何としてでも会話に参加するという意思が感じられる。


「どうか、どうかドラゴン討伐するための力を貸してはくれないだろうか!!?」

そこで今一度、ヴィクレアがその言葉を口にした。


そしてその言葉は当然、その場にいたノアにも聞こえているわけで・・・・


「え!!?ドラゴン討伐!!?いいよ!!タクミ、行こうよ!!」

ほら見ろ、すぐにこうやって話に乗ろうとする・・・・


「受け入れてくれるのですね!?ありがとう!!」

ヴィクレアは下げていた頭をバッ!!っと引き上げ、ノアの手を両手で包み感激したような顔でそう言った。

あ、これ、もう断れないやつだ。


「でもノア、今回のはこの前みたいなやつじゃなくて、空を飛ぶタイプのドラゴンなんだぞ?俺たちでどうにかなると思うのか?」


「何言ってるのタクミ、それをどうにかする作戦を立てるのがタクミの仕事でしょ」

俺の苦し紛れの抵抗も、さも当然のようにするノアの発言によって簡単に撃ち落されてしまう。

これは絶対に行かされる流れだ。


「そ、それで?もし行くとしたらいついくんだ?」


「なるべく早く頼みたい。向こうは今、特に動きは見せていないが、これからどうなるかわからんのでな。」

うん、いくにしても準備期間が限りなく少ないということか?

これをできるだけ引き延ばすことが今回、俺ができる最後の抵抗だろうな。


「出来れば1週間は待ってほしいのですが・・・ほら、この店のこともありますし・・・」

正確には、この店に来る襲撃者のことがあるからちょっと待ってほしい。

これを片付けてから初めてドラゴン退治の準備に着手するつもりだから・・・・


「それくらいなら問題ないだろう。なら1週間、私はここで働かせてもらうから、そのつもりで頼むぞ。」


この1週間、有効に使わないといけないな・・・・・って、え?

今、ヴィクレア、なんて言った?






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