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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第3章 終わった機械と刻む歯車
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78 適材適所と意外な特技


「さて、タクミ、ドラゴン狩りから1週間がたったよ!!約束通りこの1週間何をしていたか白状するんだ!!」


ふと思うのだが、何かに真剣になっているときの時間はとても短いもののように思える。

これは俺だけに限った話ではないのだろうが、そういう時決まって思うのだ。


――――――あぁ・・・もう少しだけ時間があればなぁ・・・


俺は今、そんな思いに駆られていた。


この1週間、俺はみんなとは別行動をとり、あることをしていたのだがそれだけで時間が過ぎてしまった。


「もう少し待ってほしかったていうのはあるんだよなぁ・・・」

呟くように俺はそう言った。


だが俺の事情などノアには関係のないことなのだろう。

彼女は一歩も引く様子はなく、俺の答えを待ち望んでいるような様子だ。


「ほらほらタクミ早く何をしていたか教えてよ!!約束したでしょ!?」


約束・・・・したなぁ。

これで覚えていないとしらを切ることができたら楽だったのだが、俺は周りの人曰く嘘をつくのが下手らしい。

なんでもすぐに分かるのだとか・・・


仕方ない、少し早い気がしないでもないがお披露目といくことにしよう。


「わかった、じゃあ隣の部屋にいるであろうリアーゼを呼んできてくれ。そして集まったらみんなで見に行こう。」


「うん!!ボクだけ聞くのは悪い気がしてたからね!!ちょっとリアーゼちゃんを呼んでくるよ!」

ノアはそう残して部屋を飛び出してしまった。


俺も隣のベッドに幸せそうな顔で横たわっているリリスに起きるように呼び掛ける。

今は推定朝の5時、起床には早いくらいだが、ノアが乗り気のため仕方はない。


「リリスー、朝だぞー起きろー」

俺の気の抜けた声が部屋の中に響く。

その声にこたえるようにリリスの声が届いてきた。


「ん~、まだ暗い・・・ならもう少し寝てもいいよね?」

一度体を起こし、そして窓の外を軽く確認したリリスが再びその体をベッドの上に横たえようとする。

これは2度寝の構えだ。


次に眠ったら少なくとも数時間は起きてこない。


いつも見ている光景のためそれを予想できた俺は彼女の2度寝を阻止するべく今度は少し強めに声を飛ばす。


「リリスーー!!朝だぞー!!」


「ん、でもまだ暗いわよぉ?」

確かに、彼女が言う通りまだ空は薄暗い。

だが、俺たちのパーティ的にはノアが俺の部屋に来た時点で朝が来ているといっても過言ではない。


彼女がここで何を言おうが、俺の中ではもうすでに朝なのだ。


「いいから早く起きろよ。じゃないと置いていくぞー」


「あー、やめて、おいてかないで!!起きる、起きるから~。」

少し慌てたようにリリスが体を起こす。

やっぱり眠いとは言っても1人だけのけ者にされるくらいなら起きてくるんだな。


俺はそう思いながら素早く身支度を済ませているリリスを見る。

そしてリリスの身支度が半分程度終わったあたりで再び俺の部屋の扉が開かれた。


―――――――――――バァン!!

かなり勢い良く開けたのだろう。

少し激しめの、打ち付けるような音とともにノアとリアーゼが部屋に入ってきた。


「さて、リアーゼちゃんもつれてきたよ!!ほら、早く早く!!」


手を握り、リアーゼを引き連れているノアがせかすように俺にそう言った。

しかしまだリリスが準備の途中だ。


それにシュラウドも――――って、こっちはいつの間にか準備を済ませているな。


「じゃあリリスが用意出来次第出発だな。」


それから数分後、俺たちは朝食を食べに下に降りた。

そこではいるのが当然という風にイアカムが厨房に立っているのが見えた。


他の―――ウェイトレスなどは見えない。


いったい彼は何時ごろに起きているのだろうか?


料理人は朝の仕込みとかいろいろあって朝は早いというけど、彼はちゃんと寝ているのだろうか?

そんなことを心配しながら俺たちは1つの机を使って朝食を食べたのだった。












「はい、この前の報酬で用意したのはこれだな。」


「おおーー!!」

それを前にしてノアの感心したような声が聞こえてくる。


「えっとタクミ様、これは?」

しかしシュラウドは困惑したような声でそれが何なのかを聞いてくる。


全く―――これが何かなんて見たらわかるだろう?


「俺たちの店だよ?それ以外に何があるっていうんだ?」


そう、俺たちの店だ。

この前のドラゴン狩りで得た俺の分の400万Gはこれの準備資金に大半が持っていかれたりもしている。


「店―――?って何か開くのよね?また突然どうして?」

俺が急にこんな行動をとった理由がわからないのだろう。

リリスが不思議そうな顔をしている。


「だって考えてもみろよ。俺たちはそれぞれ何ができる?」

そこで俺は逆にみんなに質問を投げかける。


「えっと、ボクは一応魔法で魔物を倒すことができるね。」


「私も同じく戦闘ができるわね。それ以外はたいしてだけど・・・」


「私は――――えっと、アイテムを拾ったりとかー」


「物を作ることができます。」


ノア、リリス、リアーゼ、シュラウドがそれぞれ自分たちの役割を再確認するように言葉を発する。


「でだ、この前見たくシュラウドも一緒に連れていってもいいんだけどさ、それだとこいつの長所がいかせてない感じだろ?」


「それも一理あるわね。この前なんか何もせずに本当についてきていただけだったし・・・」


「申し訳ないです。」


「ああ、シュラウドー。俺たちは別にお前を責めているわけじゃないんだ。」


「なるほど!!だからこの子にはアイテムを作ってもらってここで売りさばいてもらうわけだね!!」

そこでノアが誰よりも早くその答えを口にした。

普段の何も考えていないような彼女とは思えない察しの良さだ。


まぁ、ここまで出た時点で全員わかっていたとは思うのだが・・・


「そういうことだ。とりあえず、中に入ってみるか?」


「うん!!ボクが一番乗りー!!」

先ほど、この場所は主にシュラウドのために購入した場所だという話をしたにもかかわらずノアは主役を差し置いて我先にと建物の中に入る。


建物の中は特に特徴というものはないただの店、という感じだ。


まだ棚には何の商品も置かれていないが、それさえどうにかしてしまえばすぐにでもなじむ見た目になるだろう。

入り口から向かって真っすぐ進むとカウンターがあり、そこからは部屋の中が一望できるようになっている。


これはないとは思うが棚の陰などに隠れて商品を勝手に持ち出したり、万引き犯を見つけた時により早く追いかけることができるようにこの配置になっている。


ここら辺は一応こだわってみたのだが、そもそもシュラウド自体に戦闘技能が全くないのでほとんど意味はないだろう。


しいて言うなら犯罪を抑止してくれたらいいな―――程度の配置だ。


ちなみにカウンターからはちゃんと店の奥に入ることもできる。


「シュラウド、どうだ?」

俺は店に入ったところで立ち尽くしているシュラウドに向かって軽くそう問いかけた。


「はい、素晴らしいです。」

帰ってきたのは非常にたんぱくな言葉だったが、俺にはその声がとてもうれしそうに聞こえた。



「でもタクミ?これを用意するだけだったら1週間もいらなかったんじゃない?」

しかしここで新たな疑問が生まれたといわんがばかりにリリスが俺に質問を投げかけてくる。


まあ、そう思うのももっともだ。


実際、この店を購入するのは割と一瞬で終わった。


というのもドラゴン狩りを成功させたその日のうちにはもうすでにこの場所は俺たちのものとなっていたのだ。

それにこの世界にはそれを取り締まるようなところがないからか、店の開業届を出さなければいけない―――ということもなかったため、実は1週間前にはもうすでに開業自体はできる状態だった。


「それはだな・・・・」


彼女の質問を聞き、俺はあるものを持ってくるべく店の奥へと向かう。


そして店となっている部屋とはまた別の部屋、居住スペースになっている部屋に備え付けられていたタンスからそれを取り出してみんなのものに戻った。


そして―――――――


「これを準備していたからだよ。」

俺はそれを店のカウンターの上に広げて見せた。


「これは―――?」

リアーゼがはてなを浮かべて俺に問いかけてくる。


「これはって、服だよ。従業員が着る用の服。」

やっぱりこういうのは形から入らなければいけない。

その為俺はここ1週間、必死にこの服を作っていたのだ。


「まさかと思うけど、これってタクミの手作り?」


興味深そうにそれを手に取ったノアがそうやってこちらを向いてくる。


「お、よくわかったな。結構よくできているだろう?」


「うん!!よくできているね。というかタクミってこんな特技があったんだね・・」

呆れたような―――?そんな様子のノア。


「ああ、昔から手先は器用って言われてたし、裁縫は結構やっていたころがあったからな。」

それこそ店でも開けるくらいには熟練していると自負できる出来だ。

自分を褒めてやりたい。


「そういえばタクミってこの子がまだ壊れてた時、ヒビの修復くらいなら簡単にできるとか言ってたわね。」


「はい、言っていました。タクミ様は戦えるだけでなくものづくりまでできるのですね。」


「まあ、誰かに習ったとかじゃないからプロと比べるとどこか見劣りするところがあるかもしれないがな・・」

俺はそう言って苦笑する。


そして―――――


「あ、そうだ。多分大丈夫だと思うけど、サイズが合わないかもしれないからみんな一度それを着てみてくれないか?」


自分の仕事の完成度を確認するべく、俺はそんな提案をしたのだった。

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