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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第3章 終わった機械と刻む歯車
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71 二人の特徴と戦闘訓練


「そいえばシュラウド、どうしてそんなことができるって思ったんだ?確か記憶が残っていないんだろ?」


「はい、それなのですが、なんとなくとしか言いようがなくて・・・」

なんとなく出来そうだったからやったということだろう。

結構曖昧な意見に思えるのだが、こういう感覚は大切だと思う。


記憶がないとはいっても体に染みついたものまでが消えるか?と言われるとそうとも言い切れないしな。


「そうか、それでちょっとでいいんだがその剣一度見せてくれるか?」


「——?はい、わかりました。」

シュラウドが先ほど修理したばかりの木の剣を俺に手渡してくる。


俺はその木の剣の内部ステータスを確認する。



名前 木の剣 

効果 武器攻撃力+4

説明 魔石を取り込むことによって少しだけ強くなった。



「おお!!凄いなこれ!」

武器の攻撃力値が1上がり、あとついでという風に説明文が変化していた。

これは先ほど魔石を取り込んだ影響だろう。


「そうなのですか?」


「ああ、これは凄い。」


「そうですか、よかったです。」


少し嬉しそうにそういうシュラウドに俺は借りていた木の剣を返す。

シュラウドはその木の剣を大事そうに受け取った。


「それで?これからどうするのかしら?今日はこの子が何ができるかを調べるって話だったけれど、それはもう終わっちゃったじゃない?」

いつの間にかいつもの調子を取り戻しているリリスがそう言った。

あまりに自然だったから気づかなかったけど、今までも素の状態と少しだけ差異があったんだよな?


それがどうして今ここで元の状態まで戻ったのだろうか?


リリスに対する疑問は尽きないが今回は置いておくことにしよう。


「そうだな。予定より特に今日は予定はないが、何かやりたいことでもあるか?」

魔石を使える、ということが分かったがあれはリアーゼに持たせている。

その為今日は使うことができない。


それにノアなんかにも使っていいか聞いておく必要がある。

その為今日はやることは残されていなかった。


「いいえ、特にはありません。」

シュラウドからの提案はない。


「私はもう少し魔物を倒しておきたいわね。」


「して、その心は?」


「最近気が付いたんだけど、私、能力値のわりに技術が伴ってない感じがしない?それを解消しておきたいのよ」

はぁ、確かに、今のリリスは少しステータスが高いだけの悪魔に成り下がっている節はある。


いや、以前も広く見ればそうだったのかもしれないが、あの時はそれでも圧倒できるだけのステータスがあったんだよなあ。

今普通にやりあったら俺でも普通に勝てそうな気がするし・・・


「わかった、そうしよう。特にほかにやることもないしな。」

俺はリリスの提案を呑む。


「じゃあじゃあタクミ、私が一人で戦うから、どこが悪かったのかとかちゃんと見ててね。」


「それはいいけど、俺も人にならったとかんじゃないからあんまり期待しないようにな。」


「わかったわ。期待してるね。」

何が分かったというのだろうか?リリスが楽し気な声でそう言う。


「っと、そういえば、リリスってクラス的に何のクラスについているんだ?」

ステータスは筋力値によっているから戦士系なんだろうけど、このゲームのクラス分岐はランダムなうえに多岐にわたりそうだし、聞いておいたほうがよさそうだ。


それによって育成方針も変わってくるだろうし。


「あ、私は一応踊り子だよ。ほら」

リリスが手足をフリフリさせながらこちらを見てくる。


「って踊り子!?」


「ええ、踊り子よ。」

ある意味予想外だ。

リリスのことだからてっきり狂戦士とか、そこら辺の脳筋職だと思っていた。


というか、この世界の踊り子ってどこから分岐してくるんだ?


「ちなみに初めのクラスは神官だよ。」

俺がその疑問を口にする前に、リリスが自分の元々のクラスの名前を口にする。


「神官!?リリスって一応悪魔だよな!!?」

悪魔なのに神官職ってどういうことだよ・・・と思わなくもなかったが、一応ゲームによってはダークプリーストとかいう敵も出てくるくらいだしな。

あんまり不思議なことでもないのかもしれない。


「あの、一応シュラウドのクラスは?」

こっちのほうも何か抱えてそうな気がする。と思い俺は先ほどから俺たちの会話を聞いているだけのシュラウドのほうに話を振ってみる。


「えっと?クラスとは?」


「ああ、ちょっと頭の中でステータスって呟いてみな?」


「えっと、こうでしょうか?」

シュラウドはそう言ったが、いつもはすぐに表示されるはずのステータスウィンドウは開かない。


もしかしてあれか?

シュラウドは非生物扱いのためステータスがないとか?


ならば鑑定ならできるか?と思って俺はシュラウドを注視する。


だがしかし同様に情報が出てこない。


「でないな。」


「はい。」

2人ともどこか少し残念そうな口調でそう言った。

まあ、出ないものは仕方ないな。


幸いシュラウドは生産職であるってことはわかっているんだし、あまり問題はなさそうだ。


「そろそろ行くとするか。」


気を取り直してリリスの特訓だ。

俺たちはもう少し強い魔物が出る場所はないかと街から離れた場所に移動することにした。









ということで街から小一時間くらい歩いたところにある山にやってきております。

どんな魔物が出るかは知らないが、俺の経験上山に出てくる魔物はそこそこ強い―――――ことが多いということで一番近くに見えたそれっぽい山に来た。


今、リリスはそこで鳥型の魔物と対峙している。


見た目は鶏の頭と蛇のしっぽの魔物、バジリスクみたいな感じだ。

あの爪には毒とかありそうな感じだ。

さらには全長は8メートルはありそうだ。


また、図体のわりに結構機敏な動きをしている。

能力値もかなり高そうだ。


リリスはそんな魔物相手に一人で戦っている。


彼女が神官職ということを聞いた後ではちょっと気が引けるのだが、これは彼女自身の要望だ。

1人で戦わせるほかない。


―――クエエエエ!!


バジリスク(暫定)が奇声を上げながらリリスに迫る。

そして自分の足が彼女に届く位置まで来たらその足を立ててリリスを引っかこうとした。


彼女はそれを見て慌てることなく姿勢を低くしてその攻撃を回避、懐に潜り込む。


槍、という武器の特性上、あまり接近しすぎるのはその強みをなくす行為になりかねないが、今回は相手のほうがリーチが長い。

この行動は正解だろう。


「貰ったわよ!!」


懐に潜り込むことに成功したリリスがそう言って槍を真上に突き出す。

その場所にはバジリスクの頭がある。


あれを貫いかれてしまってはひとたまりもないだろう。

それを自身でわかっているのだ。


そいつは身長の高さを利用して首を強引に高く上げる。

そのせいで、リリスの槍はその嘴を叩くことはできたが、貫通させることまではできない。


「それなら、こっちよ!!」


彼女はそのことを全く気にかける様子はなく、槍を素早く引き戻し次は体のほうに照準を合わせる。

だが、彼女の槍が再び突き出される前に、蛇のしっぽが彼女に食らおうとする。


「わっ、危ないわね。」

間一髪のところで回避することに成功してはいるみたいだが、体勢が大きく崩れてしまっている。

あれでは次に来るであろう鶏部分の攻撃を回避できるとは思えない。


「きゃっ、!!」

案の定、リリスは鶏の足蹴りによって吹き飛ばされてしまう。


バジリスクは巨体であり、それ故に攻撃力も高いのだろう。

リリスの体は遠くで見ているだけだった俺たちのほうまで飛ばされてくる。


「あはは、ちょっと失敗しちゃったみたいね。待ってて、すぐあれを倒してくるから。」

彼女はそう言って再びバジリスクに近づいていく。

その様子は先ほど、攻撃を受けたことなど全く意に介していないようだった。


いや、実際そこまでダメージを受けていないのだろう。


彼女の耐久性は弱体化した今でもそこまで衰えているようには見えない。


「それにしても、結構厄介よね。」

リリスは敵の間合いに入る少し手前で止まり、少し悩むような動作を見せる。

おそらく、このまま突進して先ほどと同じ結果になるかもしれないことを加味して作戦を立てているのだろう。


向こうも向こうでリリスの出方を伺うようにして近づいてこない。


二者のにらみ合いは少しの間続く。


「よし、これで行きましょう!!」

どうするかが決まったみたいだ。


何かを思いついたようにリリスがそう言い、槍を持っている手に力を込めた。


そして―――――――――それを一度大きく後ろに引き、投げた。


――――クエッ!?


突然、かなりの速度で飛んでくるものに、驚いたような声を上げるバジリスク。

リリスによって投擲されたその槍は一直線にバジリスクの方向へ飛んでいく。


その槍は見事に敵の体をとらえることに成功した。

バジリスクの胸部に深々と突き刺さる。


大けがを負ったことで動きが鈍ったところにリリスが一足で距離を詰める。

そしてその勢いのまま彼女は刺さっている槍を押し込んだ。


――――ギャア!!ギャア!!!


痛みに暴れまわるバジリスク。

だが、リリスはその手を緩めることはせずにそのまま槍を敵の体の中に埋めていく。

尻尾の蛇も必死に抵抗しようとするが、上の鶏の大暴れのせいで体が揺らされてうまく狙いを定めることができないでいる。


そしてその光景が少しの間続いた後―――――――ドスン!!

という音とともにその巨体が崩れ落ちた。

少し後にそれも灰に変わる。


リリスの勝利だ。


彼女は灰の中から魔石を拾いこっちのほうに走ってくる。


「ふぅ、タクミ、どうだった?」

全てやり切った。

そんな様子でリリスが俺に向かってそう聞いた。


「リリス様、すごかったです。」

シュラウドは彼女の戦いぶりに素直に称賛声を上げている。

そして俺はというと――――――



「うん、全然だめだな。」

容赦なくダメ出しをした。


「ええー、結構最後のやつとかうまくいったと思ったんだけど・・・具体的にはどこら辺がダメだったの?」


「うん、最後の槍投げな、あれ、当たったからよかったものの外れたらどうするつもりだったんだ?一気に武器なしで戦わなくちゃいけなくなるんだぞ?」

投擲自体は以前俺もオークに出くわした時にやったことがあるが、俺はこれをあまりいい攻撃であるとは思っていない。


というのも先ほど言った通りこれが外れてしまった場合ただ武器を失う結果になるだけだからだ。


こういうリスクがある行動はできるだけやらないほうがいい。

やるとしたら手詰まりになりそうな時だ。


「それもそうねぇ、そこら辺のことはあんまり考えていなかったわ。」


「それと、槍だからって突きしかやっちゃいけないってことはないんだぞ?」

ゴブリンの時、バジリスクの時、どちらのリリスは突くという攻撃しかしていない。


これはおそらく槍という武器の用途を考えると自然なことなのかもしれないが、槍の攻撃方法はそれだけではない。


「——?槍って突いて攻撃するものじゃないの?」


「いや、それは正しいんだが槍には突く以外に払ったりする攻撃があってだな。」

突きは所詮は点の攻撃でしかない。

その為、いくら鋭くても敵の技量次第によっては簡単に回避されてしまうのだ。


今はまだ何も問題ないかもしれないが、いつかは必要になってくる攻撃のため今のうちに覚えておいたほうがいい。

そのほうが、いざという時に役に立つだろう。


「加えて攻撃に対する危機感がなさすぎるな。」

これが一番危険かもしれない。

聖水の時もそうだったが、リリスは攻撃を受けてもそれほどダメージを受けるとは思っていない。

彼女の耐久性を考えるとその行動でも大概は勝てるのだろうが、その油断がいつか最悪の状況を招くであろうことは容易に想像できた。



「そう、アドバイスありがとね。じゃあ、続けましょうか。」


先の戦闘、勝利に終わったにもかかわらずダメ出しを食らったリリスは、そのことを全く気にする様子はなく次の戦闘に向かおうとする。


その姿勢は元の世界で言うところの優等生のようであった。




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