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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第3章 終わった機械と刻む歯車
69/293

69 原因と思い


その光は今の自分には少し、まぶしすぎるものだったのかもしれない。


それは自分に術を与えた。

もう、二度と動かすことのできないと思っていた体が動く。

先ほど必死に出そうと思っても出すことが出なかった声もちゃんと出すことができる。


失われたものもちゃんとついている。


夢みたいだった。

もう一度、―――――――もう一度?


もう一度―――――なんだ?


長い年月を経ていたため、自分が何だったのかはもう思い出せなかった。

何ができるのか、何をしていたのかということすら


そしてそいつの中には言い知れぬ焦りが生じた。


もし――――何もできなかったらまた棄てられる?


暗くなった部屋の中でシュラウドと名付けられた機械人形は自分にできることはないか必死に考えた。


気づいたら外が少し明るくなり始めていた。

――――――その時、自分を助けてくれた人が寝ている部屋のドアが勢いよく開け放たれた。

向けた視線の先にはひとりの人間、その人は部屋に入るや否や


「タクミーーー!!もう朝だぞーー!!」

大声を上げ始めた。


―――これだ!!


その人形は一切の迷いなくその人物を押さえつけ、口をふさいだ。



「おう、起きてきたか。少し待ってな。もう少しで出来上がるから。」


今日の予定を決めた俺は朝食をとろうとリリスと一緒に下の階の食堂に足を運んだ。

ノアとリアーゼはまだ部屋だ。

一応呼びかけはしてみたが出てこなかった。


俺が適当な席について待っていると、朝食が運ばれてくる。


「あれ?そんなやつ昨日いたっけな?」

今日はウェイトレスではなく、イアカム本人が運んでくるんだな。

彼は俺の隣に座っているシュラウドを差しながらそう言った。


「そういえば、お前って食事はするのか?」


「はい、一応、食べ物からエネルギーを作り出しておりますから。」


「あ、そうなんだ。なあ、こいつの分も作ってやってもらっていいか?」


「おう、いいぞ。どんどん食ってくれ」

イアカムはそういうと厨房のほうに小走りで入っていった。

今から作ってくるのだろう。


机の上を見ると朝食がもうすでに配置されている。


今日のメニューは目玉焼きとベーコンをパンで挟んだものだ。

朝ということもあって軽めのものにしてくれているのだろう。


「タクミ様はお食べにならないのでしょうか?」

今だそれに手を付けない俺にシュラウドはそう聞いてくる。


「ん?まあ、お前のが来てから一緒に食べたほうがいいんじゃないかと思ってな?お前だってみんなが食べ終わった後、一人で食べるのは嫌だろう?」」


「そうですね。お気遣いありがとうございます。」

まあ、その場合先に食べ終わったであろうリリスが一人俺たちの食事を見る羽目になりそうだが、それはそれとして置いておくとしよう。

先に食べているこいつが悪いのだ。


少しするとイアカムがシュラウドの分の食事を運んできた。


「おう、待たせちまったか?」


「いや、それほど・・・・っと、昨日の人、何かわかりましたか?」

こうやって自ら運んできてくれたのだ。

多分、何かの情報はつかんでいるはずだ。


そう思い俺はついでとばかりに聞いてみる。


「おっと、そうだった忘れてたな。昨日のやつなんだけどな、他の料理店から雇われた奴みたいだ。」


「ほかの料理店?」


「ああそうだ。ここ最近、ほかの店の評判を落とさせてまわる奴らがいるっていう話だし、それが昨日俺のところに来たってわけだな。」


へぇ、今この街にはそんな奴がいるのか。

目的としてはまあ考えるまでもないだろうが、どの世界にもこんなことをする奴はいるものだな。


俺はシュラウドの食事が運ばれてきたことで、目の前にあった俺の分のパンに手を伸ばそうとする――――が、俺の手は空を切った。


あれ?

確かにさっきここに置いていたと思ったんだけどな・・・?

どこへ行ったのだろうか?


俺は周りを注意深く観察する。


この机には先ほどから誰も近づいていない。

ということは貧乏人がプレイヤーから食べ物をこっそり盗む、といったイベントが発生したわけではないはず。


他に何か可能性はないか?

そう思い俺は仲間たちのほうを見る。


シュラウドは先ほどイアカムが持ってきたものを手にしてそれを口に運んでいる。


リリスも同様にもう半分ほどなくなってしまったそれを口に――――――?


「なあリリス、それ、どこにあったやつだ?」

おかしい、どうしてまだ彼女の食事が続いているんだ?

そう思い優しく俺はリリスに問いかけた。


「え?これ?タクミが食べなかったから、もういらないと思っていたのだけれど・・・もしかして食べるんだった?」

こいつはさっきの話を全く聞いていなかったらしい。

そういえば、昨日騒ぎがあった時もこいつだけは周りを全く気にせずに食事を続けていたな。


ここに来たのもリリスが提案したからだし・・・


「いや、食べてもらっても構わないけど、せめて一声かけてくれよな?」


「えぇ、ごめんなさいね。今度からはそうさせてもらうわ。」


リリスは食べる、ということがとことん好きになってしまっているようだ。


初めてであったときはそもそも食事すらしていなかったのだが、ここ一月で本当に変わったな。

そう思いながら俺は二人の食事を眺める。


「あの、よかったらこれをどうぞ・・・」

途中シュラウドが食べかけの目玉焼きサンドを俺に渡そうとしてきたが、それは拒否しておいた。


「いや、それはお前が全部食べてくれ。ずっと食べてなくて腹も減っているだろうしな。」

ずっと動くことのなかったシュラウドにとっておそらくこれはかなり久しぶりの食事になることだろう。

そんな大事なイベントに気を遣わせるのはどうかと思ったからだ。


「そうですか。わかりました。」


「えっと、タクミ?食べかけだけど・・・食べる?」

それを見たリリスが少しだけ申し訳なさそうに自分の手に持っているそれを差し出してくる。


それはもう既に四分の一程度しか残っていない。


「いや、それもいい。」

それだけの量を食べても逆に腹が減るだけだろうし、それも拒否だ。


「そう・・・ごめんなさいね。」

リリスは差し出したものを引っ込めそのまま口に運んだ。

いい食べっぷりだ。


「それにしても意外ですね。タクミ様はてっきり昨日のように烈火のごとく怒り狂うと思ったのですが、違うのですね。」

シュラウドは食事の際の一呼吸、という風にそう声を上げた。

昨日こいつはこの場にいなかったはずだが、上の階にいたにもかかわらず俺たちのやり取りを認識できていたのだろうか?


まあ、あの時周りは静まり返っていたし音が響いて上まで聞こえても不思議ではないのか?


「いや、そんなことはしないって。あれはあくまであの男が食べ物を粗末にしたのが悪かっただけで、別に俺の食べ物をリリスが食べたって不満はないさ。」


俺のものをとられたとしても、それがおいしく食べられているならそれはそれでいいのでは?

俺としてはそう思う。


「そうなのですね。」

シュラウドは食事を再開した。


彼――彼女?は口の中にものを入れてから喋る、ということはしないみたいで非常に行儀がよい。

ノアなんかにも見習ってほしいくらいだ。





朝食ということもあってそれを食べ終わるのには時間がかからない。

リリスもシュラウドも少ししたらすぐに完食した。


「それで?タクミは今日は何をするのかしら?」


「あ、リリスにはいってなかったか?今日俺はシュラウドの性能チェックをしようと思っているんだけど・・・」


「そうなのね、私に手伝えることとか、あるかしら?」


「いや、今日のところは特に何もないかな?リリスはノアたちと一緒に街を見て回ったらどうだ?」

別に人数いてもやることは変わらない――というか結局シュラウドさえいれば成り立つことだしな。


「そう、じゃあそうさせてもらうわ。」


そのやり取りだけをして、俺たちは席を立ち部屋に戻る。

戻った後にやることは今日の準備だ。




そして俺は準備を終えシュラウドとともに部屋を出た。


「じゃあ、行ってくるな。帰りが遅くなることはないだろうけど、俺が帰らなかったらお前らだけで食事をとっておいてくれ。」

まだ部屋の中にいるリリスの方に手を振り、俺は宿を後にした。























「あの、リリス?どうしてついてきてるんだ?」

そしてその数分後、リリスが俺たちに合流してついてくる。


「だってぇ、2人が私をのけ者にするんだもの――!!」

リリスはむくれたようにそう言った。

いつもの毅然とした態度ではなく、少し幼い口調のリリスだ。


彼女は内面がそのまま態度に大きな変化を表すから、分かりやすい。


分かりやすく―――いじけているのだ。


「何があったんだよ・・・・いや、あんまり聞かないほうがいいな。じゃあリリスは今日は俺たちのほうについてくるってことでいいのか?」


「うん。そうさせてもらうね。」


明らかに精神的ダメージを受けたリリスを引き連れ、俺たちは朝の街を歩いていた。




Pt評価ありがとうございます。

作者は感涙を流す思いです。

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