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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第3章 終わった機械と刻む歯車
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62 明日の予定と明後日は旅立ち

「でもでも、タクミはやっぱりボクたちのものだからね!!」


ノアがそう主張する相手はやはりというべきかリリスだ。


「そうは言うけど、私たちこの前勝ったじゃない?だからタクミは私のものだと思うのよ。」

リリスもそう言って引く気はないようだ。

しかし、そもそも俺はお前らどちらかのものになったつもりはない。


「あのなあ、当人を放っておいてそういう話し合いを始めるのはどうかと思うぞ?」

その為俺はその会話に割って入る。

このままこいつらに話を続けさせてもどうせ永遠と続くだけだろう。


ここらで一つ、落としどころをつけておいたほうがいい。


「じゃあタクミはどうするつもりなの!!?やっぱりボクと一緒に冒険したいよね!!?」


「いいえ、タクミは絶対私と一緒にここで暮らしたいはずだわ。」


お前らは何を根拠にそう言い切れるのだろうか?


「いや、思うんだけどさ、リリスが俺たちのパーティに入れば全部解決するんじゃないか?」

これならノアと冒険にも行けるし、リリスと暮らすこともできる。

文句はないはずだ。

「でもタクミ、あなたは・・・」

リリスが何かを言いかけているが、それに先回りするように俺は言う。


「それにさリリス、俺たちここにずっといるのは危険だと思うんだ。だからさ、一緒に来ないか?」

またあいつらみたいなやつが討伐しに来るかもしれない。

だからここにとどまり続けるのは結構危険だとおもう。その旨を俺はリリスに伝える。


「まあ、それはそうね。でも、いいのかしら?」


いいのか?というのは彼女のパーティ入りに対してほかのものがどう思うのか?ということだろう。


俺はノアとリアーゼのほうを見る。


「私はどっちでも~、お兄ちゃんが返ってくるならどっちでもいいよ~。」

1人お菓子を食べながら軽い声を返すリアーゼ。


「ボクも、タクミと一緒に冒険できるんなら、それでもいいよ。」

ノアもいいみたいだ。

彼女が一番反発すると思ったのだが、そうでもなかったらしい。


「だってさリリス、もし、お前さえよければなんだけどさ、俺のパーティに入らないか?」

そう言って俺は彼女に手を伸ばす。


リリスはその手を、一も二もなくとってくれた。


「本当に、いいのね?」


確認するように、リリスはそう言った。







「さて、まずはこの街を出たいと思う。」


リリスが俺たちと行動を共にすることが決まった。

それならば、まずはこの街から出ていくべきである。


確かに、エリックやノアなど、一部の者たちはリリスのことを認めてくれたが、ほかの冒険者すべてがそうだというわけではない。

それに加えて彼女や俺の姿はもう知れ渡ってしまっているだろう。


そんな状態で冒険者ギルドに行った日には、周りの視線を気にせずにはいられないだろう。

いや、俺だけならそれでもいいのだが、彼女たちにもそれを背負わせるのもどうかと思う。


「うん、いいと思うよ。でもどこに行くか決まってるの?」


「それは・・・・・リアーゼ、どこかいいところはないか?」


「えーっと、特には浮かばないかなぁ・・・」


はい、初めから躓きました。


思えば、俺はこの世界に来てからそこまで月日が経ってない。

それに、この世界には地図がないのだ。俺が地理を把握しているはずがないし、どの街がいいとか知っているはずもない。


「えーっと、リリスはどこか・・・」

木の中でずっと暮らしてきたリリスが、そんなことを知っているはずはないが一応という感じに聞いてみる。

もしかしたら、どこかいいところを知っているかもしれないしな。


「あ、それならちょっとだけ遠いけど、ベイルブレアっていう街はどうかしら?」


お?意外にもいいところを知っているみたいだ。


「して、その理由は?」


「あそこ、ご飯がおいしいって聞いたことがあるのよ。」

リリスはすっかり食べ物に夢中だな。

この前初めて人間が食べるものを食べたーとか言っていたような気がするような・・・しないような?


「ああ、それはいいな。食べ物がおいしい、それは重要な要素だ。別に意見がないなら今度はそこに行ってみようと思うが、二人はどうだ?」


「ボクは別にどこでもー」

「右に同じくー」


いいみたいだ。

これに関してもノアなんかは反対意見のひとつでも出すと思ったのだが、何か考えがあるのだろうか?

てっきり彼女のことだから、「そんなところよりもっとダンジョンとかあるところにいこう」とか言い出すかと思っていた。


「じゃあ決まったなら早いに越したことはないな。みんな、準備期間はどのくらいいる?」


「ボクは別に今日でも明日でもいいよ。いつでも出れるっていうことだね。」


「私は明日一日くらいは欲しいです。長旅になりそうですから、ちょっと準備をしようかと」


「私もいつでもいいわよ。そもそも、持っていくものなんてないしね。」

準備が必要なのはリアーゼだけか。

「なら出発は明後日だな。各々、出発に備えて準備をしておくように!!」


俺はそう締めくくり、話を終えたのだった。











「そういえば、勢いで一緒に来ることを誘ってみたんだけどさ、リリスってこの場を離れても大丈夫なのか?」


話がひと段落してふと思ったことを聞いてみる。

彼女は一応でもなくこのダンジョンの第二階層目のボスキャラに位置する存在だ。


そんな彼女をつれだしても大丈夫なのだろうか?

それが気になった。


「ええ、まったく問題はないわよ。私がいないと『不安定』の特性が発揮されなくなるくらいね。」


不安定の性質といえば俺を洗脳しかけていたあれだろう。

リリスを連れ出したらあれが作用しなくなると言うだけなら別に問題ないのだろうな。


「そうか、ちなみに聖水のほうはどうなった?もう大丈夫なのか?」

結局戦闘中には聖水の効果がなくなる気配はなかったのだが、今はあれから3日ほどたっているらしい。

その効果はもう消えているだろう。


「ああ、そのことなのだけれど、あの聖水は悪魔などの力そのものを消失させるものだったから、効果自体はあの時点で終わっていたのよ。」


「というと?」


「私の力が元に戻るってことはないってことね。」


何でもないようなことのように彼女は言うが、それって結構大変なことじゃないのか?

リリスの能力はいまだかなり高いままだが、それでも元の彼女には遠く及ばない。その状態で今後を過ごさなければならないのだから、その苦労は俺には計り知れない。


なるほど、『白の翼』が聖水をかけただけで勝利を確信していたのも頷ける。

凄まじい効果だ。


「まあ、そのくらいはどうってことはないわよ。あんまり心配しなくていいわ。」


顔にでも出ていたのだろうか?

俺の心の中を読み取ったようにリリスがそう言った。


「そうだな。なってしまったことをどうこう言っても仕方ないよな。」


これはあれだな。

強かった敵キャラが味方になったとたんに弱くなる現象


俺は心の中でそう思いながらリリスのほうを見るのだった。

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