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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第2章 不安な悪魔と曲がらない考え
58/293

58 始まりと今

初めて俺がゲームに触れたのは小学2年生の時だった。


父がゲームが好きな人間だった。


俺の父は平日は普通に会社で働いていたが、休日になると終日ゲームをし続ける。

そんな人だった。


母はいつも父を見て呆れたようにため息をついたものだ。


そしてある日のことだった。


「あれ?これどうやるんだ?」

休日、いつものようにテレビの前に座る父がそんな声を上げた。


「どうしたの?お父さん」


いつも黙々と画面に向かう父が声を上げたのが珍しくて、俺は悩むようなしぐさをする父に話しかけた。


「あぁ、いや、ここの進み方が分からなくてな。」

そう言って画面のほうを指さす父、そこに映し出されたキャラクターは誰も操作していない為止まってしまっている。


「うーん、ちょっとだけやらせてもらってもいい?」


「おお、いいぞ。お父さんを助けてくれ。」

俺は手渡されたゲームのコントローラーを握り、キャラクターを操作する。


初めは操作確認、そしてあたりの探索、情報収集、色々やってみたが結局は進めることができない。

でも少しずつ分かってきた・・・


「ご飯できたわよー。ゲームをやめて早く食べなさーい。」


そこで母から夕食の合図が入る。


「もうそんな時間か。よし!!今日のゲームはここまでだな。続きはまた今度だ!!」


父はゲームを中断しテレビの電源を切る。

そしてすぐに夕食を食べに行ってしまった。


俺もその時、父についていくように夕食に向かった。

あぁ、もう少しで何とかなりそうな気がしたのに・・・・




そして次の日、その日は月曜日―――平日だ。

平日の父はゲームをしない。


その為、父が再びゲームを起動するのは5日後だ。

その間、このもどかしい気持ちのまま過ごすのは、小学二年であった俺にはできなかった。


俺はその日の放課後、学校からいち早く帰宅し、そのゲームを起動した。


少しの後、タイトル画面になり、そこでLORDGAMEを選択する。


するとそこには昨日のままの画面が映し出される。


よし!!


昨日父は「お父さんを助けてくれ。」といっていた。

それなら、あと5日立つ前に、気づかれないようにここだけでも進んでおいてやろう。


俺はコントローラーを手にそう思ったのだった。



その日から、俺は学校が終わったら早く家に帰り父が家に帰ってくる時間帯まで試行錯誤を続ける。

そしてその日に進めることができなかったら、学校の授業中の時間を使ってどうすればいいのか考える。


それを繰り返した。




そしてついに―――――


「お?おお!?これはまさか―――――!!?」

俺はそこの攻略に成功した。


大人である父が難しい、進めない。そう言ったここは、子供である俺にはなおさら難しく思えたが、俺はやり遂げたのだ。


―――――ガチャ・・・


そこで玄関の扉が開く音がする。

見てみれば、もう父が帰ってくる時間帯になっていた。


あまりに真剣にやっていたものだったから、あまりにも嬉しかったものだから、俺はそのことに気づいていなかった。


慌ててゲーム機の電源を切ろうとするが、俺はまだ保存をしていないことを思い出す。


部屋の扉が開く。


「ただいまー」


「あ、お帰りなさい。」

父が部屋の中に入ってくる。


「ん?お前それ・・・・」

父は俺がプレイしているゲーム画面を、少しの間確認するように見つめた。

俺は何も言わなかった。


俺の心の中には怒られるかもという不安があったからだ。


「おお!!?まさか進めたのか!?」


俺の予想は外れてしまう。

父は少し驚いたような声でそう言った。

「う、うん!!俺、頑張ったよ。」

反射的にそう答える。


「そうか!!そこ、ネットでも結構難しいって言われていたのに、お前やったんだな!!」


そう言われて、俺は初めて自分のやったことを実感することができた。


そうだ。俺はやったのだ。


もう誰も操作することのなく、止まってしまっているゲーム画面をまじまじと見つめ、俺は感傷にひたる。

俺の心はその時、言い知れぬ達成感で満たされていた。


もう、父の驚いた顔や、彼からの称賛の声など、俺の中には残っていなかった。

残っていたのはやり遂げたという実感だけ。



その時初めて、俺はゲームをするということの楽しさを知ったのだった。

その後の俺がどっぷりとゲームにはまるようになったことはもう言うまでもないだろう。












ああ、そうだよ。


これは壁だ。

いつも俺の目の前に立ちふさがる。越えるべき、越えられる障害なんだ。


目の前に立つ『白の翼』とノアを見ながら俺はそう心の中で言い聞かせる。


どんなに大きな障害でも、ゲームで越えられないものはない。

例え負けイベントだって、やりようによっては越えることができる。


それなら――――この場も例外ではない。

要はやりようなのだ。


「リリス、勝つぞ。」


「えぇ、当り前よ。」

最低限の言葉だけを俺たちは交わす。

お互いの気持ちも十分だ。



「は、手負いの悪魔が一匹増えたところで、我らの勝利は変わりない。」

俺たちの毅然とした態度が気に入らなかったのだろうか?

『白の翼』の一人が俺たちのほうに突進してくる。


俺は一歩前に出て剣を前に構え迎撃の体勢をとる。


そしてそいつは俺が射程に入ると同時に、手に持っている武器を横に振った。

ちなみに武器は鉈のような何かだ。


俺はその鉈をまっすぐ受け止め、そしてそのまま逆側に少しだけ吹き飛ばされる。


「うわぁ!!」


当然、吹き飛ばされた先にはノアの火の玉が待ち構えており、俺はその火の玉が起こす爆発に巻き込まれる。


俺は爆発の勢いを利用して先ほどいた位置に戻る。

そして大きく横に剣を振った。


「ふん、そんな攻撃、当たるわけがないだろう?」

そいつは俺の攻撃を大きく後ろに飛ぶことで回避する。


結果的に、俺が爆発のダメージを受け、先ほどの状況に戻る。


はたから見たら、そう見えるだろう。

だが、


「ふむ、あの火の玉は近づきすぎると爆発を巻き起こすのか・・・」


1つだけ、相手の心に意識せざるを得ない情報をつかませることに成功する。

2度も攻撃を受けたんだ。さすがに理解したようだ。


今現在、この場には先ほどの攻撃によって火の玉がちりばめられている。

それは俺の近くほど多く・・・・


しかし、明確にここには火の玉がない。

そうわかる場所がある。


それは俺とノアを直線で結んだ線上だ。

そこにあった火の玉は先ほど俺が捨て身の攻撃ですべて踏み抜いたため存在しない。


要するに、部屋の中ではあっても袋小路とほぼ何も変わっていないのだ。


それは相手からしても同じこと。

相手もこのルートを通るしかない。


結果として何が起こるか。

そんなこと、考えなくてもわかるだろう。


「よし、俺が先に行く。」


『白の翼』は一人ずつ俺たちのほうに迫る形になる。

これなら、俺たちにだって勝機はある。


1対100で勝つ可能性は皆無でも、1対1を100回なら勝てる可能性も出てくる。


多対一で戦う時のある意味基本ともいえることだ。


「リリス、一人ならいけそうか?」


「愚問ね。さすがにあれくらいなら何とかなるわ。」

俺は迫りくる敵を前に、後ろに控えていたリリスと立ち位置を後退した。

彼らは先ほど、5人がかりでリリス1人を抑えていたのだ。


仮にリリスが弱体化していたとしても1人では抑えきれるはずはない。


「くっ!?厄介な・・・」

結果、そいつはリリスに押される羽目になる。


人が後ろに仕えてしまっているため、後ろに引くことも難しい。


「さて、さっきはよくもやってくれたわね!!」

リリスの拳が、そいつの体に直撃する。

それは弱体化されているといっても、壁を砕くほどの一撃なのだ。


効かないはずはない。


「ぐはぁ!!・・・くっ・・」


腹部を抑えうずくまる男。

それを見た『白の翼』は怒りで顔をゆがませた。


「悪魔風情が!!我らの同胞になんてことをしてくれる!!」


さて、戦いはここからが本番だな。


俺は手の中にある剣を強く握りしめた。




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