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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第2章 不安な悪魔と曲がらない考え
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52 朝の光と昼の陰

朝、俺は他の人たちが起きるより一足先に起床した。


この場には時計などの類はないが、体感的には午前5時くらいだろう。


今日はいつものようにノアに起こされるようなことはなかった。

彼女は珍しく、今なお眠っている。

昨日の言い争いで疲れたのだろうか?


とにかく今、俺以外に起きているものはいない。


俺はゆっくりと体を起こし、朝の散歩に出掛ける。


これは最近の日課だ。


ちなみにスライム達がこうやって歩いている俺に襲いかかるようなことはない。

そこはリリスが言い聞かせてくれたらしい。


おかげで俺は今こうしてゆっくりとダンジョン内を歩き回ることができる。


一応、目的もなく歩くのは忍びないのでこの階層の構造の把握も兼ねていたりする。


「お、おはよう。」


なんとなく、俺はその時すれ違うスライムに向かって、挨拶をしてみた。


スライムは俺の言葉を聞き、体を震わせて答えた。


当然、相手は魔物であり、日本語など理解するはずもないのだが、俺にはそれが挨拶のようなものに覚えた。


なんだ、意外とかわいいところもあるじゃないか。

そう思った俺は、その日、出会ったスライム全てに挨拶をしながら日課の散歩を終えるのだった。





「ただいま。」


「おかえりタクミ。」

「あ、帰ったのね。お帰りなさい。」

「おかえりです。」


部屋に戻ると、出る前は寝ていた人たちはもうすでに目を覚ましていた。


そしてテーブルの上には、朝食と思しきものが配置されている。


「これは?」

この部屋に住むようになってから、料理は俺が作っていた為、一応聞いてみる。


「ああ、これはそこにいる自称あなたのパートナーが作ったものよ。」

「うっ、バラさなくても良いのに、、、」


ノアが俺から目を背けるようにする。


俺は彼女が作ったという料理に目を落としてみる。

それはまあ、ある意味見慣れた黒色の多い物体だった。

どうやらノアには、料理下手属性が付いているらしい。

まあでも、謎物質と変容しない、ただ焦げただけならかわいい方だろう。


「全くお姉ちゃんったら、私が手伝うって言ったのに聞かないんだよ?」


「だってー、、、」


ふて腐れたような声を出すノア。

俺はそんな彼女の様子なんて全くも無視して、その料理を躊躇いなく口に放り込んだ。


ザク、、ザク、、ガリ、


ふむ、苦い。

そしてこれの原型は卵焼きかな?

確か卵くらいならまだ残ってたと思うし、多分そうだろう。


「あ、、」

それを食べる俺をみたノアの口から、そんな音が漏れる。


「どうした?」


「あ、いや、食べてくれるんだなって。」


「当たり前だろう?せっかく作ったんだ。捨てたりしたら勿体無い。」


「あ、うん、そうだね。ありがと、、」

ノアは俺がこれを食べたことが、本当に驚きだったようだ。


彼女はそれ以上は何も言わなくなる。


「それもそうね。確かに、作り手に失礼だわ。」

リリスも俺と同じように、卵焼き(暫定)を口に運んだ。


「そうだよ!!お姉ちゃんがあんなに頑張って作ったんだもん!不味いはずがないよね」

続いてリアーゼも。

それもそれをみて二口目を口にする。



ーーーーーーガリッ


おおよそ卵焼きから出たとは思えない。そんな咀嚼音がなる。


そして、


「ふふ、苦いわね。」


「ああ、そうだな。」


「でも、これはこれで美味しいとは思わない?」


各々が感想を言い合い、笑いあった。


その日の食卓は、とても暖かいものに包まれていた。







「ーー、ーーー。」

「ーー」

「ーーーーーーーーーーーー、ーーー。」


朝食が終わり数時間くらいが立ち、そろそろ昼になろうかという時間になると、俺たちの耳に、何か話し声のようなものが聞こえて来た。



あれ?確かここ、進入禁止のはずだよな?

気のせいか?


俺はリリスの方を見る。


そして一瞬で、背筋が凍った。


彼女は怒っていた。

あの時、初めて俺たちがあった時のように。


「なあタクミ、奴ら、もうここには来ないと、そう言ったよな?」

彼女は俺の視線に気づいたのだろう。そう聞いてくる。

その声音にはいつものような優しさは感じられなかった。


「う、うん。確かに言ったし、その条件自体は俺が考えたものだからちゃんと覚えている。」


「なら何故、奴らは今、この階層に足を踏み入れているのだ?」


「それはーーーーーー」


分からない。

俺もリリス同様、基本的にはこの中にいる。

そのため外で何が起こっていたかなど、知る由はないのだ。


だが、ここにはちょうど、昨日まで外で暮らしていた人がいる。


「ーーノア、何か知らないか?」

聞こえてくる声は、1つや2つではない。

明らかに大人数のものだ。それだけの人数での動きだ。

何も前兆がないはずはない。



「えっと、確か、昨日冒険者達に対してギルドに来るようにっていう収集がかかってて。多分そこで何かあったんだと思う。」


冒険者?収集?


ーーー!!


まさかあいつか!?

そうだ。それくらいしか思いつかない。


声はどんどん大きくなっていく。


次第に会話の内容が聞き取れるようになって来る。


そして、


「出てこい悪魔め!!この僕が、貴様を打ち滅ぼしに来てやったぞ!!」


聞き覚えのある声が近くで張り上げられた。

もう彼らは、この木の前まで迫っているのだろう。


「あいつら、、約束を破ったからにはもう許さん。八つ裂きにしてやる。」


リリスが怒りを口にしながら、ゆっくりと外へと出ていく。

俺も彼女の後を追い、少し遅れて木の外へ。



そしてそこで見たのは、数多くの冒険者、そして、


この問題を引き起こしたそもそもの元凶であろう人物、エリックの姿があった。

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