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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第2章 不安な悪魔と曲がらない考え
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50 自己定義と争い

「あら?タクミ、お友達?」

ノアをジロジロ見ながらリリスがそう問いかけてくる。


ノア達も2週間前、あの場所にいたのだから知らないはずはないと思っていたのだが、リリスはどうでもいいことは覚えないたちなのだろうか?


「ああ、そんな所だ、ちょっと前まで一緒にパーティを組んでいた仲間だな。」


「あら、そうだったの。ごめんなさいね、挨拶もなしに、、」


ちょくちょく思うのだが、リリスは俺のことを子供扱いするのはやめて欲しい。


「そんな事はいいからタクミを返して!!」

ノアはリリスの言葉を無視して、自分の要求だけを端的に伝える。


「ーーー?どうして?」


あたりの雰囲気が、少しだけ変わった。

これはあのリリスになる前兆だ。


「どうしてって、タクミはボク達の仲間なの!!」


「あら?でも彼は今は私のものでしょう?えっと、エリックとか言ったかしら?彼の仲間からちゃんと譲り受けたわよ。」


「何で赤の他人がそんなことするのさ!!とにかく、タクミは僕が連れて帰るからね。」


ノアが俺の腕を掴み、自分の方へと引き寄せる。


「ダメよ。この人は私のもの、それは譲れないわ。」

そして逆の腕をリリスが。


「お兄ちゃん、お兄ちゃんも帰りたいよね?」

ノアに加勢する様にリアーゼが、それぞれ俺の体を引っ張る。


「いだだだだだだ、、、」


ノア、リアーゼの方はまだいい。

だが、リリスの力で引っ張られている俺の体は悲鳴をあげる。


いや、よく見てみるとノア達もリリスの力に対抗するくらいには力が入っている。


このままでは、俺の所有権うんぬんが解決する前に壊れる!?


身の危険を感じた俺は両側から引っ張る彼女達を説得しようと試みる。


「ちょっと、お前ら、一回、ちょっとでいいから離してくれないか?さっきから痛いんだが、、」


「ごめんだけど、無理だよタクミ。ここで離しちゃったら持っていかれちゃう。」


「そうね。こちらも同じく無理そうだわ。」


「私もですー」


だが、俺の言葉は聞き入れられる様子はない。


いや、むしろ引っ張る力が強くなっている気がする。


「ギブ、ギブだから!!」

叫んでみるが、彼女達には聞こえていない様だ。


俺の悲痛な叫びは、あたりの人間の注意を引くだけだった。


『ん?なんだあいつら、1人の男を3人が取り合っているのか?』

『うわ、本当だ。くっそ、羨ましいなあ』

『チッ、ああいう奴がいるから俺はーー』


くそ、羨ましいとか言ってたやつには即座に代わってやりたい気分だ。

戦士系の二次職にまでなっても、この状況で俺が出来そうなことはない。


「分かった!!わかったから一旦落ち着いてくれ」


「落ち着いてるから、だから早く帰るよタクミ!!」


「えぇ、早く帰りましょう。夕飯を作らなきゃでしょ?」


「むー、お兄ちゃんこそ落ち着くの。」


「帰る!!帰るから、だからこの手を離してくれーー!!」


その時、この異世界の青空に俺の叫びが木霊した。










「さて、まずはお互い、自己紹介でもしてくれ。」

ダンジョンの第二階層、リリスの部屋。


俺たち4人は、取り敢えずこの場所に来るということで一度落ち着くことにした。


リリスとしてはここが目的地であったし、ノアも一応は俺と離れることもない。


それに俺たちは基本的に宿をとっているため、帰るといっても行くところを探さなければならない。


俺らの折り合いを上手くつけるために俺が選んだ場所がここだった。


この提案をした瞬間、リリスは喜んで力を緩めたし、ノアも渋々ながらも付いてきてくれた。


見事なファインプレーで、俺の体は救われたと言えるだろう。


「じゃあボクから、、、僕の名前はエイリノア、タクミのパートナーだよ。」


「私はフェプリアーゼと言います。2人の妹です。」


「そう、じゃあ私ね。私はリリス、タクミのお母さんよ。」



ふーむ成る程成る程、、、、



「ってアホか!!」


思わず叫んでしまう。


パートナー、妹、母、どこからその設定が湧いて出たんだよ。

そんな気持ちを込めた叫びだ。


パートナーは、、、まあ、初めの仲間だし言えなくもないか。


妹、、、リアーゼはいつも俺たちのことを兄、姉と慕ってくれてるな。


そして母、、、


「正直リリスのが一番突っ込みたいんだが。」


「えぇー、いいじゃない。私、悪霊やらスライムばっかり生み出していたから、タクミみたいな子供が欲しかったのよ。」


「だからって人を勝手に我が子扱いする!?」


「えぇ、するわ。」


あぁ、これは意見を曲げるつもりがないときのやつだ。

しかもこれ、一番タチが悪いのがリリスの意見に対して2人が反応してくれないことだ。




はあ、、、


俺はため息をついて席を立つ。


「あれ?どこに行くの?」

どこに行くかだって?そんなの決まっているだろう。


「台所だよ。」


俺はその場から早急に離脱し、夕飯の支度でもして時間を潰すことにした。
















「さて、今日の夕飯はスキヤキです!!」

俺は鍋のセッティングをしながら、俺のことについて口論を続ける2人に向かってそう宣言した。


ちなみに、リアーゼはあちらでせっせと食材を準備している。

不毛な争いに参加せずに手伝いをしてくれる、良い妹を持ったものだ。


「スキヤキ?って何かしら?」


「ボクも聞かない料理だね。」


やっぱりさ、食べ物って偉大だと思うんだよな。だってあの争いを、姿をあらわすだけで止めてくれるのだから。


2人の反応を見ながら、俺は心の中でそう呟く。


「スキヤキって言うのは1つの浅い鍋に様々な食材を入れてみんなでつつき合う。そんな料理だ。」

そして同じ鍋のものをつつけば、親睦が深まり争いが止む、、、はず。


この世界は驚いたことに、食材の種類は元いた世界とほとんど変わらない。


流石に調味料などは全てあるわけではないが、それでもスキヤキを作るには十分だ。


今日、何となく作ろうと思って買い物に行ったんだが、こんな形で役に立つとは。


俺たちはテキパキと夕飯の用意をする。

それにしても、いいタイミングでノアが来てくれたな。

テーブル用のコンロが無い為、当初の予定としては力技でどうにかするつもりだったのだが、そんな事をしなくて済みそうだ。


「ノア、火の玉を召喚してくれ。」


「?分かったよ。」


ノアは言われた通り、火の玉を召喚する。

掌サイズの可愛いやつだ。


「そしてそれをここに配置して、待機させるんだ。」


俺は台所に置いてあった鉄板の上を指差す。

彼女は火の玉に指示を出し、俺が行った通りの行動をとる。


やっぱり、ここが魔法と召喚との差別点だよなー


そう思いながら俺は鉄板の上に止まっている火の玉の上に、鍋を置いた。


そして牛脂を溶かして鍋に馴染ませる。

ネギを入れ、牛肉の表面を軽く炒め色をつける。


そしてその後、先程作っておいた割下を投入。


ちなみに醤油と砂糖と酒のオーソドックスなやつだ。


ノアの火の玉を使うのは、一見危険そうに見えるが、実際は指示なしには爆発したりしないので結構安全だ。




そして置かれた鍋の中に、リアーゼが食材を次々に入れていく。

俺はそこで一度鍋の蓋を閉める。


、、、グツ、グツ、


食材が煮える音が聞こえてくる。


なぜかこの時ばかりは、リリスとノアの言い争いの声も止んでいた。








そろそろいいか?


俺はゆっくりと蓋を開ける。


すると中からはこれぞスキヤキ、という物が視界に入って来た。


俺は3人と自分にそれぞれ、取り皿を渡す。

そしてーーー


「よし、出来たぞ。みんな、遠慮せずにどんどん食べるといい。」



俺の言葉と共に、戦争が始まった。


みなさんは知らなかったり忘れていたりすると思いますが、この話はほのぼの系異世界のファンタジーだったはずなんですよ。


50話とキリもいいことですし、一度それを思い出した方が良いんじゃないかな?


まぁ、シリアス多めなのは認めます。



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また、ブックマークしてくださった方々は、ありがとうございます。


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