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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第2章 不安な悪魔と曲がらない考え
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44 邪悪より出る者とご褒美

「やった!!崩れたぞ!!」


俺が全開戦闘を決意した瞬間、そんな喜びの声が聞こえてくる。


誰の声かは考えるまでもなく、一心不乱に木の幹を叩き続けていた男の声だ。


俺は反射的にそちらの方に目をやる。


すると、彼が言った通り、木の幹にひび割れが出来ており、そこから中の様子が分かりそうになっていた。


「みんな、俺たちはやったぞ!!俺たちは勝ったんだ!!」


「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」


そこかしこから、歓声が聞こえてくる。

俺たちの勝利?何を言っているのだ?敗北の間違いだろう?


まだ、まだ間に合う。

まだあの中身が飛び出してきたりはしていない。


「お前ら邪魔だ!!」

全力一閃、俺の一撃がエリックを襲う。


それは先程の様な生ぬるいものでは無い。《斬鉄》と《純闘気》を両方乗せた一撃だ。


「な!?貴様まだ!!」

エリックは俺の剣を受け流そうとレイピアを構える。


だが、その程度の防御、今の俺の前にはあってない様なものだ。

俺の一撃がエリックのレイピアに触れ、そしてそのまま抵抗を許さずに切り飛ばした。


「なーーー!?何!?」

目を丸くするエリック、戦闘中に気を取られた者に向けられるのは無慈悲な一撃だけだ。


俺はそのまま木の剣を彼の体に叩きつけた。


流石に《斬鉄》の効果時間は終わってはいるが、《純闘気》はまだ残っている。


「悪いな、今の俺には余裕がないんだ。」

それだけを言い残し、俺はエリック達の横をすり抜けようとする。


だが、そうは問屋が卸さなかった。


「これ以上は、行かせないわ!!」

俺の前に、魔法で作られた障壁が立ちふさがった。


俺は少し待ち、そして《斬鉄》を再び起動することでそれを切り裂こうと試みた。


ガァン!!


俺と剣と、魔法障壁がぶつかり合う音がする。


障壁は大きく揺れはしたが、破壊には至らない。


「な、なんて力なの!?人の一撃でここまで傷つけられるなんて、、、みんな、あまり持ちそうにないわ。」


ローブの女性の言葉を聞き、エリックのパーティメンバーが焦った様に動き始めた。


法衣の女性は詠唱を始め、軽装の男は俺の隙を伺う。

そして重装の男はこちらに向かって来ようとした




ーーーーーーーーーが、しかし、それは叶わなかった。


彼の後頭部が、何者かの手によって掴まれているのが見える。


そしてその手は、彼が先程破壊した木の幹から生えてきていた。

その手はおおよそ人間のものとは思えないほど青白く、そして美しかった。


「遅かったか、、」

何もかも、もう手遅れみたいだ。


「お前だな?先程から私の棲家を壊していたのは。」


静かな女性の声。


周りはうるさく、声は小さい。

しかしその声はこの場のどの音よりもはっきりと聞き取れた。


そこから読み取れる感情は怒り。


その声に、その場にいる全てのものの動きが止まってしまった。

そしてそれはもちろん、スライム達も例外ではない。


スライム達は平伏するかの様に、その場に這いつくばっている。


「おい、私は聞いているのだぞ?質問は繰り返さん。早く答えろ!!」


先程の、静かな問いかけとは違い今度はその感情がはっきりとわかる物言いだ。


「ち、違、、

「あらかじめ言っておくが、私は外の状況は見えていた。あまり私を怒らせたくなかったら、正直に言うべきだぞ?」


後頭部を強く握られる男が、先の問いを否定しようとするが、それを先回りで潰されてしまう。


だが、その方が良かったのだろう。


あのまま「違う」と言い切っていれば、彼の頭は握りつぶされるなり何なりしていたはずだ。


「ああ!!そうだよ!それがどうかしたのかよ!?」


半ば自棄的な声がその場に響き渡る。

そしてその直後、男の体が一瞬にして反転した。


「うお!?」


ただ単純に体の向きを変えられただけなのだが、男には明らかな恐れが見て取れた。


これから自分がどんな仕打ちを受けるのか?


彼の頭の中は今、そんなことでいっぱいなのだろう。


ここからでも足が震えているのがよくわかる。


「そう、正直でいいわね。正直者には、ご褒美をあげないとね!!」


怯える男に投げかけられた言葉は、予想外のものだった。


木の中から出てきたその女性は、先程までの冷たい表情とは打って変わって優しげな笑みを浮かべている。


「ーーーーえ?」

気の抜けた声が、聞こえる。


誰のものだったか、それはわからないがそうしたくなる気持ちは分かる。

その言葉は、それほどまでにこの状況を逸脱していたのだ。


「ご褒美ーー?」

力ない声が、木の中から出てきた女性に掴まれたままの男から聞こえてくる。


その言葉に、内心期待したのかもしれない。


それを聞いた女性は笑う。

美しく、そして無邪気にーーー



「えぇ、ご褒美よ!それも、とびっきりのね!!」


男の表情が、徐々に明るくなっていく。



だが、その台詞の意味を朧げながらに理解できる俺は、この状況に希望など微塵も見出せなかった。

次の投稿は深夜になります。


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