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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第2章 不安な悪魔と曲がらない考え
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40 第三階層と悪魔

第三階層、その大まかな作りは第二階層のものと何ら変わりがない。


その為、階段を下りたことで目新しいものを目にすることはなかった。

「ん?ここもさっきと同じような場所だね。何が出るとかわかってるの?やっぱりスライム?」


階段を下りきったところで、ノアがそんな質問をしてくる。


「いや、多分スライムではないはずだけど・・・リアーゼは何か知らないか?」


「あ、確か、ここから先は悪魔が出てくるらしいよ。」

悪魔か・・・・クリフォトの木は邪悪の樹だからな。


悪魔が出てきても何ら不思議ではない。


「そうか、リアーゼは物知りだな。って、どこでその情報を仕入れたんだ?」


「普通に冒険者ギルドでだよ?このダンジョンはここ、三階層までは到達する人がいるらしいからね。」

へぇ、それならああやってダンジョンを攻略して見せるとか言っていたエリックは、最前線にいたわけではないんだな。


それを聞いて俺は心の中のどこかで安心した。

あんなのが冒険者のトップだったらある意味困ることになりそうだからだ。


「ほかに何か言っていたこととかなかったか?例えばこの階層の特徴とか。」


「う~ん、それ以外には特にないかな?しいて言うなら、ここ三階層まではそこそこの人が来るんだけど、ここから先の攻略が一向に進まないってことかな?」

攻略が進まない?


「それはなんでだ?ここまでくるような奴らなんだ。時間さえかければ少しは進むだろう?」


「それなんですが・・・ある程度は進むことができるそうなんです。ですが、どこをどう歩いても行き止まりにぶち当たるみたいで・・・」


「へぇ、そうなのか」


どういっても行き止まりにぶち当たる・・・ねぇ、


「どうしたのタクミ、まさか!!もう何か思いついたの!?」

俺が考え事をし始めたあたりで、ノアがそう聞いてくる。

お願いだから、こういう時くらい黙っていてほしいものだ。


「思いついた・・・というより、さっき見た奴だろうなって思ってな。」


「さっき見たやつ?って何のことかな?ボクたち、ここに来てから特に珍しいものを見た記憶がないんだけど・・・」


「そうか、それならいいんだ。もし万が一ノアが思い出した時は答え合わせをしてやるから言ってみるといい。」


「えー・・・」―――キシキシ・・・

力の抜けたような声が漏れ出る。それと同時に、奇妙な音もかすかだが聞くことができた。


俺は音の聞こえてきた方向に目をやる。

音は今いる通路を20メートルほど進んだところにある曲がり角の先から聞こえてきているようだった。

その音は、ダンジョン内の壁を反響しながらこちらに届けられる。


―――キシキシ・・・あ・・ぁ・・・

うめき声のような、そんな音だ。

2人にも聞こえているのだろう。


俺たちは目を見合わせる。


「何かいるみたいだね。どうする?」


「いや、倒さないとここまで来た意味がないから、倒しはするんだけど・・・」

大丈夫かな?

情報通りならこの階層は悪魔といえる魔物が出てくるらしい。


だが、悪魔といっても多種多様なため、どれが出てくるかは予想がつかない。こればっかりは、見て判断するしかないのだ。


いや、判断材料はあるか・・・

俺は耳を澄ませる。


―――キシキシ・・・あ・・・ぁぁぁ・・・ゔぁ・・

聞こえてくるのは、キシキシという音と、うめき声のような音だけだ。

それ以上は聞こえない。


俺が考えるに、この2つは両方とも声だろう。

それなら、2種類あるということは2体いるということだな。


俺はそこらへんに落ちていた石ころを拾い上げた。


「ノア、いつでも戦闘に入れるように構えておいてくれ。リアーゼもだ。」

俺は2人に後方にいるように指示をする。


そして2人が両方とも俺の後ろに控えたことを確認して―――――手に持っていた石ころを正面に向けて全力で投げつけた。



―――――カァン!!

石同士がぶつかり合ったものとは思えない、甲高い音があたりに響き渡る。

おそらく、ダンジョンの材質は石のように見えて違うのだろう。


俺の投石が、見事に壁に命中した後、すぐに突き当りの角から姿を現す者たちがいた。

2体の悪魔だ。


1体目は全身が黒い肌に、コウモリのような羽、手に持つものはフォーク型の武器、悪魔といわれてまず初めに思い浮かべそうな姿をしていた。


そして1体目は、土色で爛れている肌、ぼろ布を纏った体、むき出しの歯、悪魔というより、ゾンビだった。


「ケケケケケ、キッシャー!!」

黒い悪魔が、何か声を上げながら手に持っている武器を俺のほうに突き出してくる。

その動きは直線的なものであったが、それ故にかなりの速さだ。


「うお!?あぶねぇ!!」

俺はとっさに後ろに飛ぶことによってその攻撃を回避する。


「ちょっとタクミ!!しっかりしてよね!!」

後ろに下がったことで近くになったノアがそう言いながら、火の玉を黒い悪魔に向けてはなった。


そしてそれは少し行った場所で爆発を起こす。

至近距離で爆発した、というわけではないが、かなりのダメージが見込める位置取りだった。


爆発によって巻き起こされた砂煙が少しずつ薄くなる。

そしてそれが完全に晴れる――――前に、砂ぼこりの中からフォークのようなものが突き出される。


「キキキ・・・ケケケ・・・」

笑い声のようなものが、砂煙の内側から聞こえてくる。

完全にだまし討ちを成功させたと思っているのだろう。だが、そんなもの俺には通用しない。


敵の生死が確認できない場合は確実に生きている、その旨を幾多のゲームで叩き込まれた俺に、その手の不意打ちは通用しない。

俺は敵の攻撃に合わせるように、自分の剣を振る。


その剣は、うっすらと光を放っていた。

いつの日かとったスキル《光属性付与》の効果だ。

悪魔にはこれが効きそうな気がしたので、とりあえず性能チェックもかねて使ってみる。


俺の剣は、狙いたがわずに黒い悪魔の体に命中する。そしてそのまま、その体を大きく後方に吹き飛ばした。

あぁ、あれじゃあ衝撃が逃げてしまうな。


そう思ったものの、あの黒い悪魔はさほど大きくない上に、飛んでいるから仕方がない節はある。


それに、悪魔が吹き飛んでいった方向には、ゆっくりとこちらに歩み寄ろうとしていたゾンビ型がいた。

流れに身を任せているその黒い悪魔は、そのままゾンビに向かってたたきつけられてしまう。


それによってゾンビが後退することはなかったが、その歩みを止めてしまう。


「ノア、この隙にぶち込んでやれ!!」

俺は足が止まったゾンビに攻撃するように、後ろに指示を飛ばした。


「了解だよ!!ボクに任せといて!!」

彼女の言葉と同時、火の玉が再び悪魔どもに向かって飛んでいく。


すばしっこそうな黒い悪魔は、ゆったりとしか動かないゾンビに今現在掴まれている。その為、今回は回避されないことを前提に、火の玉がゾンビたちの目の前まで飛んで行った。


そして爆発を巻き起こす。

再び、爆心地を中心に砂煙が舞い上がる。


「うあ・・・・ぁ・ぁぁ・・」

うめき声がその中から聞こえてくる。


だが、逆に聞こえてくるのはそれだけだ。黒い悪魔の声らしきものは聞こえてこない。


倒したのだろうか?


―――――――ぐちゃ・・・ぐちゃ・・・


何か―――嫌な音が聞こえる・・・

徐々に砂煙が晴れ、その内側があらわになる。


「ひっ!?」

短い、悲鳴のような声が後ろから聞こえてくる。

これはリアーゼのものだな。


「何してるの?あれ・・・」

ノアの戸惑うような声も、続けて聞こえてくる。


「そんなの、見たらわかるだろ?」

俺にとっては、ある意味見慣れた光景だ。


砂煙が晴れて、俺たちの目に映った光景、それは―――――



両腕に黒い悪魔を抱き上げながら、それを捕食するゾンビの姿だった。


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