4 今の装備と所持金の価値
外の世界は言ってしまえば、普通だった。
RPGでは見慣れた風景。中世の西洋風の舞台だ。
俺はそれに少しだけ安心する。この場面設定はオーソドックスのためいろいろなゲームで出会ってきた。
VRゲームも普及している現在では、見慣れた風景といっても過言ではないだろう。
奇抜なところでなくて本当に助かった。ありがとう。と、心の中で製作者に感謝を述べてしまうが、思えばその製作者がこんなゲームを作らなければそんなこと困ってねえよ。
俺の中に再び黒いものが流れ込んでくるようだ。
俺はその気持ちを誤魔化すかのように今の現状を確認する。
俺は今、薬草依頼の最中で今から街からでなければならない。
そして、俺の今の装備品はどこでも売ってそうな布の服と、木製の剣だけだ。
服のほうはゲーム開始時から身に着けていたもので、剣のほうは先ほど戦士を選択したときにギルドから支給品としてもらったものだ。
・・・・なめてんのか!!
こんなので魔物と戦えるわけねえだろ!!
不満を紛らわすために考えていたことがさらなる不満を呼び覚ます。これは考えるまでもなく、沼にはまってしまっている感がある。
いや、もしかしたら、この剣は見た目ほど悪いものではないのかもしれない。そう思い、俺は剣をじっと眺める。
そんなことしたってわかるわけはないのだが、こういうのは気分だ。
そんな風に剣を注視していた時、突然ひとつのウィンドウが目の前に表示される。
それはそのウィンドウに目を向け、書いてあることを読む。
なんか、読む前から嫌な予感しかしないのだが、
名前 木の剣
効果 攻撃力+3
説明 木製の剣。安価だが、実用性はあまりない。
ほら見ろ、俺が希望をもった瞬間に叩き折っていくスタイルだよ。
しかし、道具の詳細の見方が分かっただけで今は良しとしよう。俺は次いでにと自分が来ている服に目を向ける。
すると、同様にウィンドウが表示される。
名前 布の服
効果 物理防御+1
説明 どこにでも売っている服。何も着ていないよりはましな程度である。
うん。予想通り弱いね。
でも、全く防御力がない可能性もあったため、最悪というわけでもないだろう。
俺はそれだけ確認して歩き出す。
目指すは防具を売っている場所だ。しかし、当然ながら場所はわからない。
そこで俺は近くに歩いている人に声をかけた。
「あの、すみません。ここらへんで防具を売っている場所ってどこですか?」
「ああ!?あんたこの街は初めてか、それなら街の西門の近くに売っていたはずだぞ?」
「そうですか。ありがとうございます。」
「いいってことよ。あんた新人冒険者だろう?俺も冒険者なんだよ。後輩の質問は先輩が答えてやることだからな。」
そう言って親切にも防具屋の場所を教えてくれた人は去って行ってしまう。
こういう時、自然と丁寧な話し方になってしまうのは、日本人の性なのだろう。
話しかけた後に思ったのだが、次に人にものを聞くときは、もう少し優しそうな人を選ぼう。
さっきの人も気はよかったのだが、いかつくて少し怖かった。
俺は早速防具屋に行ってみることにする。
街の西門の近くって言ってたな。薬草もそっちのほうに多いらしいし、そんなところだけ初心者に優しいのはどうなんだろうな。
そんなことを考えながらも俺は防具屋にたどり着いた。そしてそのまま店に入る。
「おう、いらっしゃい!!あんた見ねえ顔だな。新入りか?」
「あ、はい。今日冒険者になりました。」
「そうかいそうかい。うちの防具は初心者にもやさしいから、ゆっくり見て行ってくれよ。」
突然話しかけられたのは驚いたが、VRゲームにはよくあることだ。
そういうものだと思い俺は気を取り直して防具を眺めていく。というか、防具、というよりはその値段のほうだ。
まずは近くにあったものからだ。
俺は先ほどのように防具を注視する。
名前 鋼鉄の鎧
効果 物理防御力+25
説明 鋼鉄製の鎧。そこそこの物理防御力があるが、魔法防御に対しては効果がない。
値段 50000G
ふむ、5万Gか。薬草採取50回分だな。
何日も依頼をこなしていれば普通に手が届きそうな値段だ。
ただ、今はそんなお金は持っていない。
次に俺は別の、店の隅のほうにおいてあるものを見てみることにした。
そこにあったのは革の鎧だ。
初期に買う防具としてはオーソドックスな方である。
早速俺はこの防具の詳細を見る。
名前 革の鎧
効果 物理防御力+6 魔法防御力+2
説明 牛革で作った鎧。見た目よりは丈夫である。
値段 8000G
おお!そこそこいいな。
値段は薬草採取8回分、俺の生活費とかも考えればもっとやらなければいけないが、それでも手ごろな値段に思える。
そう思いながら、俺がそれを眺め続けていると後ろから急に声をかけられた。
「兄ちゃん!それを買うのかい?」
先ほど、入店時に挨拶をしてきたおっちゃんだ。
彼はいつの間にか俺の後ろに立っており、そう声をかけてくる。
「いや、気に入ったけど今は手持ちがないからまた今度にするよ。」
「そうか、じゃあ金が溜まったら頼むよ。」
おっちゃんはそう言って俺の背中をバシバシ叩いてくる。地味に痛いが、我慢するとしよう。
そういえば、生き物を注視するとどうなるんだ?
俺は道具の詳細を見るときと同様にそのおっちゃんに目を向けた。
しかし一向にウィンドウが現れる気配はなかった。
ふむ、人物には使えないらしいな。
それを確認した後、俺は他の商品も一通り見て回る。その結果、この店で一番安いのはやはりというべきか、布の服だった。
布の服一着は500Gだ。
服一着の値段としては安い気がするが、これを防具として見た時には少し高く感じてしまうのは何故だろうな?
そしてそれ以外に俺が今買えそうな防具は存在しなかった。まあ、1000Gはその程度の金額ということだな。
俺は店のおっちゃんに挨拶をしながら店を出た。
そして俺は一つの結論に至る。
ああ、俺はこの紙装甲のまま外に出なければいけないみたいだな。
俺はため息をついた。
だが、ここでこうしているわけにもいかない。1000Gのおおよその価値をつかめた今、ゆっくりしている時間なんてあるわけがないのだ。
俺はすぐに街の外に出ようと門に向かって歩き出した。
今日は祝日なのでもう一話くらい投稿しようと思います。