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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第2章 不安な悪魔と曲がらない考え
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39 正解の道とルールの抜け道

「今日は僕たちも同行させてもらうとしよう。」


今日も朝からダンジョン探索に駆り出された俺に待っていたのは、両手を大きく開きギルドの入り口で仁王立ちするエリックの姿だった。

そういえば今思ったんだが、こいつも結構朝早いのな・・・・


「お断りします。自分たちのパーティだけで言ってください。」

こんな申し出速攻拒否だ。

スライムなんかに苦戦する奴らを連れて歩きたくはない。


「そう遠慮する出ない。今日こそは僕があのダンジョンを攻略して見せるのだ、君もこの波に乗らないというわけにはいかないだろう?」


「いえ、そういうのいいので、俺たちは俺たちのペースで頑張るんで・・・」


「まぁまぁ、そういうな。というか、君が拒否しようとも僕は勝手についてくからな?」


なんで!?

なぜこいつはこんなに俺たちについてきたがるのか・・・この理由ばかりは俺にもまだ推察が付かない。


あれか?昨日俺が7層はあるとか言ったから、戦力を増強して攻略に取り掛かろうという腹か?

そんなものに巻き込まれてたまるか!!

これ、下手したら寄生されるだけじゃねぇか!!


「ノア、リアーゼ!!ダンジョンまで走るぞ!!」


「うん!!ボクもこんな人と一緒じゃいやだからね!!」


「え!?あ、はい!!」


「あ、待て!!」

俺たちはエリックから逃げるように走り出した。

リアーゼはついてこれないかもしれないかと思ったが、彼女は獣人ゆえに身体能力が高いのかもしれない。

俺たちの全力疾走に、何とかではあるがついてくることができていた。





「はぁ、はぁ、今思ったんだが、あいつの目的地もここだよな?」

ダンジョンの入り口まで走ったところで、俺はそれに気づく。


あそこで逃げても、ダンジョン内で出くわすのではないか?


「そうだねー、だから今日は2階層を探索しないかな?昨日のあれを見る限り、あの人たちにスライムを倒すのは難しそうだし・・・」


あぁ、それもいいかもしれない・・・

でもあそこの敵は俺としてもあまり戦いたくないんだよなぁ。


エリックと一緒に戦うか、それとも終日スライムを狩り続けるか・・・


「よし!!決めた!!」


「お、二階層目に行くんだね!!」


「あぁ、今日は二階層を超えて第三階層に行ってみよう!!」

スライムと極力戦わない方法はそれしかない!!


あいつらの体液はかかるとべとべとするからできるだけ戦いたくない、でもこの場にいたらエリック達に見つかってしまい二階層に潜らされる可能性がある。

それが嫌だと思った俺が選んだのが、第三階層まで行こうという話だった。


当然、このダンジョンには昨日来たばかりのため、どうやってそこまで行くのかはわかっていない。

それにエリックの台詞から判断すると、このダンジョンは二階層までしかまだ情報が出回っていないはずだ。


三階層まで行ってしまえば、あいつらが来ることはないだろう。


「やっと真面目にダンジョン攻略をするつもりになったんだね!!タクミがやる気になってくれて、ボク嬉しいよ!!」

俺たちは第一階層は駆け抜けるように進む。


ウッドゴーレム、ストーンゴーレムは容赦なく叩き切り、アイアンゴーレムが出てきたら隠れて体力を回復させる。

それの繰り返しで、第一階層は難なく通り抜けることに成功した。


そして第二階層。


昨日は入り口の少し先までしか見てなかったため、実質初見だ。

ただ、出てくる魔物がスライム系だということだけはわかっている。


出てくる敵の強さも、昨日の時点で大体把握した。


「ノア、敵が出たら攻撃は任せるぞ。」

スライムはノアが倒してしまったほうが早いことも・・・


「任せといて!!ボクのかっこいいところみせちゃうぞー!!」


敵は彼女がひきつけてくれる。

だから俺は別のことに意識を向けることができる。


俺は罠などがないか、どちらに次の階層に続く階段があるかを推測しながら進む。


第二階層の構造はいくつかの小部屋からなる。

その為、部屋に入る前の罠チェックは基本だ。


まぁ・・・ある程度進んだところでこのダンジョンは罠がないタイプだと気づいたんだが・・・


あ、分かれ道だ。


「ここは左だな。」

「そういえばタクミ、なんでさっきから迷わずに道を選べるの?」

「あ、それ私も気になる。どうやってるの?」


スライムはノアが倒す。

道は俺が示す。

リアーゼが魔石を拾う。

それが思ったより作業感が出てしまったため、退屈になってしまったのだろうか?


先導しながら道を選んでいく俺に、ノアが何気ないような感じで話しかけてくる。


「これは経験が成せる技だな。数々のダンジョンを踏破してきた俺からすれば、どのへんに宝箱があってどこら辺に次の階層の階段があるかなんてすぐにわかるのさ。」

自信満々にそう言い放つ。


「へぇ~、いつもみっともなく木の剣を振り回しているだけだと思ったら、意外な特技もあったもんだね!!」

おい、いつもの俺の戦いぶりをこいつはみっともないと断言しやがったぞ!!


「あれ?でもタクミおにいちゃん、昨日ダンジョンの常識も知らなかったような・・」

リアーゼがそんなことを呟いている。

まぁ、確かに俺はこの世界のダンジョンのことはまだいまいちわかっていなかったりするのだが、それでも大体の構造が分かるのは嘘ではない。


こいつらは知らないが、この世界は俺のもといた世界のゲームだ。

当然、それを作ったものがいるはずだし、それは人間であるはずだ。


どこかで作為的な構造が現れているはずだ。

そういった場所はどこか不自然さが残るのだ。



「例えばそうだな、ノア、そこにある壁の亀裂をのぞいてみるといい。面白いものが見えるはずだから。」

俺は丁度通り過ぎてしまった壁にある亀裂を指さしながらそう言った。


「え!?何々、何があるの?」

彼女は俺の言葉通りにその亀裂に目を近づけ、その先を覗き見る。

そして、


「うわぁ、何あれ!?気持ち悪い!!」

と、叫び声をあげながら、後ろに飛びのいた。

「え!?何があったのおねえちゃん。」

その光景を見ていたリアーゼが、落ち着いた声でノアに話しかける。


「おー、思ったより詰まってるな。」

俺も一応、ノアと同様に壁の亀裂の先を見てみた。


その先に見えたのは無数のスライムだった。

昨日エリックを襲ったような大きさはなく、精々がバスケットボール程度の大きさでしかなかった。

しかし、問題はそのスライムの数にあった。


スライムたちはこの壁から見える部屋を埋め尽くすほどにいたのだ。

そしてそのスライムたちには、幾つもの色が存在している。


これはあれだな――――――蓮コラ画像みたいだな・・・


床はもうすでにスライムで埋め尽くされ、今は積み重なることによってスペースを確保していた。

俺はそっと目を離す。


「うえぇ、何あの部屋・・・なんであんなものが存在するの・・・」

気持ち悪そうな表情をしたノアが俺にそう聞いてくる。

彼女はまだ蓮コラ耐性がついていなかったのだろう。本当に気持ちわるそうだ。


「おそらくだが、ポップ数調整のためだな。」


「ぽっぷすうちょうせい?ってなあに?お兄ちゃん」

あ、これじゃあわからないよな。


さて、どうやって説明したものか。


「知ってるか?ダンジョン、フィールドもだけど、一定数以上魔物が出現しないようになっているんだぜ?」

イベントとか大規模戦とか、例外はあるが平常時は基本的にこのルールにのっとってゲームは動いている。


確認はできないが、そこはこのゲームも同じだろう。

何故ならそれがゲームを作る際に基本となる設定だからだ。


現在のVRゲームは起動中、その世界全ての時間が一様に動くことになっている。

つまり、俺がどこで何をしていようとも、関係なく世界は回り続けるのだ。


その間、各エリアで際限なく魔物がわき続けたらどうなるか?

その問いに対する答えは言わなくてもわかるだろう。


そうならない為に、この手のゲームでは魔物の沸き数を制限されている。


「へぇ~、そうなんだね?でも、それだとむしろあの部屋にスライムが大量にいるのは不自然じゃないかな?あれだけの魔物がいても、まだスライムは沸き続けているよ?」


「あぁ、あそこはダンジョンの外だからあの部屋にいる間はこのダンジョンの魔物としてカウントされないんだ。」

そう、あそこはこのダンジョンとして含まれていないはずだ。


おそらく、ダンジョンの端から無理矢理通路を伸ばし、あそこにつなげることで、ダンジョンに設定した範囲外にあの部屋を作ったのだろう。

ある意味、隔絶された空間であるといえる。


「えっと?ということは?」


「あの部屋にスライムを押し込めれば、この階層のスライムは再び沸くっていうことだな。」


「なるほどね・・・・って、なんでそんなことになっているの?」


それは製作者サイドが思いついた効率のいい嫌がらせの方法としか・・・・

この階層の魔物はスライム系のため、小さな亀裂で簡単に部屋に入ることができる。


逆に、魔物自体にダンジョンの中には入らないようにプログラミングしておけば、あの部屋から再びこちらに戻ってくることはない。


ここを通ったスライムが、決まってあの亀裂から出ていくわけではないだろうが、時間をかければ数もたまっていくのは確かなことだ。

その結果が、先ほど俺たちがみた大量のスライムたちだということだろう。

ああやっておいておけば、不注意な冒険者が空洞音だけで部屋を発見して、壁を壊すかもしれない。

そうなれば祭りだ。


大きなスライムがいないのは、単純に核となる部分が通れるサイズではなかったという話だ。


「さぁ?神様っていうのは、気まぐれだからな。案外、何も考えていないのかもしれないぜ?」


かもしれない、ではなく今回に関してはほぼ確実に何も考えられていないただの嫌がらせとして作られたものなのだが、それは言わないほうがいいだろう。


「全く、神様っていうのはどうしてこう自分勝手なの!!」

何故かその言葉に、リアーゼが一番強く反応する。何かあったのだろうか?


「まぁ、ともあれああいうものを見つけても、触らないほうがいいぞっていう話だ。あれが壁を崩したりして出てこられたら大変だからな」

俺はそう言って話を締めくくった。


そしてノアの具合がよくなったところで、攻略を再開する。


先ほど解説した通り、俺は次の階段の位置が大体わかっている。

というか、このダンジョンに関しては誰でもすぐにわかる。


その階層の入り口から、中央の木を挟んだ対角線上、そこに階段があるのだ。

そして階層ごとの大きさも、第一階層がほぼ何もない場所だったため大体把握できている。


そこまでわかれば、俺たちがどう進めばいいのかという問いに関する答えは、簡単に出てくる。



「あ、多分そこの通路を右に曲がったあたりに階段があるはずだ。」


俺たちは次の階層に続く階段を発見した。

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