3 依頼受注
「はぁ、」
俺は一人、椅子に座ってうなだれていた。
先ほどまで、冒険者手続きをしていた建物の机だ。ちなみに、ここは冒険者ギルドというらしい。
まぁ、ありきたりだな。
クラスの選択やその他もろもろが終わり、今まで考えまいとしていた現実が俺の中に戻ってきたからだ。
ここはゲームの中の世界、それは誰もが一度は憧れることではあったが、実際に直面してしまうと少し面食らってしまう。
幾度となく、その事実を否定しようとはした。しかし、
ーーーーステータス
そう念じた際に目の前に出てくるこのウィンドウがそれを許さない。
ちなみに、そこにはこう書かれている。
名前 天川 匠
クラス 戦士
レベル 1
HP 34/34
MP 5/5
力 8
魔力 3
体力 10
物理防御力 12
魔法防御力 2
敏捷 5
状態 正常?
俺はそれを確認して再度ため息をつく。
ここはゲームの中、それかそれに準ずるものという俺の仮説を満面の笑みで肯定しているようで少しこのステータスウィンドウに腹が立ってきた。
ちなみにクラスは戦士を選んだ。これは当然といえば当然の選択だろう。
よく物語の中などでは、この手の展開で、ノービスとかそこら辺の特殊なクラスをとる主人公が結構いたりするのだが、俺はそれをしない。理由はいくつかある。
まず、初見のゲームにおける戦士という職業の安定性だ。
戦士というのは総じて体力が多く、防御力が高いことが多い。それが意味するところは、不慮の事故で死ににくいということだ。
まだ、このゲームの情報が出そろっていない為、少しでも死ににくいと思われるクラスをとったということだ。
その次に挙げられるのはノービスというクラスその物だろう。
この手のクラスは上級職に上がるまでの道が険しいものが多い。俺が過去やってきたゲームに似たクラスがあったが、やれ、二次職がなくいきなり三次職だの、やれ能力値が軒並み低いだの。
総じてやりこみ要素的なところがあった。言ってしまえば、上級者用である可能性が高かったからだ。
と、そんな風に俺は誰が聞くわけでもないことをステータスのクラスの欄を見ながら脳内で解説をする。
しかし、ここでいつまでもこうしていても仕方がないだろう。まだ、寝床も決まっていない上にお金もほとんどない。
一応ゲーム開始時に1000Gだけ持たせてくれる温情はあるそうだが、これでいつまでしのげるかはわからない。
俺は仕方なく席を立ち、建物内にある一つの掲示板に向けて歩き出す。
先ほどの受付嬢の説明が正しければ、あそこに依頼などが貼られているらしい。
そこで依頼に対する報酬を見れば、この世界の通貨の価値をはかることができるかもしれない。
そう思って俺は掲示板をみる。
遠くで見ていた時はあまり気にならなかったが、結構な大きさだ。
掲示板には色々な依頼が貼られていた。その中には、当然だが受注制限なるものがかけられている者が多々ある。レベル制限、クラス制限、ステータス制限、色々あるが今はそれは重要ではない。
俺は自分が受けられる依頼を探す。
・・・・あった。
少し見渡してみるとすぐに見つかった。内容は薬草の採取だ。報酬は1000Gだ。
それを見て俺は少し焦る。
薬草の採取とかいう依頼が1000G、俺の現在の所持金と一緒だ。
それが意味するところは俺は今現在ほとんどお金を持っていないということだ。
俺は慌ててその依頼書を掲示板から剥がし、受付までもっていった。
「あの、これを受けたいんだけど・・・」
俺は手に持っていた依頼書を机の上に置いて見せる。
「はい。薬草の採取ですね。わかりました。」
どうやら受注は問題なくできるようだ。しかし、ここで一つ問題がある。
「すみません、薬草ってどこら辺によく生えてるとかわかります?」
周辺地理も何もわからない上に、薬草なんて見たこともない。どこに行って何を探せばいいかがわからない為、それを聞き出しておかなければならない。
そんな俺の心中を知ってか否か、受付嬢の人は素直に教えてくれる。
「薬草となれば、街の西側にたくさん生えていたという情報が入っていますよ。大体、ここら辺ですね。」
おお、場所を教えてくれるだけではなく、地図を見せてくれるとは、これで何とかなりそうだな。
思わぬところでここがどんな場所化が分かることができた。
「ありがとうございます。よくわかりました。」
俺はその受付にお礼を言ってそのままギルドを後にする。
それは俺がゲームの世界に来てしまって初の、外出だった。
この物語は前作より長くなると予想されるのでだらだらやってくつもりです。