286 女の戦いとちっちゃい胸
【ノア】
「おぉー!これが温泉なんだね。」
タクミが行きたいっていうからついてきてみたけど、まさかお風呂のことだったとは思わなかった。
タクミがいうにはこれは天然のお風呂らしい。
なにそれ?お風呂って勝手にできるものなの?
そう聞いたら色々仕組みがあるらしい。
ちょっと小難しい話をされたからボクには理解できなかったけどね。
ボクとエンドルシアは2人で女湯の方に入ることになった。
昼間ということもあって人はいないみたいだ。
貸切ってやつだね!
「それにしても、お外でお風呂に入るなんてボク初めてだよ。」
お外で水浴びとかなら旅をしている間に幾度となくあったが、あったかいお湯に浸かるのは何気にこれが初めてだ。
ボクは恐る恐るお湯に足をつける。
ふわあああっ、これはすんごく気持ちいいよ。
「なるほど、これはとってもいいものだよ。」
タクミが見つけたから来たいって言ってたのも納得だね。
それにしても、まだ明るいうちにお風呂に入るのは新鮮だけど結構いいかも?
「ん、旦那様はいいセンスしている。」
隣でエンドルシアもそう言っている。
っというかまた君はそうやってタクミのことを旦那様って呼んで!
「タクミは君の夫じゃないからね!ボクのだからね!」
「でも、まだあなた結婚してない。なら私が先に結婚すれば、立場は逆転。」
エンドルシアは胸を張ってそう言い切った。
その際そこについている大きな2つが揺れる。それをみたボクはこっそり自分の体に目を落とした。
そこには引っかかりのほとんどない体。
・・・・まだ、まだまだこれからだからね。
これからどんどん大きくなってタクミが目を離せなくなるようなないすばでーのお姉さんってやつになるんだからね!!
私は心の中で虚勢を張ってその後すぐになぜか自分の母親の姿を思い出した。
エスリシアお母さん・・・すらっとした体が特徴で、、、う、うん!!これ以上考えないことにしよう!
そもそも、タクミはそんなもので女性の良し悪しを判断する男の子じゃないはずだよ。
ない、よね?
「そんなこと、ダメだよ!タクミと結ばれるのはボクなんだからね!!」
「そんなこと、やってみなきゃわからない。決めるのは彼。」
「だ、だったらタクミはボクを一番に選んでくれるもん!!」
「どんな男の人でもよりいい女がすり寄ってきたら古い女は捨てるもの。私の友人が言うんだから間違いない。」
むぅぅ、こいつ、タクミがいなくなった瞬間からボクにすっごく攻撃的になってる気がするんだよ。
君がタクミに恩を抱いていてそれで好きなのはいいけど、ボクの場所を取ろうとしないでほいんだよ。
「そんなことないよ!そんなことタクミは絶対しないもん!」
タクミはどんな時でもボクを守ってくれるんだ。
そしてボクを好きだって言ってくれたんだ。そんな君がボクを捨てるなんてありえないよね?
ボクは今ここにはいない君に質問する。
答えは当然帰ってこない。
ボクがおっきな声でそう言い放ったからかは知らないけど、エンドルシアが立ち上がる。
動作に合わせて胸が揺れる。
むぅ、揺れないボクに見せつけているのかな!それだとしたらボク、怒るよ!
「さて、それほそれとして今日のメインイベント行ってくる。」
「メインイベント?」
ボクの質問を無視してエンドルシアはどこかに歩き始めた。
その方向にあるのはーーーー何もない?強いて言うなら、、壁?
ボクの心なかの疑問は無視してエンドルシアはその壁に手をかける。
「ん?君は何をしているの?」
「この先に、旦那様がいる。それも、裸で。」
えっ?
ボクの思考はエンドルシアの言葉に追いつけなかった。
あの先にタクミが?
それは当然だよね。だってあっちは男湯の方だもんね。
で、えっと、裸?そりゃあお風呂に入ってるんだもんね。
えっと、じゃあなんであいつは今その壁をどうにかして越えようとしているの?
・・・・・
「わあっ、だ、君何しようとしてるんだよ!!」
ボクは素早くエンドルシアの方に寄ってその行動を止める。
「どうして止めるの?」
「ダメだって、あっちは男の人専用のお風呂!ボク達が入っていい場所じゃないんだよ!!」
「大丈夫。」
「何がさ!」
「『探知』を使ったけどあの先には旦那様以外いない。つまり旦那様以外の人に見られる心配はない。」
「だ、、ダメだよ。タクミがいるんだよ!!」
「だから、旦那様に私の体を見てもらう。それで、襲ってもらう。」
襲って、、、って、そう言うことだよね?
わわっ、こいつ何考えてるの!!?君はまだタクミと出会ってほとんど時間が経ってないじゃないか。
そういうのは結婚してからって話でしょ!!
あんまりえっちなのはダメだよ!!
「とにかくダメ!早くその手を離して!!」
「どうして?」
「どうしてって、言わないでもわかるでしょ!」
「わからない。逆にあなたはどうしていかないの?」
「行く理由なんてないよ!!」
「?あなたは好きな人の裸、気にならないの?」
うっ、タクミの裸ーーーーー
ボクはそう言われて少しだけ想像してしまった。そして顔が熱くなるのを感じた。
ちょっとだけ、、、見て見たいかな?
、、、、ダメダメ!!やっぱりダメ!!
「好きな人に襲って欲しくないの?迫ってきて欲しくないの?」
エンドルシアはダメ押しと言わんばかりにボクにそう畳み掛けてきた。
ボクの顔がさらに熱くなる。タクミがボクに迫ってきたらと思うとーーーーーダメっ、ボク、断りきれないかもしれない。
されるがままになっちゃうかもしれない。
ボクが自分が少しだけそれを期待していることを自覚した。
それと同時に少しだけ罪悪感が生まれた。
ボクは純粋な気持ちでタクミが好きだって思ってたのに、そんなえっちなこと考えちゃって、悪い子だ・・・・
これをタクミが知ったらどう考えるだろうか?タクミだって我慢して手を出してこないのに、ボクが無理やり襲わせようとしたらどう思うだろうか?
そんな欲と理性がボクの中で戦いを始めた。
そしてーーーーーーー
「やっぱりダメだよ。ボク、君のそうやって強引にタクミに迫るところ大っ嫌い!」
理性が勝った。
ボクはいつの間にか半分ほど壁を登っているエンドルシアの足を掴み上げ、そして後ろの方に思いっきり投げ飛ばした。
「あっ、、、」
エンドルシアは抵抗できずにそのまま湯船の中に投げ飛ばされる。
ボクはその間にすかさずイドルちゃんを召喚した。
『今日は何のようなの?』
「イドルちゃん、あの獣が隣の男湯に特攻しようとしたら吹き飛ばして止めちゃって!!」
『・・・・そういうのって普通男湯から女湯にって感じで逆じゃないの?』
「タクミはそんな人じゃないからこっちを覗いてきたりはしないよ!!」
君までタクミをなんだと思ってるの?
僕たちがそんなやりとりをしているとエンドルシアが湯の中から頭を出した。
「ふふっ、いい度胸。人類の守護者とまで言われた私を相手に一歩も引くつもりがないなんて。」
「そんな称号、ボク達の前には無意味だって知るんだね!!」
「神力騎士団、No.21『世界』のエンドルシア、推して参る。」
エンドルシアが名乗りとともに壁を目指した。
同時にイドルちゃんが風の塊を射出する。
風の塊は進行するエンドルシアを捉え吹き飛ばすーーことはなくギリギリで回避された。
むぅ、、認めたくないけどそこそこやるようだね。
だけどその先ももう既に暴風エリアだよ!!
幾重もの風がエンドルシアの方に向けられる。逃げ場なんてない。
1つでも当たればまた最初からだ。
今、ボク達は生まれたままの姿。つまりこれを防ぐようなアイテムを持っているはずもない。
『うっそ、これマジ?なんでこれで当たらないの?』
だけど、敵は思った以上に強敵だったみたいだ。
見えないはずの空気の塊を感覚だけで回避してみせる。
そして少しずつであるが目標である壁に近づいているようだった。
『さてさて主人様。このままじゃ突破されるよー?どうする?』
イドルちゃんが少し楽しそうに聞いてくる。これからボクがどんな行動に出るのか期待してくれているのだろう。
「ボクが少しだけ動きを止めるから、そこを狙い撃ちしちゃって!!」
ボクは前に駆け出した。
エンドルシアは生半可なことじゃ止まらないのはわかりきっている。
仮にもボクのいた国の勇者のパーティをたった1人で圧倒した存在なのだ。
・・・・まぁ、あの勇者達全員タクミより弱いみたいだからすごいんだろうけどあんまりそのすごさが伝わらないんだよね。
凄いんだろうけど!!ボクのタクミの方が何倍も凄いからね!!っと、話が逸れた
それを少しでも止めるには直接ぶつかるのが一番簡単だ。
一瞬でも障害物を増やせればそこに時間をかけざるを得ない。
「ここが最終防衛ラインだよ!突破できるものなら突破してみるといいよ!!」
ボクは壁の前に立ちふさがった。
これを突破されたらもうなすすべはないだろう。多分だけど、エンドルシアは次は律儀に登らない。
壁を破壊してでも向こうに行くはずだ。
「いいだろう。実質の正妻決定戦としゃれこむ。」
いや、それは違うと思うんだけどね。
でも、それでも引くつもりはないよ!タクミの貞操はボクが守るんだからね!
ボクはタクミがいつもやっているのを思い浮かべながらエンドルシアとぶつかる。
エンドルシア、本当に容赦するつもりはないようだ。
迷いない拳がボクの頭に向かってきている。
乙女の顔を真っ先に狙うことといい、2人きりになったら主張が激しくなったことといい、こいつはボクを敵と考えている節がある。
このやり取りであわよくば顔を傷つけてタクミの興味を薄れさせてやろうって魂胆が見えているようだ。
それに対しボクは初心貫徹。相手の動きを一瞬止めることだけを考えるよ。
相手の動きを阻害するにはえっとーーーー体ごと飛び込むのが一番!
タクミは死兵相手が絶対に対処しないといけない分面倒だって言ってたことがあった。
ボクもそれに習って絶対に対処しないといけないように飛び込んだ。
頭を守って玉砕覚悟の特攻だ。
「むっ、邪魔。」
エンドルシアの拳は空を裂いた。その下にボクは潜り込んでその腰にタックルを喰らわせようとする。
だけど相手はそれを受けるほど甘くはない。
軽く体を回転させてボクを受け流した。
だけどそれは予想通り。
「イドルちゃん、今だよ!!」
『これなら外さないよー!!』
直後、イドルちゃんの放つ風がエンドルシアを捉えた。
イドルちゃんの風はシルフちゃん達と違いダメージを与えるのではなく吹き飛ばす方向に強い力を発揮する。
「この程度の風では、私を押し戻せない。」
だけどそのイドルちゃんの生み出した風をエンドルシアは足を踏ん張って耐えようとした。
自分なら耐えられると絶対の自信を持っているようだった。
ーーーーーごめん、タクミ。ボク達頑張ったけど、ちょっと力が足りなかったかも。
ボクは心の中でタクミに謝った。
願わくばそこの淫乱な女にタクミがなびかないでほしい。
できればこっちに投げ返してタクミ。
タックルが受け流されて温泉に頭から突っ込んみながら私はそう願った。
だが、タクミのことを心配する必要はなかったみたいだ。
「あっ、、、」
一瞬だけイドルちゃんの風を耐えたエンドルシアだったけど、今日は足場が悪かった。
忘れていると思うけど、ここ、お風呂場なんだね。
エンドルシアは足を滑らせてこっちに飛んできた。
バシャーーン!!
こっちもボクと同じように頭から着水する。
しかし風に飛ばされたこともあってボクより飛んで湯船の端っこの方に着水だ。
「むぅ、、、次は避ける。私は、諦めない。」
エンドルシアはすぐに頭を出して次の特攻をしようとしている。
ボクだって負けないよ。今度は完璧に止めるからね!!
ボクがそう決意した時、
「さっきから黙っていれば!!お前らは何をやっているんだ!特にそこの白いの!」
物陰から1人の女性が現れて怒鳴り声を上げた。その女性はすらっと引き締まった体がかっこいい。
ああいうのもちょっと憧れるかな。
ボクは自分の二の腕に力瘤を作って見た。そして逆の手でそれを触る。
プニプニだ。
冒険者を初めてレベルもいっぱい上がって、力のステータスも結構上がっているはずなのになぜか筋肉はあんまりつかないんだよね。不思議だ。
それにしても、貸切だと思ったけど違ったみたいだね。
あ、あの人見たことある。
ボク達がこっちにきた時に初めて出会った女の人だ。
確かソーカって言ったよね。
「ん、新手か。」
「さっきから見ていれば不埒な。男湯に入ろうなど何を考えておるのだ!!」
言っていることを聞く限りソーカはボクの味方をしてくれそうだ。
ソーカは怒りの表情でエンドルシアを見る。
「それになんだこれは!!私に対する当てつけか!!」
ーーーーパシィっ、、
そしてエンドルシアのおっきなおっぱいに平手打ちをした。
あ、ソーカもボクと一緒でおっぱいがちっちゃいや。
それから先、エンドルシアが壁を越えることは出来ず、タクミが入浴終了するというタイムアップを迎えた。