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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第1章 少女の陰と手にしてしまった罪
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27 影と決着

俺は目の前の少女に木の剣をもって対峙する。


「もう、邪魔しないで見ていてよ!!」

その少女は、少しだけ頬を膨らませてそう言ってくる。普通に見ればかわいいととれるその表情だが、周りの影がそう思わせない。

少女は俺のほうに小走りでかけてくる。この戦闘がはじまって以来、初めて彼女からの攻撃の意志な気がする。


彼女の剣が、俺のほうに迫る。それを俺は木の剣を使い、綺麗にはじくことに成功した。


「ええ!?なんで!?」

びっくりした。そう言いたげな声が俺の耳に届く、そしてその体は、剣がはじかれたことで大きく開いている。

俺は、その体に向かって木の剣をたたきつけた。


俺の剣は、少女が身に纏っていた影を少しだけ削る。と、同時に黒く染まっていく。


「ッチ、武器で触れてもだめなのか。」

俺は瞬時に木の剣を放り捨てる。そして足元に散らばる剣を、後ろに飛びのきながら拾い上げた。


「タクミお兄ちゃん、今何をしたの?」

新しい武器を補充した俺に、少女は話しかけてくる。剣をはじいたことに対することか、それとも影を剣で削ることができたことだろうか?

まあ、どちらにせよ俺は答えるつもりはない。戦闘中に手の内をさらすのは、愚か者のやることだ。


「さあな?たまには、自分で何とかすることを覚えたらいいんじゃないか?」


「なにを・・・っ!!?」

俺の言葉を聞いた少女は、少しだけ表情に影を落とし突進してくる。その表情から読み取れるのは怒り、先ほどのようなポーズのものではなく、本気のものだ。

「ノア!!俺に向かって片っ端から落ちている剣を放り投げてくれ!!」


俺は後ろで魔法を使うかどうか迷っているノアにそう声をかける。

「わかったよ!!適当に投げるから、当たったらごめんね!!」

彼女はそう言って行動を開始した。


それを確認した俺は、目の前の少女に向かって剣を振る。

俺の剣は、少女の剣をはじき、影を削る。そして役目を終えて捨てられる。

武器を失った俺は、宙を舞う剣を一本無造作に受け取り、それを再び少女に向かって振る。俺たちの戦いは、それの繰り返しであった。











そして・・・・


「もう、それで最後の武器だね。」

無情な声が響く。俺の手には、最後の木の剣が握られている。


「ああ、それは間違いないな。」

俺はまっすぐ、少女のほうを向いている。少女の影は、すでにかなり薄くなっていた。しかし、それを削り切るだけの武器が足りないのは事実だろう。

ノアの魔法も、発動までに時間がかかるため、影の自動回復のほうが早い。その為、今から準備したところでもう遅いのだ。

だが、俺は焦らない。内心で勝利を確信しているからだ。後はそれを実行に移すだけ。


俺は影が少しでも回復していない間に、少女に向かって突進を繰り出した。放つのは、勢いをつけた突き攻撃だ。


「それはさすがにくらわないよ!!」

少女は、手に持つ剣を突き出し、俺を迎撃しよう試みる。あれをよけたりはじいたりしようとすれば、俺の攻撃は失敗していしまうだろう。

だから俺は―――――――その剣をその身をもって受け、そのまま突進を続行する。


「あああああああああああ!!痛ってええええええええ!!」

突き刺さる剣を前に引かないように、声を大きく上げ自分を鼓舞しながら進む。


その距離は短い、とはいっても、体に剣が刺さっていく感触は、形容しがたいものがあり、長くは続けていられそうにはなかった。


だが、俺は耐えきった。

ここはすでに、少女に接近し、俺の剣が届く間合いだ。



俺の剣が、少女の体を突く。その攻撃は、影に守られているからか、それとも武器の質が悪いのかはわからないが、突き刺さることはなかったが、その影を大きく減らすことに成功していた。

先ほどまでは攻撃をはじくことに使い続けていた《斬鉄》を攻撃に回したのだ。そのおかげもあってか、俺の攻撃は少女の影の残りのほとんどを削りとる。


だが、その影がいまだ消え去っていないことには変わりない。

いや、俺の予想が正しければ、あの骨の魔剣を彼女が手にしている限り、あの影は消えることはないのだろう。


「頑張ったけど、私の勝ち。これでやっとおとなしくしててくれるよね?」

完全に勝利を確信したかのような台詞が、聞こえてくる。


「それはどうかな?まあ、これが終わればおとなしくするというのは肯定してやるよ。」

俺は突きの体勢のまま、その剣を手放し、自由になった手を少女の体に回す。


俺の中に、影が伝っていく。だが、それを気にせず、俺は腹部に刺さっている剣を無理矢理引き抜き、それをノアのいる方向に放り投げた。


「これを壊せばいいんだね?やってみるよ!!」


「あ、あ、早く離して、このままじゃ黒くなっちゃうよ?」

焦ったような声が聞こえてくる。


「まあいいからいいから俺に任せとけって。体が血で汚れるのも、我慢してな?」

少女の纏っていた影が、次第に薄くなっていく。攻撃によってかなりの量を減らしていたのだ。それが消えるまで、大した時間はかからないだろう。



俺の予想通り、少女の周りの影は、どんどんと消えていく。だが、少女の様子はいまだに変わらない。

いや、少しずつだが戻っている。

あの、初めに座り込んで虚空を眺めているだけの状態だった時のように・・・



――――――――――パキン、


その時、何かが壊れるような音がした。

そちらを見て確認するまでもない。壊れたのは骨の魔剣だ。


「あ、、、、、、ごめんなさい・・・」

その音が聞こえると同時に、俺の腕の中の少女は申し訳ないといった声色で謝罪の言葉を述べた後、意識を失った。


これで、終わったのだろう。

俺はその場に座り込んだ。HPを確認すると、まだ4割は残っているが、長期戦による疲れと大きく突き刺されたことによる痛みで立っていることがつらかったからだ。


座り込んだ俺は見上げるように空を見る。



―――――――はあ、今日も太陽は明るいな・・・


俺は眠るように倒れている少女を横たえた後、空に浮かぶ光を少しの間眺め続けた。


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