表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
269/293

268 人の役に立つ?と気がきく?

【とあるサリー視点】


突然のミーナの策略にはめられた私はギルドの隣にある酒場でリツキさんたちと一緒に食事をすることになった。


私は仕事が終わったら一度家に戻って服を着替えて来た。

流石に仕事着のままじゃあ失礼に当たっちゃうかもしれないからね。


「あ、サリー遅いにゃ。おめかしも大事だけど時間を守るのはもっと大事にゃよ。」

私が急いで戻って来たらそこにはもう3人とも準備を済ませて私が一番遅かった。


「ご、ごめんなさい。待ちましたか?」


「あ、さっき来たところなんで大丈夫ですよ〜。」


「嘘にゃ。そこの少年はサリーが走って行く後ろ姿をバッチリ見てたにゃ。」

リツキさんの気遣いをミーナは一瞬で無に帰した。

悪いのは私なんだけど、ちょっとだけ文句も言いたくなった。


「ミーナ、今日はミーナの奢りだからね。」


「にゃっ!!?」

ふふふ、からかおうとしたミーナが悪いんだからね。

私は心の中で勝ち誇り胸を張った。


「あ、じゃあそろそろ移動しましょうか。といっても、隣に映るだけですけど。」

リツキさんは私が遅れたことを全く気にかけていないようで、柔らかい口調で声をかけてくれた。

私たちはその言葉に従い移動をした。





冒険者ギルドの隣には大体酒場がある。

理由としてはパーティを募集したり報酬金の回収だったりとか色々ある。

その理由の一つとして私たちギルド職員が近場で食事を済ませられるようにというのがある。


つまりどういうことかというと、私たちにとってこの店は馴染みの深い場所であるのだ。


「うみゃー、今日も今日で賑わっているにゃー。」

ミーナがそう言いながら空いている席を探す。

幸いなことに数カ所まだ空席があり、私たちは4人で一つのテーブルを占拠することにした。


テーブルについた私はなんとか一息つけたという感覚に見舞われた。



「そういえば、今日はどうしたんです?急に食事に行こうなんて。」

席について料理の注文を済ませたところでリツキさんが疑問に思っていたのかそう聞いて来た。


それに答えるのは当然誘った本人であるミーナ・・・のはずなのだがなんとなく嫌な予感がする。


「リツキさんたちは日頃よく働いてくれてその上おすそ分けとかを下さいますからね。日頃の感謝の気持ちです。」

だから私が先制をとって答えた。


「違うにゃ〜、サリーがおみゃー達に思うところがあるみたいだから食事を餌に釣ったのにゃ〜。」

でも、私のことを一切気にせずにミーナが思っていたことを口にしてしまった。

むぅ、私が思うところがあるって・・・そんなことないって!


「ちょっと何いってるのよミーナ!そういうのはないって何度も言ったでしょ!」


「うみゃ?でもサリー言ってたにゃ。この2人はちょっと不思議だって。」


「そんなこと、私がいつ言ったのよ!!」


「今日の昼ごろにゃ。なんであんなに強いのに雑用ばっかりやってるんだって不思議がってたにゃ〜、あ、サリーもしかしてそっちの方でも意識してたにゃ?なら悪いことをしたにゃー、謝るにゃー。何度も違うって言われてたから違うと思ってたけど、サリーは悶々見たいにゃ。少年、喜ぶにゃ。サリーは少年にぞっこんだにゃー。」


「ミーナ!!!」

私はいつもより強くミーナに怒鳴った。

有る事無い事言われてしまっては敵わない。ましてやそれを間に受けられて避けられでもしたら困るのだ。


・・・ん?困る?なんで?


自分の心の少しだけ疑問を抱きはしたけど、私はミーナの言葉を否定した。

いや、依頼云々は事実だからそこは触れなかったけどね。


「はぁ、確かにリツキさんたちの依頼には思うところがあってそういうことを話していたことも認めるけど、ミーナがさっき言ってた後ろ半分は忘れちゃっていいですからねリツキさん。」


「え、あ、はい。」

リツキサンも納得してもらったのでこれでいいとしよう。


「それで結局どうなのにゃ?この際だからなんであんな微妙な仕事ばっかりやっているのかを教えるにゃ。今日はにゃーの奢りにゃ、だから逃さないにゃ。」

ミーナはリツキさんを睨みつけた。その動作は見ようによっては脅しているようで、相手を不機嫌にしてしまうこと請け合いだ。


下手をすれば機嫌を損ねた彼が私たちに暴行を働きかねない。

でも、私はリツキさんはそんなことをしないと感じていた。


「俺たちが受ける依頼を決める基準はどれだけ人のためになるかーーーーってところが多いですからね。だから傷を癒す薬草採取やら街の整備清掃とかをよく受けてたんですよ。あ、料理が来たみたいですよ。」

リツキさんは何事もなく答えた。

それと同時に私たちのテーブルにりょうりがはこばれる。


ミーナは鮭のホイール焼き、パン、赤ワインとカットフルーツ、そしてサラダだ。

彼女曰くこの組み合わせがこの酒場では正解、なんだと言う。


リアーゼちゃんは焼き飯と焼き魚、スープに果実ジュースだ。

彼女はいざ目の前にそれが運ばれた来た時


「あ、あの、、本当にいいんでしょうか?」

と申し訳なさそうな目でミーナの方を見ていた。よくできた子だ。


リツキさんの前にはレッドバイソンのステーキ〜ガーリックオニオンソースと赤ワイン仕立て〜と米、コンソメスープ、それと水が。


そして私の前にはリツキさんと同じものが置かれていた。

レッドバイソンのステーキはそれなりに高価なため普段は絶対にこんなもの食べないのだが、今日はミーナの奢りだからね。


私は遠慮しなかったよ。


「それで少年?人のためになりそうなものが基準ってどういうことにゃ?それなら魔物を討伐しててもいいんじゃないかにゃ?何もわざわざ身入りの悪い仕事を知る必要はないにゃ。」

ミーナが行儀悪くもパンをかじりながら話を再開させた。

それに対してリツキさんは口の中のものをちゃん飲み込んでから答えを返す



ほらミーナ、こう言うところに彼とあなたの育ちの違いが現れているわよ。


「魔物討伐ってどのくらい人のためになるんですか?」

そして帰って来た答えは私たちが予想していたものとは少し離れた場所にあるものだった。


彼は魔物の討伐に対してそれを役に立つ仕事として考えていない様子だ。


「魔物を討伐すればその魔物が将来襲う人を助けられます。それに、放っておいたら街を襲うかもしれません。増えすぎて対処できなくなるかもしれない。だから継続的に魔物は狩る必要があります。」

私はそう説明した。魔物の脅威から人々を守るのも立派な冒険者の仕事、役に立っているのですよと言った。


だが私の話を聞いたリツキさんは微妙な顔をしていた。


「どうしました?」


「いえ、魔物の数を減らすのに意味があると言っているように聞こえたので、どう返したらいいかなと思いまして。」


あれ?私そんなにおかしなこと言ったかしら?


「少年、どういうことにゃ?」

ミーナは私の説明をおかしいと思わず、逆にリツキさんが何を言っているのかを理解できていないみたいだった。


「魔物は一定以上増えないようになっていますよね?なら別に町のそばに来て人を襲うやつ以外は別に放置でいいんじゃないでしょうか?」

私とミーナは言葉を失った。


魔物は一定以上増えない?彼は何を言っているのだろうか?


「少年、それはどう言うことかにゃ?」

リツキさんが言っていることが本当なら今までの常識を覆すことになるかもしれない。

私たちの頭の中は半分混乱状態だった。


私はふとリアーゼちゃんの方にも目を向けて見た。

彼女は目の前の食べ物と真剣に格闘している。でもなんとなく話がわかっていない様子だった。


「では聞きますが、魔物ってどうやって生まれていると思います?」


「魔物かにゃ?・・・そりゃあオスとメスが

合体して生まれるんじゃないかにゃ?」

が、合体なんてはしたない。そう思ったが私は口にしない。


「それもないとは言いませんがなんでもいいですが生殖機能のなさそうな魔物を思い浮かべてください。聞きますが、、そいつらはどうやって増えています?」

私は彼の言う通り生殖機能のなさそうな魔物を思い浮かべた。

オーソドックスなのはスライム系の魔物だろうか?


流動体で透明な体でどうやって増えているのか?

・・・・分裂?


スケルトンなどのアンデッド・・・・死体が勝手に動き出す?


幽霊系の実態のないもの・・・死後の怨霊・・・


メスしかいない種族・・・多種族を襲う?その場合生まれるのはどちらの子供?

ゴーレム系の魔物・・・そもそもあれは生き物なの?


私はギルド職員として数々の魔物の情報を扱って来た。

そのため次々と条件に合う魔物の姿が脳裏に浮かんでは消えていく。


「思えば、あれらの魔物はどうやって増えているのでしょう?スライムとかならまだしも、ゴーレムは意味がわかりません。」


「んみゃ〜、考えてみればアンデッド系とかも謎だにゃ。生息地がお墓とかが多いにゃが、倒しても倒しても勝手に増えていくにゃ。骨だけでどうやって増えているんだにゃ?」

ミーナもいくつか心当たりがあるみたいだ。だけど私と一緒で答えは出ない。


「まぁ、結論から言えばあいつら基本的に大地から湧いて出てくるんですよ。」

悩んでいる私たちに答えを示してくれたのはリツキさんだった。


「地面から?」


「はい、ちょっと質問を変えますが、お2人は魔物が死ぬところを見たことは?」


「あるにゃー、にゃーはこう見えても強いにゃ。オークくらいにゃら1人でもなんとかやれるにゃ。」

魔物の討伐経験?どうしてそんなことを聞くのだろうか?


「私はありません。もともと戦闘に不向きで職員になったのです。」


「じゃあミーナさんは知っていると思いますが、魔物は死ぬとどうなります?」


「そりゃあ当然灰になって風に吹かれて消えていくにゃ。」

それは私も知っている。魔物はその命が終わりを告げると同時に消え去ると、そしてその後には稀に体の一部が落ちているらしい。

ドロップアイテムというやつだ。


「ちょっと違いますね。あれ実は風が吹かなくてもすぐに消えていくんですよ。」


「にゃっ?そうなのかにゃ?」


「はい、そうです。まるで大地に吸い込まれるかのように消えます。それでさっきの話、魔物は地面からやって来ます。」

リツキさんは確かめるように再びその答えを口にした。

そこまでくれば私でも理解できた。


「えっと、つまり魔物たちは死んだ分だけ生まれてくるってことですか?」


「極論そうですね。」

私は驚愕に目を見開いた。こんなまだ誰も知らない知識を何事もないかのようにひけらかす彼が大きく見えた。

彼はいったい何を知っているというのだろうか?


「そ、そんなことをリツキさんはどこでお知りになったのですか?」

聞いていいのかわからなかったが、私はこれを聞かずにはいられなかった。


「あー、ちょっと前まで一緒にいた子のスキルにね『災禍の渦中ディラプサー』っていうのがあったんだけど、そのスキル項目に対してダメ元で『精密解析ソフィアナライズ』というスキルを使用したら詳細が出まして、そこに書かれていた情報がほとんど答えに近かったってことですね。」

半分くらい何を言っているのかわからなかったが、リツキさんは『精密解析ソフィアナライズ』と言っていた。

そのスキルはある意味で有名だ。


別名ポイント喰らい。

戦闘対しては凡人である証のノービスが覚えられるスキルだ。

魔物を倒すのが難しいクラスゆえにレベルが上げづらくスキルポイントを大切に使わなければならないノービス。

そんなノービスだけが覚えられるスキルポイントを25も消費して覚えられるそのスキルが引き起こす現象は鑑定のみという。


同じ25消費するスキルなの中でもまだ『状態異常無効化』は取る人が少数だがいる中、このスキルだけは誰も取ろうとはしないのだ。


そしてそんな最悪を後押しするかのように『精密解析ソフィアナライズ』はノービスをやめた瞬間、つまりクラスチェンジをした瞬間にスキルリストから消滅するのだ。

その際、消費したポイントも消滅する。


それ故についたあだ名がポイント喰らいだ。


「にゃー、『精密解析ソフィアナライズ』ってまさかおみゃーはノービスかにゃ?」


「はい、そうですよ。なんならお2人のことも調べて差し上げましょうか?」


「にゃ〜、女性のことを調べるとか、おみゃーは破廉恥なやつだにゃ〜。あ、でもサリーはすんごい調べて欲しそうだにゃ。」


「えっ、わ、私!!?」

えっ?リツキさんが私の体を調べるの?あんな所やこんなところまで調べられちゃの?

で、でも私たちまだ出会ってそれほど経っていないし、それに毎日顔を合わせると言っても十数分くらいだし?


そいういうのはまだ早いんじゃないかなって・・・


「無理にとは言いませんよ。別に何かあるわけじゃありませんし。」

「全然、全然無理じゃないんで私のことを調べてください!」

「は、はい。」

リツキさんが私の方に手を向ける。私はこれから何をされるのかと身構え目を瞑った。

そしてその時を待つーーーーーーーー



ーーーーーーが、一向に触れられる気配はない。それどころか


「はい、終わりましたよ。」

終わってしまった。

なんか、思ってたのと違う。


「にゃーサリーは面白いにゃー。サリーが目を閉じてプルプルしている時、既に少年の手は肉に伸びてたにゃー。」

ミーナの状況説明を聞いて私は恥ずかしさでいっぱいになった。


「そ、それで?か、かか、解析結果はどうなりましたか?」

私は恥ずかしさを誤魔化すように話題を変える。


「えーっと、ステータスの方は自分でわかってるでしょうから割愛、、、あとスキルも割愛します。」

ステータス、スキル両方バレたの?というかそれ以外のことがわかっているみたいなんだけど!!?

ま、まさかスリーサイズとかもぜんぶばれちゃっているの!!?


う〜、最近ご飯が美味しくてちょっとお腹がプニプニし始めたから気にしているのに・・・・


「まぁ、これをやる時知りたいのは固有スキルでしょうね。サリーさんの固有スキルは3つですね。」


「えっ?」


固有スキル?それってあの英雄の人たちが持っているすごいやつ?

それを私が?3つも?


「えっと1つ目は・・・『ツンデレ』?えっと何々?このスキルの保有者は素直になりにくくなります。まんまじゃないか・・・で、2つ目が『会計士』これは書類方面に強くなるスキル見たいです。で後は、、、、あ、すみません。3つではなくて2つでした。」

えっ?『ツンデレ』『会計士』?とても固有スキルと思えないようなしょぼいスキルなんですけど?


「にゃー?サリーは固有スキルを持ってるのかにゃ?」

「それについては知り合い曰く全員1つは持っているらしいですよ。ただ、強弱プラマイあるらしいので人にはあまり知られていませんが、そしてそれを見ることができるのが『精密解析ソフィアナライズ』ってわけですね。」

それも常識にないことなんだけど?今日ここにきてから私の中の常識がガラガラ崩れていってる気がする。


きっとこれは気のせいじゃない。うん。


「そうなのかにゃ〜。それも知らなかったのにゃ〜。常識はあてにならないのにゃ〜。ところで少年、それをにゃーにも・・・」

ミーナが私の結果を見て自分のことも解析してもらおうとしたのだろう。

頼むようなことを言おうとしていた。


だが、その言葉は不意に途切らさせられる。



カラン、、、

「あっ、リツキさん、ご、ごめんなさい。」

リアーゼちゃんの手が当たってしまいジュースの入ったコップが転倒、そのままリツキさんにかかってしまった。


彼のきている服は結構作りのいい服だ。それなりに高いものだと考えられるくらいには。

そんな彼の服には今しがたジュースによってつけられたシミがデカデカと映し出されている。


落とすのに苦労しそうだ。もしかして落ちないかもしれない。


私はリツキさんの顔を伺った。

彼は基本的には温厚だ。だが、時たま激流のごとく怒ることも私は知っている。

だから少し不安になったのだ。彼はこんな時、どんな反応をするのだろうか?


怒る?


笑う?


許す?


宥める?


彼がとった行動は私が予想したどれでもなかった。

彼は何が起こったのかを理解し、リアーゼちゃんの方を向いてニッコリと笑ってこう言った。


「リアーゼちゃんは気がきくね。ありがとう。」


リツキさんは予想の斜め上を簡単に飛び抜けていった。



スキル紹介『災禍の渦中ディラプサー


表説明文:魔物がいっぱいよってくる


裏説明文:大地に溜まっている存在値を引き出し魔物を呼び寄せる。これによって生み出された魔物は発動者の下に集結する。

生み出される魔物の強さは術者の強さに依存する。


非アクティブ状態でもある程度魔物は集まってくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ