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258 願いの力と脱出


俺が『魔剣ティルフィング』に願うのはどんな傷でも直すことができる回復魔法を俺に自信が覚えることだった。


一応最優先はノアの傷を治すこと。

なればそれを願っても良かったのだが、どうせなら自分の怪我も治したかったのとこれから先も使えるものが欲しいと言う思いから俺は魔剣にそう願った。


それにしても驚いたのはティルフィングが意思を持っていたことだ。

俺が願いを叫ぶとそれは覚醒した。


「ふわぁ、、久しぶりの契約者だねぇ。で、願いは回復魔法の一番すごいのをくれってところかね。了解了解。契約は成されたよー。じゃ、契約に従って魂の三分の一は貰っていくから。」

姿は見えないが女性の声だったそれは俺に回復魔法をくれると同時に俺の魂を持って行ったらしい。


願いを叶えて貰った直後、一瞬だけではあったがとてつもない苦痛が俺の全身を襲った。

今まで魔物とかと戦ってきて、ちょいちょい傷を負っていた俺ではあったが、その痛みは経験したことのないものであった。


そしてそれが収まった後、俺はゆっくりと自分のスキルを確認する。

そこには今までなかったものが一つ、増えていた。


星幽回帰アストラルリライフ


これが俺が魂の三分の一を差し出して手に入れたスキルの名前だ。

スキル名からはどの程度の効力を発揮するかわからない。だが、俺はそのスキル詳細を見てこのスキルの偉大さを知る。



スキル 『星幽回帰アストラルリライフ


効果

対象の状態を星の記憶を元に完全復元する。


消費MP 3000

詠唱時間 30秒

冷却時間リキャストタイム 2秒


その偉大さたるや、俺のMPを全て使っても発動すら許されないご様子だ。

ただ、星の記憶とやらは分かりかねるがとりあえず使えばその人は完璧に回復してくれるらしい。


そう、発動さえできれば!!


通常の人間ならここまで考えてうなだれるところだろう。だって、発動できれば願いは叶うけど普通は発動できないんだもの。


だが、俺には『神の小指けっていけん』のスキルがある。

これで冷却時間やら詠唱時間を犠牲にして消費MPをガンガンに下げてやる。

俺はスキル詳細ウィンドウを操作し始める。


ふんふふんふふ〜ん♪


こんな状況だってのに鼻歌まで出てくるぜ。


そして調整の結果、『星幽回帰アストラルリライフ』のスキルはこんなふうに進化を遂げた。


スキル 『星幽回帰アストラルリライフ


効果

対象の状態を星の記憶を元に完全復元する。


消費MP 600

詠唱時間 1200秒

冷却時間リキャストタイム 6000秒


とりあえず発動できるまで消費MPを抑えた。

1500くらいまでは普通に下がったんだが、それ以上下げるためには大量の冷却時間と詠唱時間の増加を必要としたのだ。

だがとりあえずこれで準備は整った。


俺は隣で寝ているノアの方を向いて詠唱を開始した。

俺の意思とは関係なしに口が何かをぶつぶつ呟き始める。


・・・初めて魔法系のスキルを使ったけど、詠唱ってちょっと不思議な感覚だな。

俺はその状態で20分ほど待っていた。


そしてついに、魔法が発動する。

洞窟内の暗闇を照らす明かりがノアを包み込む。そしてその光は次第に傷口に集まっていき、その傷をみるみるうちに再生させた。



そして光が収まる頃にはノアの体には一つも傷は残っていなかった。

その光景に俺はとりあえず安堵した。

あとは100分後に自分を治療して終わりだな。





その目論見通り、一時間と40分ほど後に20分の詠唱を経て俺は最後の仕上げを発動させた。

自分で受けてみてわかったがこの回復魔法はとてつもない効果で、失われた血液さえも戻ってきた。

スキル説明などを踏まえて考えるに、どこかに保存されている俺たちの身体データをコピペしたって感じだ。


つまり、治療というよりは巻き戻しといったほうが正しい能力だ。


五体満足の自分たちを確認した俺はノアが起きるまでゆったりとしていた。













そして俺たちの傷が全快してから1時間と21分でノアが目を覚ました。

時計もないのに正確な経過時間がわかるのはスキル欄の残り冷却時間を眺めていたからだ。

その間、これと俺のスキルを使えば24時間を表す時計が作れるんじゃないか?と思ったりもしたが、そんなもののために使うスキルは持ち合わせていなかったため保留にした。


「むにゅ、、、ん?ここ、どこ?」


「起きたかノア。とりあえずおはよう。」


「あー、タクミだー、、、」

ノアは半ば寝ぼけた様子で俺に抱きついてきた。それを俺は両腕で受け止める。

うん、やっぱりちゃんと手足があるのは素晴らしいことだ。


「えへへ〜。ぎゅーっ。」

ノアの腕に力が入る。その抱擁はいつものものより力強かった。


「おいおいそんなに甘えてどうしたんだノア。」


「あのね、タクミ。ボク怖い夢見たの。」


「怖い夢?」


「うん。ボクが怪我しちゃってタクミと冒険が続けられなくなる夢。すっごい悲しい夢だったの。」


「・・・・そっか。夢でよかったな。」


「うん!夢の中でね、タクミがこれは夢だから安心しろーなんて言ってね。ボクすっごい安心したんだ。やっぱりいつでもタクミは頼りになるねー。」


彼女は寝る前の出来事を俺の言った通りに夢だと認識してくれたみたいだった。

俺はこのことに関してはあんまり掘り下げないほうがいいだろうと思い、別の話題を出すことにした。


「それよりノア、今俺たちは割と危機的状況に陥っております。」


「えっ?」

ノアが俺の言葉の意味を探ろうと周りを見渡す。当然ながらその目に映るのは暗闇だけで何も見えない。

そんな暗闇の中ノアは火の玉ことウィルくんを呼び出して周りを照らしていく。


ここはやはり俺が予想した通り洞窟の中だった。


「えっと?これはどういう状況?」


「そうだな。ざっくりいうと転移によって飛ばされてしまったってところかな?まぁ、ここがどこであれ早く脱出しないと俺たちは飢えて死ぬから早く行動しようぜって話だ。」

俺たちのパーティは普段リアーゼが食料を持っていた。

つまり今現在俺たちは食料を持っていない。


幸いなことに水だけはノアが魔法で出せるので、まだ少しは余裕があるがこの洞窟の長さがわからないうちは安心できない。

つまりパパッと外に出て安心を手にしたいのだ。


「う〜ん、、そうはいうけどタクミ。これじゃあどっちに行けば外に出られるのかがわからないよ。」

ノアの言い分も最もだ。まぁ、こういう定番の正解はどっちから風が吹き込んでいるかーーーなんてものを考えるんだよな。


ノアが起きるのを待っている間やって意味がなかった行為だけど。


「この洞窟は結構音が反響して遠くまで聞こえるんだ。だからさ、大声で助けを求めるっていうのはどうだ?」


「う〜ん、、、人より魔物の方がきそうだよねそれ。」

だよなー。最悪の場合はそれで魔物をおびき寄せて肉にして食うということを考えたのは内緒だ。

ノアに引かれかねない。


「だからさ、ここにいても拉致があかないからとりあえず周辺を探索しよう。ノアがいるから明かりも万全。案外近くに出口があるかもしれないしさ。」


「そうだね。じゃあ最初はどっちに進むのがいいのかな?」

ふむ、せめてこれが洞窟の最奥とかだったら話は早かったんだけど、この場合は間違えて深くに潜ってしまうという可能性もあるんだよなぁ。


「じゃあ、こっち。」

俺は迷わず一方を指差した。そしてノアを下ろして進み始める。

ノアは少しだけ慌てたようにしてついてきた。


「こっちにした理由は何かな?」


「勘。」

ノアの質問に俺は迷いなくそう答えた。だがこれは嘘だ。

実を言うと逆方向には行きたくない理由があった。

というのも、その方向はノアが這いずって彼女の血が地面にべっとりついているのだ。


それをノアに見せたくなかった。もし見せてしまうとアレが夢じゃなかったことになるからな。

それに、俺もそこを通るのは気が乗らなかった。


俺たちはそのまま洞窟を道なりに進む。フヨフヨ浮いている明かりのおかげで真っ暗闇でも安心だ。

ここに飛ばされたのが俺一人でも、ノア一人でも何気に詰んでいたな。

そんなことを考えながら進むとついに分かれ道にぶち当たった。


「・・・さて、どっちに進もうか。」


「というかタクミ、君確かリリスのいたダンジョン、初めてのはずなのに道がわかってたよね?今回はそういうのないの?」

ノアが不思議そうに聞いてくる。その質問への答えは残念ながらノーだ。


アレは入り口から入った場合にしか使えないダンジョン探索術の一つのようなものだ。

それに、明らかに人の手が入ったダンジョンと洞窟だと勝手が違ってくる。


「まぁでも、ノアにかっこいいところを見せるために確認作業の一つでもやってみようか。」

俺がそう呟くとノアが「タクミはいつもかっこいいよ。」なんて嬉しいことを言ってくれる。

それはさておき、ここでダンジョン探索術その2を見せる時だ。

実際に2の数字がついているわけではないが、この世界に来て披露するのが二番目なのでその2だ。


「ということでノア、ちょっとでいいから離れてくれ。」


「む、わかったよ。」

ノアと俺はこれまでぴったりくっつくようにして歩いていたのだが、ここで一旦距離を置く。

そしてある程度距離が離れたと判断したところで俺は剣に手をかけた。


「武器なんか取り出して何をするつもりなの?」


「本当は剣より槌とかの方がいいんだけどなー。」

俺はそんなことを言いながら剣を強く壁に叩きつけた。

まずは左側だ。

俺が剣を叩きつけると当然というべきかあたりに音が響き渡る。

その音を俺は注意深く聞いた。

その際、ーーーーちょっと、私の扱い酷くない!!?


という声が聞こえた気がするが気のせいだ。剣が喋るはずないのだ。


そしてその音が完全に鳴り止んだ後、俺は逆側の壁に剣を叩きつける。

そしてまた音を聞く。



・・・・・・・

・・・




「よし、右側に行こう。」


「おぉ!!タクミ!今のはもしかしなくても反響エコーっていうやつだね!!?あの音の反響で洞窟の中を把握するーーー」

ノアが目を輝かせて俺の方を見る。完全な尊敬の眼差しだった。

しかし残念ながら今のはそんな高度な技術ではない。


そんな器用なことは俺にはできない。

だが、ノアのその推察は当たりはしないものの遠すぎはしないのだ。


「いや、俺がやったのは左右に空洞があるかを調べただけだな。ノアが今言ったようなことは流石にできないけど、壁を叩けば中が詰まっているかくらいは素人でも簡単にわかるんだ。」

普通に壁の先が詰まっていたら叩いた時にこの場所だけで反響する。

だが、その先に広めの空洞があった場合は抜けた音がそちら側でも響くから結果叩いた時に違う音が出るのだ。


これはゲームをやっている時に隠し部屋を探すために壁を殴り歩いた人には馴染み深い技能ではないだろうか?


とりあえず、叩いてみた感じ左側にはまだいっぱい空間がありそうだったので先に何も詰まっていなさそうな右側の通路を調べることにしたのだ。


「ほえ〜、、すごいんだね〜。」

ノアは感心しているが実際にやって見ると案外誰でもできることだったりするので俺は少し居心地が悪かった。


そんなやりとりの後俺たちは分かれ道を右に進む。





お?少し上り坂になった。これは外に近づいたということでいいのか?


「ねえねえタクミ!!見てみてちょっとだけ明かりがあるみたい!!」

ノアが一度ウィルくんを引っ込める。

確かにこの通路は先ほど俺たちが休んでいた場所より明るかった。

どこかから光が漏れ出ているのだろうか?



「光源はこの先か・・・あたりだったか?」

明かりとういことは外が近い、ないしはどこかに人がいるという事だ。

さっきの分かれ道での判断は合っていたということだろう。


そう考えると俺たちの足取りは自然と早くなる。

少しだけ上り坂になっている通路を登りながら光の出ている場所を目指した。



そしてその先には一つの大きな扉があった。


「・・・光はこの先から出ているみたいだな。」


「ということは、この先は外!!?」

外に出れるかもしれないという事実にノアのテンションが大きく上がった。

そうなるとノアは止まらない。流石の彼女も暗闇の中で歩き続けて飽き飽きしていたのだろう。


体力的には問題ないが、精神的には少し披露しているみたいだった。

それも無理はない。俺の冷却時計ーーーさっき名付けたーーーによれば歩き始めて3時間近くたっているからな。

ちなみにこの冷却時計には『挑発』のスキルを使っている。


最近何かと出番が少ないからな。魔物も出ないし今はなくてもいいだろうと思っての改造だ。


ノアが目の前の扉を引っ張る。

そしてーーーーーーーー


「タクミー、あかない。開けてー。」

彼女の腕では開けられず困った顔でこちらに振り向いた。その顔はペットボトルの蓋が開けられなくて困っている子供のものだ。

正直すごく可愛いと思った。



「ん、了解。」

俺は扉に手をかける。

お、結構重い?俺はそのまま力一杯引っ張った。


「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぃ、、、『白闘気』、膂力重視ステロイドシフトだ!!」

スキルまで使って全力で引っ張るとその扉は重い音を響かせながらゆっくりと開き始めた。


俺は人が通れるくらいまで開けたことを確認して力を込めるのをやめる。

そして扉の先を見つめた。その扉の先にはーーーー



「貴様ら何奴だ!!」

「どこから湧いて出た!!」

鬼の形相でこちらに槍を向ける二人の男女の姿があった。

あ、一応外っぽい。

最近気づいたんだけどこの作品の文字数が100万文字を突破したぞー!!

めでたい、めでたい、、、めでたい?


とりあえずブックマーク200突破の方はかなりめでたいと思います。みなさんそこは感謝です。


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