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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第1章 少女の陰と手にしてしまった罪
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25 影を纏う少女と光を奪う剣

その少女は、こちらを見てニタリと笑った後、俺たちから目をそらす。そしてその視線の先には、初めに俺が殴り倒した男の姿。


まさか彼も同様に取り込むつもりだろうか?

俺はそう思うや否や、近くに落ちていた木の剣を拾って走り出す。彼女を止めるためだ。

だが、距離があるせいか間に合うはずがない。少女はそのまま気絶して無抵抗の男に向かってその手を伸ばした。


先ほどのことを考えると、今の状態の彼女に触れただけで影にとらわれてしまい、その状態で再び触れられることによって吸収されてしまうみたいだ。

そして少女の手が、男に触れる――――直前に、


「させないよ!!ウォーター!!」


ノアが魔法によって妨害を試みる。


「よし、よくやったノア!!」

得体のしれない状態になっていても、あれは戦闘すらできない少女だ。魔法によって攻撃を加えられれば、大ダメージは免れない――――はずだった。


「アハ、アハハ」

少女は自分の身に危機が迫っているのにもかかわらず、笑う。可愛らしい笑い方だが、今はそれが奇妙に思えてしまう。

そして、ノアの放った魔法は、少女にぶつかる直前、その身に纏っている影に触れた瞬間に消えてしまった。当然、少女に対して何か効果を及ぼした様子はない。


「え!?なんで!?」

ノアは驚愕の表情を浮かべながら、そう叫ぶ。


ノアの魔法を無力化した少女は、そのまま倒れている男に触れる。そしてその体は、先ほどのように一度影に覆われる、のではなく、そのまま吸収されてしまった。

それと同時に、少女を覆う影が大きくなったような気がした。


彼女の体にあの影があらわれた時のことを考えると、人を吸収したことによってあの影は増大しているみたいだ。


少女は近くにいた男を吸収し終えると、その目をまたほかの方向に向ける。

次の標的は、ノアが吹き飛ばしたナイフ男のほうだ。また、彼も吸収するつもりなのだろう。


「そうはさせるかよ!!ノア、フレイムピラーを用意しておいてくれ!!」


「え!?でもボクの魔法は効果がなかったよ!?MPの無駄遣いになるんじゃない!?」


「いいから、ちょっと試しておきたいことがある!!」


「そういうことなら、やるけど―――――」

彼女は俺の指示に渋々ながらも従う。そして俺は少女と男の間に割って入る。

今回はあらかじめそこそこ近づけていたのと、少女と次の標的になっている男との距離が開いていたことで、普通に間に合った。


俺は二人の間に割って入った直後、手に持っていた剣を少女に向かって突き出す。

直接体に触れてはいけないことはわかっているが、武器までそうなのか?また、あの影に攻撃は通用するのか?

それらのことを早めに調べておきたかった。


突然、目の前に現れて攻撃を仕掛けてくる俺に、驚いたのだろうか?

少女は大きく後ろに飛びのき、俺の攻撃を回避した。


そして距離を置いた先で、俺のほうをじろじろと首をかしげながら見ている。その表情は、先ほどのような残酷なものではなく、不思議なものを見ているように思えた。


その後少女は、足元に落ちていた骨の魔剣を拾い上げる。俺と戦うつもりだろうか?

しかしそれならば相手はこちらの体に触れればいいだけなのだから、武器を持つことに意味は・・・


「いっくよー!!フレイムピラー!!!」


ノアは詠唱が終わったと同時に、少女に向かって再び魔法を放った。ウォーターとは比べ物にならないほどの威力、それをためらいなく放つことができたのは、自分の魔法が効果をなさないと分かっているからだろう。


少女は、ノアの魔法をその一身に受ける。彼女はその場から動くことなく、魔法を耐え続けた。


そして、炎の柱が役目を終えてその勢いを失う。

その中からは、今も変わらず笑いながらたたずむ少女の姿、その姿は魔法攻撃を受ける前と変わらない――――わけではなかった。


1つだけ、明らかに変化している点があった。


それは彼女が纏っている影だ。その影は、魔法を受ける前と後とでは、量も濃さも目減りしている。

「予想通り、魔法は吸収ではなく、相殺していたみたいだな。」


「へぇ、なるほどぉ、ならボクが彼女に攻撃を加え続ければいつかは無力化されるっていうことだね?」


「ああ、多分それでいいと思うんだが、ひとつ気になることがある。」


魔法を受け、その身に纏う影が大きく減らされた後の少女は、先ほどまでより楽しそうに


―――――ケラケラ、、


と笑い続けている。何か、まだ何かあるはずだ。

確かに、魔法を与えればあの影を削ることができるのはできるのだろう。しかし、俺の勘がそれだけではいけないとささやき続けている。


その時、俺はそれを見つけることに成功した。


笑い続ける少女、そして彼女にまとわりつく目減りした影。

その影が、少しずつではあるが、増えているのだ。先ほどまで、なかった光景だ。



俺はすぐにその原因は特定することができた。

それは彼女が手に持っている、骨の魔剣にあるのだろう。俺はこの位置から、骨の魔剣のアイテム詳細を開く。



名前 骨の魔剣 

効果 物理攻撃力+40 光属性(並)

説明 スケルトンナイトが持っていた剣。高位のスケルトンの骨を使って作られたものだが、何故か光属性である。


大体の項目は同じであったが、ひとつだけ違う点がある。それは属性値だ。


俺があの剣を入手したとき、記憶が確かなら属性値は弱となっていたはずだ。

それなのに、現在あの剣は光属性(並)がついている。この短期間に進化しているのだ。その理由は何か?


今の状況を見ればそんなこと、考えなくてもわかることだった。そして、俺が今からやるべきことも・・・


「はぁ、せっかくいい武器を手に入れたと思ったのにな・・・」


俺は今なお笑いながら影を増やし続ける少女に向かって、走り出した。


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