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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第6章 偽の正義と熾烈な戦い
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248 王?と王!


やっと戦争が終わった。

最初は嫌々連れて来られて半強制的に参加させられたこの戦いだが、終わってみると案外感慨深いものがあったりなかったりだ。


今から閉会式もとい終戦式なるものがあるらしいので、俺たちは案内の兵士の指示に従って舞台の方へ向かう。


そういえば、ライガ達は負けてしまって残念だったな。


途中までは一方的に攻撃できていたのだが、最後に突然倒れ伏してしまった。

観客の目にはあれはどう映ったのだろうか?

一発逆転劇?


俺にはライガ達が適当にあしらわれたとしか見えなかった。

そのくらい、エンドルシアと勇者パーティには開きがあったのだ。


俺たちがフルメンバーで戦ってあれに勝てるか?

と問われても「わからない」と答えるくらいには得体の知れない強さがあった。



なにせ、相手はライガ達に触れすらしていない。

突然倒れたのだ。

その能力の根幹に何があるのかを知らない限り、勝つことは難しいだろうと思えた。


本当に、俺たちの相手があれじゃなくて助かった。




舞台に下りると戦いの途中で大怪我をして医務室に連れていかれた奴らがもう既に待機していた。


・・・あのまま休ませてやればいいのに。何も無理に連れて来なくても。


未だに痛々しい怪我を周りに見せつけながら立っている姿を見て俺はそう思った。


「開会式と閉会式があって、そして観客がいて、選手は真ん中で、、、ってなんか運動会を思い出よね。」


「あー、律識の『玉転がし事件』とか?」


「あはは、それは忘れてもらえると助かるんだけど。そもそもそれ、提案したの匠だよね?」

あれ?そうだったっけな?

俺と律識は軽い談笑を交えながら式が終わるのを待つ。


この場には開会式の時にいた全員が揃っている。

つまり死傷者は誰もいなかったということだ。


勝敗だけは明白に決まって、戦死者0って言えるならこういう戦いも割とありなのかもしれないな。


そんなことを思っていると、王様三人衆がそれぞれ甲冑騎士を伴って姿をあらわす。

騎士の体格はそれぞれだった。

妙に大きい奴もいれば、逆にすごく小さくて子供みたいなサイズのやつもいる。


あの中身は小人族とかだろうかな?





そして始まる終戦式。

またもや長々とした話を聞かされる俺たち。

怪我人に負担がかかるからやめてあげてほしい。そして俺たちも学校の全校朝礼を思い出すからやめてほしい。


そんなことを切に願いながら、立場上下手に動くことができずに終わるのを待っていた。

ちくしょう、こういう時周りで見ているだけのやつはいいよな。


帰ろうと思えば自由に帰られるんだからさ。



「それでは、此度の戦の功労者への褒美の授与に入る!!」

あ、なんか式の方に進展があった。

ディオニス王が手に何か箱のようなものを持って動き始める。

箱は細長いものだった。


王様は俺たちの方に目を向けて一言。


「タクミ殿、こちらにきてもらえるか?」

と少し穏やかな口調でそう言った。

俺は周囲を少しだけ確認したあとすぐに諦めその指示に従い前に出ることにした。


本当はこういうの柄じゃないんだけどな。


少しだけ照れ臭くて苦笑いになるのが自分でもわかる。

俺は王様の前まで来て跪いた。


「タクミ殿、貴殿らは本当によくやってくれた。他のものが不甲斐なく相手にほとんど傷を負わせないまま敗北していく中、お主らだけは我が国に勝利をもたらしてくれた。余はそれがとても嬉しい。」


「はっ、ありがたいお言葉。感謝いたします。」


「今回我が国での一番の功労者はお主らだ。ひいてはそのリーダーであるタクミ殿である。故に、余からの贈り物、貰ってくれるか?」


「ははっ、ありがたく頂戴致します。」

こういう王様とのやりとりは数々のゲームで体験してきているのだが、どうにも慣れない。


この世界に来てから貴族とか王族とかそういうのにはなるべく触れられないようにと思っていたのはそれが理由だったりする。


「そうか。受け取ってくれるか。感謝するぞ。」

王様の少し嬉しそうな声が聞こえて、金属の擦れる音がする。

多分だが、あの長い箱を開けた音だ。


そしてそこから何か手に取る音までは聞こえて来た。

多分中身は剣とかそのあたりか?

わずかに聞こえた音と先ほども目視した箱の情報からそう推測した。



さて、受け取るなら腕を上げなきゃいけないよな?

俺は割と適当な感じに授与を受ける時の体勢っぽいのをとる。

こういうのは形が割とあっていれば案外誰も何も言わなかったりするから本当にてきとうだ。


俺が授与を受けるべく、両手を上げたその時ーーーーーー



「「タクミ!!」」

ノアとリリスの叫び声が同時に聞こえた。


その声はあまりに焦燥したものであったため、俺も反射的に顔を上に上げてしまう。

彼女たちに何かあったのだろうか?その思いで顔を上げた俺が見たのはーーーーーー



「では、遠慮なく受け取ってくれや。」

無骨な剣を振りかぶり、今にも振り下ろしかけている王の姿であった。


「ーーーーーーっ!!?」

俺は途中まで上げていた腕をそのまま一気に頭の上に掲げてクロスさせて力を入れる。

そして衝撃に備えた。


「カッ、ギリギリで気付きやがったか。」

王?はそのまま剣を振り下ろした。その一撃は間違いなく頭を垂れていた俺の首元を狙う一撃であり、そして人間の首を跳ねるのには十分すぎる威力を備えていた。


その剣が俺の腕を切り裂く直前、俺は『理力結晶の剣』をなんとか発動させることには成功した。

王?の剣と俺の腕の間には一枚の緩衝材が挟み込まれる。


「ぐああっ、、、」

だが、それだけでは振り下ろされる剣の威力を消すことはできなかった。

激痛が腕に走る。


体重がかかった一撃なのか、想像よりずっと重い。

痛い。痛いーーーー腕が焼けるようだし、何やら硬いものが体に入っている感覚が気持ち悪い。


「ノア、早くタクミを!」


「ご、ごめん!!すぐに回収するね!!」

次の瞬間。俺の視界が暗転して一瞬で別の場所に切り替わる。


そして目に移って来たのは剣を振り下ろしたままの体勢で止まっている王?の姿と、その足元にある血液でできた水たまり。

加えてその中心には何やら肌色の物体が落ちていた。


痛い。右腕が、、、あと左腕も痛い?


「タクミッ、腕が・・・ご、ごめん。ボクが助けるのが遅れたから・・・。」

腕?俺のうで?


俺は少しだけの恐怖を振り払い、一番痛んでいる右腕を見る。

うん、、ないね。


そっか、、、切り落とされちゃったか。

じゃああそこに落ちているのって俺の腕か。


あ、左腕も三分の一くらい切れてるや。

これじゃあどっちの腕も使いづらい。


「あああああああああああ?」

現実を認識した俺の喉から、自分でも初めて上げるような声が聞こえて来た。

見ると右腕は肘の少し先あたりから切り落とされており、断面からは血が出ている。


そして左腕もそれなりに深い傷を負っていた。

どうしてこうなった?


俺はその元凶の人物に目を向けるも、うめき声以外の声は出ない。


「お、王様!!?一体何を!!?」

だが、代わりにライガが問いかける。正義感に溢れた彼は、王?の突然の行動に混乱していた。


「何をだって?そりゃあ決まってるだろ?そいつを殺すんだよ。いや、そいつだけじゃねえけど、今日は絶対そいつだけは逃がさねえ。ついでに他の奴らも皆殺しだ。ギャハハハハ」

王?は笑う。

思い通りに計画が運んだことが嬉しくて、笑う。


その笑い声は俺にとっては忿怒を掻き立てるものでしかない。


「タクミ、有り合わせで悪いけどこれを使って。あなたの言うことはちゃんと聞いてくれるはずだから。それに、あなたは私の眷属こどもだから拒否反応もないはずよ。」


痛みに震えながらも、心の中で怒りを溜める俺の右腕にリリスが何かを押し当てた。

すると次の瞬間、傷口を何者かが押し開きながら肩のあたりまで入り込んでくる感覚。


体の中に異物が入ってくる感覚。

気持ち悪い。


「があっ!!?リリス、何を・・・・?」

俺は何をされたのかを確認するために腕を見る。


そこには腕がーーーーあった。

気づけば痛みもある程度引いている。


「どう?タクミ、動くかしら?」

リリスの声を聞き、俺は腕を動かして見る。


「ちょっとだけいつもより勝手が違う、けど、動く。ありがとう、ノア、リリス。助けてくれて。」

リリスがいつの日か見せてくれた欠損部位をスライムで補いというやつだ。

人体に使うのは拒否反応がどうとかと言っていた気がするが、その課題は俺がリリスの血を飲んだ瞬間に解決していたらしい。


「う、本当にごめんね。ボクが遅れちゃったばっかりにタクミがこんな目に・・・」


「気に、するな。次があったら今度は完璧に助けてくれたらいいさ。」

ノアは何も悪くないし、ここで彼女に当たっても仕方がない。

この怒りは本人に返すべきなのだ。


俺は立ち上がり王?を見る。


「ギャハハハハ、予想はしてたが、『子狂い』の眷属になってやがったな。それにしても、仕留め切れなかったのはちと痛いか?」


「んもう、何やってんのさ。絶好のチャンス、仕留め切れなかった責任は重いわよ。」

王?に帝国の女皇帝が話しかける。

闘技場内は終戦式の途中で半数が帰ったと言っても、まだ数多くの人間がこの状況を見ていた。


観客たちはどうしていいかわからず、ただ黙ってこちらを見ていた。


「仕方ねえだろう?急に瞬間移動したんだぜ?追撃できりゃあのまま殺せてたよ。ありえるか?瞬間移動だぞ?転移系はレアスキルだってのによ。」


「確かに転移ができるスキルは数少ないけどぉ、それでも考量するべきだったじゃない?そもそも、事前調査で分かってたっつーの。」


「あ?そうだったか?すまんな、文字を読むのは嫌いで渡された紙、最初の作戦概要しか読んでねえわ。」


「はぁ、呆れた。そもそもあいつの周辺調査もやってたはずでしょ?その時もいろいろ分かったはずよ?」

そんな沈黙の中、王?と女皇帝?は誰よりも軽い空気で会話を続ける。

俺たちは動けないでいた。


だが、そんな中動いたのが1人。


「もう一度問います。どうかはぐらかさないで教えてください。王よ!あなたは何をしているのですか?」

ライガ、彼はやはり勇者であった。

この状況に怯まず、怪しさマックスの王?に問答を始めようとする。


王?はライガの方をちらりと見て思い出したかのように笑った。



「ギャハハハハ、さっきも言ったろう?ここに集めた奴らを全員殺すんだよ。・・・素敵だろう?なあ!!」

王?は笑う。


危機がそこまで迫っていながら、状況が把握できていない俺たちを見て。



戦争 (前座)が長くて書いている作者本人もあれが6章メインの話だっけ?と思い始めていた頃、やっと話が進んだ感。


まぁ、多分こうなることは予想ができていたでしょうから驚きは薄いだろうけどね・・・


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