246 世界の疑問から
【エンドルシア視点】
私は困惑している。
わからないことだらけだからだ。
目の前には王国の戦士たちの姿。彼らは私を取り囲むように展開して武器を向けてくる。
「相手を人間だと思うな。大黒妖鬼と戦っていると思え!!」
相手のリーダーがそう叫ぶ。
全く持って失礼な輩だ。可愛い私を『大黒妖鬼』みたいな可愛さのかけらもないデカブツの魔物と同一視するなんて。
甚だ不愉快だ。例えるなら『ハクラビット』とかそこらへんの可愛いのにしてほしい。
ちなみに、戦闘力で言えば『大黒妖鬼』より『ハクラビット』の方がちょっとだけ弱い。
でも、可愛い。実は一時期ペットとして飼っていたことがある。
途中で大きくなりすぎて家に入らなくなったから渋々外で飼うことにした次の日に『古代の凶狼』に食べられちゃった。
今思い出しても、悲しい。
「リオーラ、足場を乱せ!!アイナはダミアンに筋力強化!」
「「了解!!」」
さっきまで真っ平らだった私の足場がデコボコしたものになる。
なんとなくだけど歩きにくい。
「『紫龍』よ!あいつを拘束しろ!!」
それにしても、どうして私はここで戦っているのだろうか?
今回の戦争、ちょっとおかしい。
私は飛来してくるバチバチいっているのをはたき落した。
私の手に触れたそれは空中で霧散する。
どうしてこんな戦いに私が呼び出されているの?それどころか、私と同じ境遇のみんなもいっぱい。
いつもなら呼ばれても2、3人だし、私が呼ばれることはなかったはずだ。
少なくとも、私が生まれてからの800年くらいはそうだった。
それなのに今回に限ってどうして?
「チッ、歯牙にも掛けないか。なら、これならどうだ『烈風刃』!!」
おっと、、、考え事をしてたらなんか飛んできた。当たったら血が出ちゃうかもしれない。
私はぴょん、と横に飛んで風の刃を避ける。
着地点の地面状況があまり良くない。べちゃべちゃだ。
デコボコの周りはいつのまにかべちゃべちゃになってるみたい。
えっとそれでなんだっけ?あ、そうだ。
今回に限ってどうして私が呼ばれたのって話だね。
相手が強いから?じゃ、ないよねきっと。
ここ80年くらいは帝国は王国に負けなしだったはず。それが今回に限って違うとは限らない。
そういえば、強いといえばさっきの王国側の人たちはなんだったんだろう?
人間、、、とは感じがちょっと違うよね?
かといって完璧な悪魔は2人だけ、残りはどっちつかずの気配がしてたよね?
う〜ん、わからない。
そもそも何故か欠員すらある今回の帝国側に、何故かフルメンバーで構成された1つのパーティ。
そしてそこだけが負けるっていうのもおかしいかも?
相手が強いとわかって戦って、それで負けたった感じだった。
でも、戦う相手は直前に案内された観客席で知らされたんだよね。
相手が合わせた?内通者?
「リオーラ、君は奴の周りを塞げ!あとアイナはダミアンの支援が一通り終わったら俺にも支援をくれ!!」
ありゃ?炎に囲まれちゃった。
私の家は山の頂上にあるから、こんなにあったかいのは久しぶりだね。
でもこんなに火力が高いと服が焦げちゃうからやめてほしいかな。
「ダミアン、今だ!全力で一発お見舞いしてやれ。それと、すぐに戻ってこいよ!」
「合点承知、ドカンと叩きのめしたらすぐに取り戻してやらぁ!!」
あ、炎を突っ切って大男が入ってきた。
顔を見たらすっごい怖い。目を見る限り、正気を失っている?
あ、狂化か。
入ってきた大男は大上段から斧を振り下ろしてきた。
これ、避けたら服が焦げちゃうな。それは嫌だけど当たっても痛いだろうし・・・どうしようか?
とりあえず炎は消しておこう。放っておくと危ない。
そして炎が消えて仕舞えば避けてしまっても服は無事。
今日は表舞台に出るということで可愛い服を着てきているから、ダメにされたくないんだよね。
「うごああああああ!!喰らえ、喰らええ!!」
大男の攻撃は一度では止まらなかった。
重そうな見た目の斧を片手でブンブン振り回す。
とりあえず危ないからこれは没収だね。
離れたところに置いておくよ。
「がっ?はぁ、、ふぅ、、な、何が起こった!!?」
大男の狂化が解けた。
「ダミアン、一度俺のところまで下がれ。そこにいては危険だ。」
「くっ、何をされたかわからねえが仕方ねえ。」
そういえば、獣王国も謎だ。
どうして獣王自らこれを見にきている?
彼の国は何の関係もないのに。というかそれをいったら王国王と皇帝もおかしい。
もはやただの小競り合いとなんら変わりない、戦いというよりかはお祭りの風潮が強くなってきた戦争に、何故国のトップが動く?
一応戦争の体を要しているから?
でもそれなら毎回顔を見せるはず。
謎なのは今回に限ってということなのだ。最後に来たのは11年前に王国側の王様が見にきたんだったっけ?
確か新しい国王の顔見せっていうことだったかな?
・・・そういえば、その次の年には帝国のトップである皇帝も変わった。
逆にその前の年には獣王が代変わりしたんだっけ?
・・・同時期に王に就任したもの同士何か企んでいる?
戦争の観戦をしているのは話すために集まるための口実作り?
でもそれじゃあ私が呼ばれた理由がーーーー
「リオーラ、俺が出るからまた足止めは頼む。ただし炎以外の方法でだ。ダミアンは俺についてこい!!」
ん、なんか周りの土が盛り上がって家みたいのができた。
かなり狭い。腕を伸ばせば壁にぶつかるくらい。
そしてここはそんなに狭いのに、男が2人がかりで突撃してくる。
・・・いい加減、そろそろ倒そう。
考え事は戦いながらすればいいやって思ってたけど、何度も思考を中断させられる行動を取られて面倒だ。
「ーーーー『私以外が、無力の世界』へ。」
その言葉の直後、私の指示に従うように周りの世界が塗り替えられていく。
魔力によって維持されている壁はその力を失い、崩れ去った。
筋力によって動いている目の前の戦士たちは、その力を失い勢いそのまま前から地面に倒れる。
私の周りの地面はべちょべちょでなので倒れる時の音はベチャっというなんとも間抜けなものだ。
少し離れたところでは、2人の女性が同様に倒れたり地面に座り込んだりしている。
倒れたものはもうそれ以上動く気配はなかった。
でも、別に死んでしまったわけじゃないよ?
最低限のものを除き、力が抜けて立てないだけだ。
こんな感じに、自分の都合のいい場所を作り出すのが私の力。
ここでは私の決めたルールは絶対。そしてこれに逆らうことはできない。
だってこれがこの『世界』のルールだもの。
倒れて動かなくなった戦士たちを見た審判が私の勝利を告げる。
観客たちはーーーー目の前の男たちもーーー何が起こったかよくわからないみたい。
それでいて地味な終わり方をしたからちょっと憤っている。
会場は先ほどまでの喧騒とは違いどこか静かなものに成り果てていた。
そんな人たちを気にかけても仕方ない。だから私はとっとと元の場所に戻ろうとした、んだけど。
「素晴らしい!お見事ね。」
観客席の一番高所。場所によっては見上げても見えないその場所から、よく響く声が投じられた。
見てみると声の主はうちの国の女王様。
「戦いは終わったから今からすぐに終戦式にはいる。だからそこにる5人はそこで待っていろ。他の全員もすぐに舞台に向かうように」
強い、命令口調で女王様はそう言った。
戦いが終わったから戦士全員を舞台上に集めてすぐに終戦式?
ちょっと前まで私が座ってここを見下ろしていた場所を見てみれば、フルフェイスの騎士が人を案内している姿が見える。
それで動かされるのは今日、この場に立った人間だ。
帝国側はそうではないが、王国側はけっこうな負傷者がいたはず。
さっき全員って言ってたから、それも呼ぶのだろうけど、おかしい?
・・・というか開戦式と終戦式があるの自体おかしい。
今更ながら気づいたが、そもそもこんなもの今までなかったはず。
なのになんで今回はそれがあるのがさも当然のように振舞われているの?
そうこう考えているうちに、次々とここに到着する戦士たち。
その中には、一戦目と二戦目と三戦目に惨敗して治療室に運ばれたものたちの姿もある。
比較的無事な仲間に肩を借りての入場だ。
そして一足遅れて王連中も到着した。
兵士を何人も連れての入場だ。
彼らは王の身を守るためにここにーーーーー?
どうして開戦式とやらには兵士は1人もいなかったのに、終戦式とやらにはこんなにたくさんの兵を?
わからない。わからない。
今回の王国との戦争はわからないことだらけだ。
ただ王様たちの気分でーーーとかならいいんだけど、どうしても嫌な予感がする。
私は咄嗟に王様たちの顔を見る。
獣王は無表情で、女王は勝ったからかにこやか、王国王は負けたからか悔しそうな顔をしていた。
でも何故だろう?
王国の王様は思ったより悔しそうではないように見える。
・・・・寧ろ、、、、、、楽しそう?
うちの作品に感想を残している人はみんな同じことを書いていく。
感想を読んでいる限り、他の人の感想も読んでいる模様。
これ、後続の人最初の人に便乗しているだけじゃない?
まあ感想もらえるなら作品主としてはなんでもよかったりするんですけどね。