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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第6章 偽の正義と熾烈な戦い
244/293

244 籠の中で育った華と外の世界で開く華

本日2回目の投稿になっておりますので、まだ読んでいない方は1つ前をどうぞ。

何故ノアがフクロウと一緒に飛んでいるのかが書かれています。


【エレナ視点】


目の前の死神が剣のような武器を振る。それは私に到達するよりも前に、斧のようになって襲いかかってくる。


私は小さい体を利用して、死神の懐に入ろうとした。だけどうまくいかなかった。

死神の武器が、今度は斧から短剣に変わった。


短剣、、、私とおんなじ武器。

多分、近距離戦闘では最強の武器だ。

素手より強く、素手とおんなじくらい速い。死神は懐に入られそうになるとすぐにこれを持ち出す。


あの武器はなんだろうか?

わからない。どんな武器でも自由自在。便利な武器だ。


「・・・弾く。」

私は短剣に変わったまま、軌道を変えて追いかけてくるそれを自分の武器で弾き返そうとした。


「・・・ダメ!!?」

でも、失敗に終わった。


私の武器は粉々に砕けて、死神の短剣は無傷だった。

私は追撃が来るより先に距離をとった。


そして安全を確保した後、手元に残った短剣の残骸を見る。

見事に粉々だった。


「・・・?これはしゅらうど謹製・・・頑丈のはずなのに?」


「お嬢さん、形あるものは必ず壊れるのです。何も不思議なことはありませんよね?」

ちょっと丁寧な言い回しだけど、ちょっとおかしい?


「・・・よくわからない。」


「目をそらしてはいけません。それが『死』というものなのです。あなたの短剣は今、死んだのですよ。」

死ぬとか生きるとか、私にはわからない。

ずっと前、どれほどまえかはもう覚えてないけど、私のことを調べた人がいた。


その人が言うには、私は寄生虫のようなものだって。死んでも、それは形だけ。

宿主が死なない限り、私は何度でも復活する。

宿主が死んでも、新しい宿主に寄生する。


私はそんな生き物だって、詳しい人が言ってた。



だから、死ぬとか、どうとかは考えたことはない。多分私には、あんまり関係のないことだって思うっているから。


「ところでお嬢さんは、『死ぬ』ということはどう言うことだと思います?」


「・・・動かなくなること?」


「それだと、武器などはどうです?先程『死んだ』あなたの武器は、それまでは動いていましたか?」


「・・・わからない。実は動いていたのかも。」

私はもう地面に落としてしまった武器の残骸を見る。

あれは生きていたのだろうか?わからない。


「ふふふ、、愉快なお嬢さんですね。まあいいでしょう。『死ぬ』と言うことがどう言うことなのか、今から私が教えて差し上げます。なに、授業料は必要ありませんよ。私はただ知って欲しいだけなのです。私が到達した、『死』と言うものを。」

死神が動きだす。

さっきまで短剣だったその武器は、気づいたら1つの弓矢のようになっていた。

私は距離を取ると攻撃ができない。


死神はそんなことはない。だから遠距離攻撃を選んだのだ。


死神は1本の矢を私に向かって放つ。


避けるのは簡単だった。

ただ不可解なのは、私の横を通り過ぎた矢は壁に当たった後、高速で巻き戻すように死神の手に帰ったことだ。

そして弓に同化する。


「・・・紐?」


「ええ、材料は有限ですので。」

私の独り言のようなつぶやきに笑みを浮かべて返す死神。

戦いの場に、その顔はふさわしくなかった。


今度は私から仕掛ける。


「・・・武器、変わるだけ。威力、強いだけ。死神自身はどう?」

武器の特異性は嫌という程見せられた。

だけど、死神自身は特にこれといった行動は取らなかった。

もしかしたら、弱いのかもしれない。


「おやおや、早とちりはいけません。・・・・そういえば、私の武器、はじめに比べて小さくなっているように見えません?」

死神はなんでもないように言う。

私が本気で近づいているのに、まるで何もいないかのようだった。


「・・・油断大敵。」

「ええ、全くです。」


後少しで手が届く、そう思った時、足元から何か尖ったものが突き出された。


ギリギリのところで気づいた私は、直ぐに横に飛んでそれを回避しようとする。

だが、高速で突き出してくるそれを完璧には避けられなかった。


結果、私の右足に大きな穴が空いた。


「・・・痛い。」

「ええ、痛いでしょう。まだその足、動きそうですか?」


「・・・痛いだけ。動く。」

強がりじゃない。ちゃんと動く。

地面を踏みしめたらズキっときて嫌だけど、戦えなくはない。


やっぱり、痛いだけだ。


「そうですか。まだあなたの足は死にませんか。」

死神は地面から突き出したそれも回収して今度は武器を鞭にした。

そしてそれを高速で振り回して叩きつけてくる。


私は避ける。

あの攻撃、武器で受けたらまた壊れそうだから。


普段は両手にある武器が、今は片方だけ。素手でも戦えないことはないけど、やっぱり刃物を持った方が楽だから、あまり壊したくない。


あんまり壊すと、リリスお母さんやタクミにぃに怒られそうだし。

ズキーーーズキーーーズキ、、、

右足の痛みがうっとおしい。なんで痛みなんてあるのかな?


なかったらいいのに・・・


「ほらほら、避けているばっかりでは足が痛いだけでしょう?出血も酷いですし、そのうちその足は死にますよ?」

死神は得意げだ。負けるなんて、思っていなさそう。


「・・・死ぬとかどうとか、そればっかり。それ以外に喋ることないの?」


「ええ、死ぬと言うことは人生の命題ですから、語りつくせないこともあるでしょう。ですが大丈夫です。それを体で感じて仕舞えば、私の思いもきっと、伝わります。」


そう、この人はあれだ。タクミにぃが話していた変質者ってやつだ。

こう言う人とはできるだけ関わっちゃいけないんだって言ってた。


・・・それなら、あんまり近づかない方がいいかな?


私はまた、距離をとった。


「おや?諦めましたか?」


「・・・口を閉じろ変態。」

私は短剣を投擲する。

ノーモーションで投げられた私の短剣は、ギリギリ死神に避けられはしたがその頰に切れ込みを入れた。

それを確認した私は短剣に繋がっている糸を引く。


この糸は別に頼んだわけじゃないんだけど、必要だろうってつけてくれた。

結構便利だ。


「変態とは心外ですね。私は『死』ついて語らいたいだけですのに、どうしていつも理解されないのでしょう?」

はぁ、、さっきの投擲、短剣に毒でも塗っていればそれで終わりだった。

ベルがいた頃は自分で毒作れたんだけど、ベルがいなくなってからそれができなくなった。


ベル・・・・・ベルならどうする?


私はずっと一緒にいてくれた男の人の存在を思い出した。

彼は戦う時、いつも何をしてたっけ・・・?


「・・・思い出した。人任せにして、殻に引きこもる。」

ベルには同格の仲間がいた。

その人たちよりベル自身は弱かったけど、実際に戦っても負けなかったと思う。


ベルは殻に閉じこもって、敵の掃除は別の人たちに任せていた。後、毒をまいたりもしてた。


じゃあ私ができるのはーーーーー待つこと?

リリスお母さんか、タクミにぃが助けに来るのを待てばいい?

2人に任せればいい・・・?


・・・・・嫌だ。

嫌だ。嫌だ。嫌だ。


最善策と思われる案を思いついたのに、何かこう、胸のあたりから何かが湧き出すような感じがして、どうにもそれをやりたくない。

どうして?


私は遠くで戦っているタクミにぃと、リリスお母さんを見る。

タクミにぃは敵2人の前にいて、ノアねぇはフクロウと一緒に飛んでいる。


リリスお母さんは黒いやつを避けながら必死に戦っている。

どっちも負けそうな空気は見えない。

だから私はここで相手を足止めして、そして誰かが手を貸してくれるのを待っているだけでいい。


・・・それは、、なんか嫌だ。


「どうしました?お仲間の方を見て、助けにきてもらいたくなりましたか?」


「・・・違う。助けられるのは、嫌だ。」


「では、あなたはどうするので?死神の下に飛び込んで、死んでみますか?」


「・・・それも違う。私は、、戦う。」


「どうして?私があなたを倒そうと戦うから?」


「・・・違う。」

私がどうして戦うのか?リリスお母さんは、いつも私に無理に戦わなくていいって言ってくれる。

ずっと安全な場所で、同じくらいの子供達と楽しく遊んでいてもいいって、、、


それがどうしても引っかかっていた。

どこか、何かに似ているような気がしていた。それは、私の願いじゃない気がした。

今、私はそれの正体に気づいた。


リリスお母さんが言っていたことと、ベルがやってたことは一緒だったんだって。


安全な場所で、大切にされて、大切な時に手を出せないんだって、それに気づいた。

ベルが私を最後に呼び出した時、ーーーーーーそれは彼が死ぬ時だった。


私が一緒になって死なないように、リリスお母さんに預けて死んだ。


「・・・ベルは私を戦いに呼び出すことはほとんどなかった。」


「なんの話です?」

それは私を嫌っているからだと思った。


「・・・でも、違った。」

ベルは戦いの場には呼び出さなかったけど、安全が確保されている場所では割とよく呼んでくれた。

そしていろいろなことを教えてくれた。


「・・・ベルは多分、私を大切に思っていてくれたんだと思う。」


「ベル、というのが誰かは存じませんが、その口ぶりだとその方は死んだので?」


「・・・そう、ベルはもういない。」

ベルは疲れていた。死ぬことが嫌という気持ちよりも、これ以上生きることが面倒という気持ちが勝るほどに。

だからこそ、彼は私をリリスお母さんに預けて死んでいったのだ。


私を・・・置いて。


「・・・もし、私がベルをもっと気遣っていれば、彼はまだ、私と一緒にいたかもしれない。」

結局私は、彼に何も返してあげられなかったのだ。

彼の心を救ってあげることができなかったのだ。

笑い物だと思った。

一緒に生まれたのに、私だけ大切にされたんだって、だから私だけ生きているんだって今になって気づいた。


「それで?その大切な人の死を経て、お嬢さんは何を得たのですか?何を感じたのですか?」


「・・・何もしない物は、何の価値もない。」


「おぉ!!」

死神は驚いたような顔を見せた。そしてその顔は、どこか嬉しそうだった。


「・・・だから私は壺の中の華を卒業する。守られるだけじゃなくて、少しでも役に立てるように戦う。だから、仲間の助けは待たない!!今ここで、死神、お前を倒してお母さんを助けに行く!!」


「お見事です。『死ぬ』ということはその物の役目を果たせなくなるということ、それも1つの到達点です。それに習って示すなら、あなたは先ほどまで死んでいた。そして今、生を受けたといことでしょうか?そしてその生を大切にするため、それを刈り取る私、『死神』に対抗する。あぁ、なんとも美しいことか!!」


死神は狂気の笑みを浮かべた。

そして武器を構える。次の形はーーー大きな鎌だった。

死神が持つ、と言われるとしっくりくるような見た目をしていた。


「・・・リリスお母さん、はじめてのお手伝い。ちゃんとできたら褒めてくれるかな?」


「さあ!!来なさい!言っておきますが私はあなたが答えを得たからと言って手加減はしませんよ!!いえ寧ろ、私は『死』について理解を深めた方にこそ全力で『死』を与えるのです!!」

歓喜に震える死神は鎌を引っさげ近づいてくる。

これ以上の問答は必要ない。あとは戦いの中で・・・って言いたいのかな?


私にはよくわからない。



結局、私は死神の言っていたことが何1つ理解できていない。


ただ、私はたった1つ『誰かの役に立つことは大事』っていう答えをみつけただけた。

そこらへんの子供でも知っていること。思えばそれに気づくのに、何千年、、、万?かかっているのかって話だ。



「・・・我ながら呆れる。」

私の方からは、死神に近づくことはなかった。

向こうから近づいてくれるのだ。必要に迫られれば、踏み込む。それくらいで十分だ。


「さあ、さあ!!良き理解者よ!!私の振るう『死』はあなたの理想さえも殺しますよ!!全力で恐れてください!!」


当然だが短剣より大鎌の方が射程が長い。だから死神は私の手の届かないところから攻撃を開始した。

横に一振り。

私はそれを身を低くして回避する。

体が小さくなかったらーーーータクミにぃくらい大きかったらーーー避けられなかっただろう。


そしてその低い身のまま、私は前に出て死神に近づいた。

足は痛むが、いつもより体が軽く、素早く動ける気がした。


「・・・死ぬとかなんとか結局はわからない。でも、お前のおかげでベルの気持ちも、私の過ちも気づけた。それは感謝するから、全力の一撃をお見舞いする。」

痛む右足、私はその足で地面を蹴り鎌の攻撃をかいくぐって死神の懐に入る。


「私の武器は変幻自在。距離なんて関係なく最高の一撃を放てますよ!!?」


「・・・でも、振り切った大鎌を変形させて攻撃に回すよりかは、私の方が絶対に速い。」

武器が特殊でも、使い手は人でーーーー特殊な武器はただの物だ。

限界は確実に存在する。

いくら素早く変形さえようとも、引き戻そうとも、次の私の一撃よりは遅い。


「・・・閉じろ『安らぎの揺り籠シェキナーコクーン』」

白い糸繭が死神を包み込んだ。

外からも、中からも簡単には開かない揺り籠だ。


本来なら自分の周りに展開し、私の身を守るためのスキル。

だが、私は今その揺り籠の外にいた。


「・・・こんなもの、もう必要ない。」

私は守られるばっかりはこりごりだ。その思いが体現したスキルの挙動だった。




「くくくく、、、はーっはっはは!!素晴らしい!素晴らしいが、まだ足りないな!!」

揺り籠の中から死神の声が響いた。

そして場所の都合上、揺り籠内に捕らえられなかった武器の方が蠢き、揺り籠を貫いた。


そしてそのままそれは引き裂くように広がっていく。


みるみるうちに壊れていく『安らぎの揺り籠シェキナーコクーン』、それを見た私は何故だか晴れ晴れとした気持ちになった。


「・・・籠は役目を終えていた。もう死んでいた。」

そういうことなのだろう。


すぐに死神は揺り籠の中から脱出した。

ある意味渾身の一撃、相手を隔離する一撃だったのだが、どんな物質でも破壊ころしてしまう死神とは相性が悪かったみたいだ。


「いい攻撃だったが、死を乗り越えるにはまだまだったみたいですね。さて、今度は私の番ですか?」

糸繭の切れ込みが横に広がり、そこから這い出てくる死神。



・・・・そこに向かって一陣の風が叩きつけられた。


「・・・タクミにぃ、早かったね。」


「おう、手助けに来たぜ。」


「・・・手助け?助けにじゃなくて?」


「エレナなら1人でも大丈夫そうだろ?あくまで俺は補助って感じだ。」

そう、タクミにぃは私の働きをちゃんと見てくれたみたいだ。

少し嬉しい。自分のやったことを見られて、認められることがこんなにも嬉しいことなんて今まで思ってもいなかった。



「ぐうう、『魔術師』と、『隠者』がやられたみたいですね。まあいいでしょう。あなたも私の『死』を体験しに来たんですね!!?・・・それにしても、彼らは死んだのでしょうか?それでしたら残念です。まだ彼らには説いていませんでしたから・・・」

タクミにぃの攻撃を受けてもまだ死んでいなかったみたいだ。

死神は今度こそ籠から這い出てくる。


だがその姿は籠に入る前のものとは違い、血に染まっていた。

みると死神の体には肩から反対側の横腹まで大きく切り傷ができていた。

私はその傷に何処か親近感を覚える。


「・・・タクミにぃ、見ててね。私が一人で終わらせるから。」


「おう、危なくなったら助けるけどそれまで好きにしたらいいさ。」

私は傷まみれの死神に近づいた。

死神は私に対応するべく武器を変形させながら振るうが、傷を負ったせいか動きが鈍い。


掻い潜りながら攻撃の射程に収めるのは簡単だった。


「・・・これが間違いでも、私はこれを信じるから、だからベルはそこで見守っていて。」

今はここにはいない人物の顔を思い浮かべながら、私は死神にとどめを刺す。


「喰らえ!!『黄泉の星』!!」

私は手元に現れた黒い球体を、勢いをつけて死神に叩きつけた。

その黒い球体は硬く、重かったらしくグシャっ、っという音を接触とともに立てる。


そして死神は行動を停止した。

それを確認して私は後ろを向く。


「・・・タクミにぃ、私頑張ったから褒めて。」


「おう、よくやったエレナ。ご褒美に今度立体型の羊の折り方を教えてやるよ。」





・・・やっぱり、褒められると嬉しい。


スキル『黄泉の星』


星1つに匹敵する質量の暗黒物質を生み出すスキル。


スキル発動後、使用者は一定時間重さも感じないしその一定時間が経つとその星は消えてしまう。

敵に叩きつけて使うのが吉。


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